『劇画 近藤勇』『娘に語るお父さんの戦記』水木しげる(031012)
 社会人になって以来23年。ずっと読み続けているのが日本経済新聞。その日本経済新聞の文化欄(最終面。このところ本当に素晴らしい。いずれ改めてご紹介したいと思いますが,本当に充実してます)に,各界で功成り名を遂げた皆様が20回くらい連載される「私の履歴書」というコーナーがあります(今は指揮者の岩城宏之さんが連載されています)。そこで1か月ぐらい前でしょうか,『ゲゲゲの鬼太郎』やいろいろな妖怪の紹介で有名な漫画家の水木しげるさんが連載をされていました。水木さんの子供の頃の劣等生ぶり,戦争へ行って片腕を失うなどまさに死と隣合せの大変なご苦労をされたこと,一方で現地の人と親しくなったこと,復員後の大混乱,その後の奮闘ぶりなど,大変興味深く面白く拝読いたしました(これは単行本になったら絶対買います。単行本化された「私の履歴書」を買うのは佐藤愛子さん,遠藤周作さんに次いで3人目となること確実!)。昨10月11日に本屋さんへ行ったとき,文庫本のコーナーをウロウロしていたのですが,そこでこの2冊を発見。課題図書がたくさん家にあるというのに,つい,買って読んでしまったのでした。

  

■『劇画 近藤勇』(水木しげる/ちくま文庫/本体1,050円),『娘に語るお父さんの戦記』(水木しげる/河出文庫/本体560円)
 『劇画 近藤勇』。黒鉄ヒロシさんの『新選組』『坂本龍馬』という作品を面白く拝読したことがあったのですが,水木しげるさんにもこのような作品があったんだあ〜,ということで,文庫で1,000円以上するのにためらくことなう,ひょいと購入。副題は「星をつかみそこねる男」。この副題がいい。即読み始め。こういう漫画は作り方が難しいのですね。ちょろっと山南敬介とか永倉新八とか登場させてしまうのですが,この人を知らない読者(私)は戸惑ってしまいます。「読者にもこの人については基礎知識があるだろう」という前提があって話が進んでしまうような部分が少なくない。これは黒鉄ヒロシさんの作品についても同じでして,1つのストーリーの完結度としては,どうなのよ,と思ってしまうところがあります。とはいえ,十分面白かったです。試験前ではありますが,息子に渡すと決定(読むかどうかはわかりませんが)。それと,ちくま文庫の水木しげるさんの他の作品に『劇画 ヒットラー』『京極夏彦が選ぶ! 水木しげる未収録短編集』(何に未収録なのか意味不明ですが)というのがあるようですので,これもいずれは読もうと決めました。

 『娘に語るお父さんの戦記』。こちらは「私の履歴書」の再読それと水木さんの戦争体験をもう少し詳しく聞けそうだと思って購入。『劇画 近藤勇』を読み終わって,一息ついて,即読み始め。そのまま一気に読了。寝不足。ニューブリテン島(ラバウル)で左腕を失いマラリアにかかった水木さんが,ナマレという所で現地の人と仲良くなった後にぼんやり考えていたこと。P174-175から抜粋。

 「いったい文明なんてなんだ(そのころは,日本人を土人と比べて,文明人だと思っていた)。いじめられ(お父さんは階級が一番下だったので常に兵隊になぐられていた),そして,なにかあると,天皇の命令だから死ねとくる。
 それにくらべて,土人の生活は,なんとすばらしいものだろう。原始生活のいい方向がのびずに,妙な方向に人類は進歩,いや,狂歩してしまったのかもしれない。その証拠にやたらに心配ばかりふえて,忙しいばかりで,なにもない」

 日本に帰るため,このナマレの人たちと別れる場面で,水木さんはこんなことを書いておられます。P193から抜粋。

 「なんという心の楽園だろう。物がなくても楽しい。(〜中略〜)彼らの家の中には,鍋が1つとラプラプ(腰巻き)が2,3枚あるだけだ。
 土人とはよくいったもので,本当に土の人,大地の人だ(〜中略〜)。すなわち,木や鳥のように,本当に自然の人間だ。
 これこそ,本当の人間の生活というものだ」

 ふうぅ。そういうこと。いつだって。生きていく原点はココ。ココがしっかりわかっていないと,どんなに大金持ちになったって,どんなに生活が便利になったって,隣の芝生がやたら青く見えたりして,僕らは幸せを感じられない。この本はとりあえず大学1年の娘に渡します。


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