『経済思想の巨人たち』竹内靖雄(040108)
 竹内靖雄先生のご著書は我が家に3冊あります。1冊はこの本で,もう2冊は『正義と嫉妬の経済学』と『経済倫理学』。面白そうだなーと思いつつ,なかなか読む機会がありませんでしたが,やっと1冊,一番やさしそうな本を手に取りました。

■『経済思想の巨人たち』(竹内靖雄/新潮選書/本体1,200円)

 

 経世済民,恒産なくして恒心なし…というわけで,人はやはり,それなりに食べるモノには困らないという状況にないとイカンじゃないかということで,人間は古くからそれってどういうことなのかとかどうなりゃいいのかということを考えてきました。どこかで読んだ文化人類学の本でも大きなテーマは「交換」とされており,この「交換」ということがあるから政治や法律も必要になるというか生まれて来るというか…。もうちょっと言ってしまうと,「ないものねだり」とか「尊敬」とか「愛情」なんていうものも,経済学でいうところの「機会費用」や「比較優位」といった考え方で説明できるような気もしますし,実際やっている方もいらっしゃるらしい(ゲーリー・ベッカーさんとか。いずれ読んでみたい)。
 このように経済学は非常に興味深い面白い学問であると思います。経済学に接すると目からウロコ的思いをよくするのですが,一方で,「そりゃわかった(あるいはわからない)。じゃ,何でそんなことを考えたのか教えてくんない?」と思います。この「何でそんなことを考えたわけ?」というところを,うまく説明してくれれば経済学はもっと身近で面白く学べるはずなんですよね。で,その手助けをしてくれるのが経済思想や経済学史。私の知る範囲では,この分野では,京都大学の間宮陽介先生とか根井雅弘先生,国際日本文化研究センターの猪木武徳先生(『自由と秩序 競争社会の二つの顔』),それと今回の竹内靖雄先生が有名どころでしょうか。早稲田大学の若田部昌澄先生(近頃の読書(2003.3.22))にも,是非頑張っていただきたい。

 さてさて。で,この本の著者の竹内靖雄先生は成蹊大学教授。1935年生まれ。ずっと前からお名前だけは存じておりました。なるほど。さすがに長い間第一線で活躍されている方のご著書だと感心いたしました。読みやすいし格調のあるいい文章でした。ここで取り上げられているのは,ヘシオドス,菅子,プラトン,アリストテレス,司馬遷,トマス・モア,マンデヴィル,ヒューム,スミス,マルクス,福沢諭吉,ケインズ,北一輝,ハイエク,コースなど36人。どれも面白い。特に私はユートピア思想,功利主義,マルクス主義,ケインズとハイエク,北一輝のところが面白かった。それぞれの文章が長くないのが物足りないようでもあり,といって,しっかり書かれたモノだと多分力不足で読み切れないだろうという感じです。もっと読んでみたいなあと思わせるところでヨシとされているのでしょう。そのねらいは成功していると思います。オススメです。ここに書いてあるホンのちょっとのことでも,私の会社のエライ人に読んでもらいたいし子供たちにも知ってほしい。何でもかんでも放っておけばいいというわけではないけれど,おうおうにして人為的なコントロール(計画経済とか各種規制)ってのは,不合理で危険なカケなんだぜ…と頭でも理解してほしい。


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