『にっぽん心中考』佐藤清彦(030426)
 実はこの本には「文春文庫 今月の新刊」なんて書いてある赤い帯(業界の人は“腰巻き”と言ったりもするみたいです)が付いておりました

 でも,この文庫本の奥付を見ると,2001年2月10日発行(単行本は青弓社から1998年11月)です。うーん。新刊で買ったような古本で買ったような…。新刊の書店だったら多分こういう帯は時期が過ぎればはずすんでしょうから,これは古本で買ったのかなあ? それにしては全然傷んでないんですよねえ。

 で,写真に妙な雰囲気があるので,その帯をハズしてカバーをスキャン。心中する前の旅先の部屋…。杉山拓也さん撮影。

■『にっぽん心中考』(佐藤清彦/文春文庫/本体590円)
 どこかで買って課題図書になっていた本。著者の佐藤清彦さんは元読売新聞記者。昭和5年生まれ(父と同じだ)。この他,『脱獄者たち』『贋金王』『奇人・小沢定明の生涯』のご著書があります(著者略歴より)。この方の文章を読むのは初めてですが,何だか面白いテーマでいろいろ書かれている方ですね。また,どこかで出会いたい。

 元の単行本の発行元の青弓社も,どこかで聞いたことがあるのですが,書棚を見ても青弓社のサイトを見ても何でだか思い出せませんでした。青弓社のサイトを見てたら面白そうな本がいっぱい。危ないので早々に退散しました。

 さて,この本は書名どおりいろいろな心中のことを書いた本。淡々と,基本的に,明らかになった事実だけを積み上げて事件の背景を読み取ろうとするクールな文章が続きます。ここで採り上げられたものは家制度のしがらみとか身分の違いなどが恋人達を死に追いやったのだなと一応の整理ができそうなもの,心中の形態ではあるけれども,実はそれぞれの事情を抱えた,同時自殺といえるものなどなど。大きな流れとして,心中は,純愛から「乾いた共同自殺」へと変遷してきていると捉えられるようです。

 個々の事件それぞれに関する記述も私なりに真面目に読みました(有島武郎に関するところ,佐藤紅緑の息子・久〈サトウ・ハチローの弟,佐藤愛子の異母兄〉を扱った話などは,かなり読ませてくれました)が,この大きな流れを見ていると,ガチガチの規制やタブーがなくなったのと反比例するかのように,恋愛も死も…ということは人の存在そのものが,随分軽くなってきたということなのだろうかと思ってしまいました。スキャンするときにハズした帯にはこんなキャッチがついています。「100組のロミオとジュリエットたち 哀しくて少しおかしく ときにミステリアス」ですって! はあ〜??? 何だかなあ。どんな形であれ,人の死を扱った(しかも結構真面目な内容の)本なのになあと思います。

 この本の中では,何度か形を変えて「もともと自殺志願者といっても,なかなか踏ん切りがつかないものらしい。跳躍のきっかけとして同行者の存在は大きい」(287ページ)といった文章が出てきます。これが怖い。佐藤氏は,インターネットの発達により「類をもって集まる時代」,自殺志願者の「共同自殺は,世界的にも増える可能性がある」と,及び腰な表現(「可能性がある」なんて,いつだって言えてしまいます)ですが言っておられます。これは「そうなるだろう」と誰もが同意できてしまうのではないでしょうか。

 それと,この本の本筋ではないのですが,紀州白浜の「口紅の碑」の項(276ページ以降)では,特別養子制度による近親婚の危険,人工授精の公認・体外受精の実用化が近親婚の機会を増やしているといった,重要な指摘があります。

 さらに余談。愛新覚羅慧生と大久保武道の「天城山心中」について書かれた部分で紹介された慧生の手紙(40〜41ページ)。

 〜(略)渋谷からお電話いたします。もしお休みのところをお起こししたらごめんあそばせね。
 それではまた。明日地学の時間に。
  十二月一日朝
  乱筆,お許しあれ,何を書いているかお分かりにならないでしょう?
  判読なさっていただけたら幸いでございますけど。

 これ大学生の文章です。育ちのいいお嬢様は今でもこういうお言葉を遣われるのでしょうか。ウチの娘にはもちろん書けません。はあ〜。ウチの娘とほぼ同世代で,こんなに明るくて綺麗な文章を書いていたのに,亡くなったんですねえ。慧生さんは…。

 この本の終わりには多数の参考文献も挙げられています。それを見ていると心中・情死についていろいろな文献があることがわかります。佐野眞一さんや学者さんの書かれた本にもこのようなリストは載っています。参考にされているのだからそれを明記するのは当然のことでしょうが,次に進みたい読者にとってもありがたいことです。

 最後に。この本の単行本のあとがきに,佐藤氏の若い頃(昭和20年代)の仲間に2人の“情死経験者”がいたという話が紹介されています。1人は睡眠薬を飲んだが失敗し,もう1人は旅先で最後の一夜を“この世の名残”とばかりに徹夜で励み精根尽き果てて帰京したとのこと。この後の話には救われます。生死の淵,生死の重みを,私はこの辺に置きたい。

 “死にたい”なんて思ったときは,男だったら10万円ぐらい持ってソープランドへでも行って「若いネエちゃんとおもっきり“そんなこと”してからにしろよ」と言いたい。東京近辺なら吉原,新宿,渋谷,池袋,川口ってなとこなんでしょうか。男仲間からは「蕨(わらび)もいいよ」なんて聞いたことがありますが…。全国的には札幌のススキノ,秋田・仙台・宇都宮(東北は高いかつババが多いってのが聞いた話。笑),千葉と名古屋の栄,川崎,雄琴(滋賀),高松,徳島,博多の中洲,小倉,熊本,宮崎,別府ってとこでしょうか。那覇の噂を聞いたことがないのが不勉強ですみません。

 で,私の“聞いたトコ”によるオススメは,熊本と別府。“死ぬ”と決めたら,熊本に飛んで(バス代入れて東京から2万円ぐらいかな?),馬刺(メッチャ旨い!)でも食って飲んで(2万円),ワシントンホテルのそばの通りに並ぶソープに飛び込んで“そんなこと”して(2万円×2件),翌日はやまなみハイウェイで別府に移動して(黒川温泉・湯布院で10万ぐらいで豪遊してもいいね。この際),温泉に入り(頑張って1万円),旨いもん食って(頑張って2万円),“そんなこと”して(2万円×2件)からにいたしましょう。

 “そんなこと”を2日で4件もできない場合は,経費はお安くなります。また,4件で“そんなこと”をするとして,脳溢血とか心筋梗塞とかで病院にかつぎ込まれる費用を頭に置いておく必要がある人もいるかもね(笑)。サラ金でも50万円ぐらいはすぐ借りられるので,上のプランは男性なら多分「どなたでもお気軽」にできます(笑)。生命保険でドカンと返済可能なように契約とかしておいたら格好いいね。ま,ともかく変に生き延びないよう気を付けよう。後は適当に海だの山(あ。だから阿蘇なのか)だのでうまくやっていただきたい。

 女性については全然わからないけど,ともかく50万円ぐらいガツンと好き放題に極力短時間で使ってから「あっちの世界」を目指すというのがオススメ。「ふるさと納税」のつもりで,地方で消費活動をした後,うまくやるってのがよいでしょうか。それともどこかでエステで磨きをかけまくってから…ってな感じでしょうか。

 “死ぬ”と決めたら,何でもできそうなのがおもしろいねえ。死んだ気になって“生きたろか〜”なんてね。


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