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『河童のコスモロジー』山口昌男(030915)
久しぶりに山口先生の本を拝読。
■『河童のコスモロジー』(山口昌男/講談社学術文庫/定価980円)
昭和61年1月10日発行の初版。副題は「石田英一郎の思想と学問」。文化人類学者の石田英一郎・元東京大学教授の足跡を解説しつつ,山口先生があの独特の語り口で「文化人類学入門」のような本を仕上げてくれました。書名と内容は一致するようでしていません。副題のほうが内容とマッチしています。まあ,読者の興味を引くのは「河童のコスモロジー」でしょうけれど…。
第1章「石田英一郎の世界」,第2章「石田英一郎の生涯」,第3章「石田英一郎の学問」の3章で構成。しかし,430ページにも及ぶこの本のほとんどは第3章です。約300ページ。石田英一郎という方の生涯も興味深いですが,何といっても面白いのはこの第3章。山口先生の解説と石田英一郎や周辺の人が書いた“原典”が交錯しつつ,話が展開していきます。ざっと第3章の話題を目次から引いてみると……,『月と不死』『金枝篇』『世界樹』『母神と父神』『女性原理と水辺の小サ子』『桃太郎の母』『女人島』『河童駒引』など。
月と不死に関する話のところでは,満ちては欠け,欠けては満ちる月が不老不死への憧れと強く結びついているという話が展開されます。月の中には「ウサギ」がいるという話以外に,「水桶を天秤棒で担いだ人」がいるという話が日本だけでなく世界に広く分布しているそうで,で,日本においてこの水桶に入っていたとされる水は,万葉集に出てくる「変若水」(をちみづ/生き返りの水)であろうといった話が紹介されます。
文化人類学という学問は,本当に山口先生の文体のごとく,何か1つのことを話している途中で,すぐ別の要素の話が加わって中心と周縁をウロウロ歩き回るといった感じで,紹介するのがむずかしいです。「読んでみてください」としか私には言えません。それにしても,昔話とか言い伝えも,よく味わったり外国の事例と合わせて見てみると,いろいろなことが言えるものです。本当に面白い。コスモロジー(宇宙論)といって,その構造を図示したりするのもつまらなくはないですが,その手前の「こんな話があるんだけどね」という部分だけでも私には十分面白い。平たく言うと「サントリーという社名は鳥井さんの逆さま読みなんだってさ」的な多くの情報だけでもお腹一杯になります。デキの悪い読者で山口先生には申し訳ないですが…。
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