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『闇屋になりそこねた哲学者』木田元(030410)
木田先生は中央大学の名誉教授。今年75歳。専攻は哲学です。ひょんなご縁で,かれこれ25年ぐらい前,私はこの先生とお茶の水の飲み屋で腕相撲をしたことがあります。当時,私はレスリングをやめて半年ぐらい経った頃で,多少は力があったはず,先生は50歳ぐらいだったはず,なのに負けました。その理由が今回わかりました。先生は当時,中央大学教授で現象学とかフッサールとかメルロ=ポンティなどに関する著作で有名でした(…ということをその場にいた学生さんたちに聞きました)。そんなインテリオジサンに負けるわけがない(と,思っていた)ハズなので,おそらく私は再チャレンジしたでしょうが,勝った記憶がありません。多分連敗したのだと思います。左右ともに。うー。懐かしい。先生,お身体に気をつけられ,どうぞお元気でいてくださいね。
■『闇屋になりそこねた哲学者』(木田元/晶文社/本体1,600円)
最初のほうは何だかタラタラした文章で「残念だけど,大したデキじゃないなあ〜」なんて思っていたのですが,途中からどーっと引き込まれました。
木田先生は恵まれた家庭に育ったのですが,戦争の時代にあって苦労され,闇屋・テキ屋などをやっていた時期もあったそうです。子どもの頃からスポーツが得意で,海軍兵学校で鍛えられ,さらに闇屋・テキ屋で重い物を持ったり喧嘩をしたり“修行”されています。この本の中で「私は喧嘩のプロ」とまでおっしゃっています(ヤワな東京っ子の私なんぞ相手じゃなかったんですね)。若い頃は右の写真のようにハンサム(26歳のときの写真だそうです。『太陽がいっぱい』でサインの練習をしていたときのアラン・ドロンみたい)。学者でハンサムで喧嘩が強く力持ち…。凄い。
さてさて,この本は木田先生へのインタビューをまとめたもの。カバーの袖に「日本を代表する哲学者の自伝のような本」と書いてあるのがおもしろい。インタビューをまとめたものなので,「自伝のような」なんでしょうね。しかし,そのおかげか非常にやさしい文章になってまして,中学3年生ぐらいなら読めると思います。哲学の話の部分はよくわからないでしょうが,先生の波乱の半生についてや語学の学習の仕方,先生が哲学を勉強された過程は必ず参考になると思います。
いま,大学に入った娘のカリキュラムを見ているのですが,「勉強の仕方」のようなコマが入っています(テキストが『知の技法』〈近頃の読書(2003.3.15)〉になっているクラスもあります)。娘には「学校でチマチマ学ぶより,この本を読んだほうが有意義かも」と言いたい感じ。もちろん娘には渡します。その後は高校生の息子で,次は中学生になりたての娘に(ちょっと彼女にはつらいかな?)。…というわけで,この本は高校や大学の「入学祝い」に贈ってもよろしいと思います。良書です。おすすめです。先生の温かいお人柄も胸にしみます。
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