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『光速より速い光』ジョアオ・マゲイジョ(040308)
すごい本を読んでしまいました。Nさんのご紹介で。Nさん,いつもありがとうございます。
■『光速より速い光』(ジョアオ・マゲイジョ/青木薫・訳/NHK出版/本体2,300円)
この本の副題は「アインシュタインに挑む若き科学者の物語」。上の本の写真のオレンジ色の帯には,こんなことが書かれています。「光速変動理論(VSL)が宇宙理論物理学会に旋風を巻き起こしている!」。
学校を出て20年ちょっと。このところ,ようやく法律や経済,政治学・行政学関連や文化人類学(山口昌男先生)の本を(それなりに)読めるようになってきたかなというところ。どんな分野にせよ,学問ってのは面白いとつくづく感じ入っております。そんな私にNさんが紹介してくれたのがこの本。作りは,いちおう「宇宙論―巨人の星味」ってところでしょうか。若い学者さんが艱難辛苦を乗り越え,新しい理論を構築するまでのストーリーを追えます。私が楽しんだのはその部分。研究者も大変だなあ〜というところ。これだけでも面白いです。ここまで話を書ける著者のマゲイジョさんの筆力は大したものです。オススメです。
皆様ご察しの通り,私は数学は中学生程度,物理・化学・生物・地学については小学生3年生程度(多分それぐらいはあるはず…。自信なし)の知識しか持ち合わせておりません。そんなわけで,ここに出てくる物理学的記述にはまったく着いていけず,かつ「数学的必然」なんて書かれていても「???」なのでございました。ここがわかれば,この本はもっとずっと面白いに違いない。何よりこの本に書かれてあることは,あのアインシュタイン(「20世紀最高の天才」と言われている人ってことだけしか知りませんが)の相対性理論(もちろん,この理論についても私は???)を超えるかもしれない,その可能性が高いことなのだそうです。訳者の青木薫さんの「訳者あとがき」によると,これまでこのテの,「アインシュタインを超えた的」本は腐るほど出ているのだそうで,ことごとくヘボイものだったらしいです。しかし,この著者の経歴等を見るに,これはインチキ学者が書いたものではないと青木さんはおっしゃっております。「理論」の正否は「自然」が示してくれるだろうが,アインシュタインやこれまでのアプローチ以外に,このアプローチも認められていいはず,と,訳者も著者もおっしゃっています。よくわからないけど何だか凄い。私から見ても,ホントに凄い本なのだと思います。価格を見るに…。(はは。そこから言うか…ですが)
著者のジョアオ・マゲイジョさんは1967年生まれ。今年37歳! この若さで,イギリスで「向こう10年,好きな研究に没頭してよい」という資格(アドバンスド・リサーチ・フェローシップ)を得た研究者なのだそうです。これを彼のメインテーマの「光速変動理論(VSL)」以外の業績で得たというところも,彼がタダモノでないことを示している,と私は思います。彼はこんなことを書きます。
「研究者のなかには―ごく少数ではあるが―VSLが撃墜されるのを心待ちにしている人たちがいる。そういう連中には,ほんとうに新しいものを自ら発見しようとする気概がまるでない。ひも理論であれ,インフレーション宇宙論であれ,宇宙背景放射の理論や実験であれ,すでに敷かれているレールから決してはずれようとしない科学者がいるのは残念なことだ。VSLのようなむちゃくちゃなアイディアがそういう連中の自尊心を傷つけるのは明らかで,そのためにVSLの失敗を願わずにはいられないのである。しかしそれはお門違いというものだろう。たとえVSLが失敗しても,僕はもっと過激なアイディアに再挑戦するだけのことだからだ。なぜなら,科学というジャングルのなかで迷子になるプロセスこそが,科学を挑戦に値するものにしているからである」(P.329-330)
理論のことはさっぱりわかりませんが,これはわかる。「すでに敷かれているレールから決してはずれようとしない」で,自分はプレーヤーにならないで,場外で(ノー・アクション,ノー・リスクで)評論家ぶってる人が「正統派」なんて気取ってる(どこにでもいるんですね。こういう人は…)。ゼネラリストとか言ったりもして…。企画力・行動力のない人には,このタイプの人が多いですよね。こういう人はえてして,科学の発展とか市場とかお客さん本位なんてことは考えておらず,学会とか社内の自分の地位や人間関係にばかりエネルギーを費消していらっしゃるのでございます(この本にはそんな話もたっぷり出てきます)。はは。ほらね。こんなところが面白い。彼は異端どころか,正統派の継承者なんですね。正統にコトを進めていこうとしたら,基から離れたと。ピカソの過程みたいなものですが,それを“守旧派”な人々は諸々の理由からなかなか認められない。若い天才的研究者ですら,こんなことで少なからず消耗し,でもしたたかに前向きな姿勢を保持していることが,私のようなくたびれた門外漢&ただのサラリーマンにも励みになります。
この本は,私より数学・物理ができる長女に回します。彼女には「読んだ後,わかったところについては私にわかりやすく説明してね」とお願いするつもりです。「読んだ後,わからないところがあったら私に聞きなさい」と言えないところが情けない。反面オヤジでも娘の何らかの役に立つことを願わずにはいられない。
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