『巨人軍最強の捕手』澤宮優(030406)
 小学生の頃,野球少年だった私の背番号は長嶋選手の3でもなく,王選手の1でもなく,澤村栄治投手の14でした。補欠だったわけではありません。進んでその番号を付けていました。子どもの頃読んだ「日本の偉人」といったシリーズの中に澤村英治投手のことが書いてあり,すっかり憧れてしまったのでした。で,その中に吉原選手のことも書いてあり,凄い選手だったらしいことは朧気ながら知っていました。

■『巨人軍最強の捕手』(澤宮優/晶文社/本体1,600円)
 この本を書かれた澤宮優氏は,1964年熊本生まれ。青山学院大・早稲田大の文学部をそれぞれ卒業されて現在はどこかの大学の職員だそうです(著者略歴による)。いくつかご著書もあり,インターネットでちょいと検索したところ今後も出版予定があります。どういう方なんですかね? ま,それはともかく,この本は面白かった。
 
吉原選手は1944年(昭和19年)に亡くなっていますので,澤宮氏はもちろん現役の姿を見たことはありません。それでもこの本を読んでいくうちに,姿勢を低くしてがに股でファーストのカバーに走り,大きな声を出す元気な吉原選手の姿が目に浮かんで来ます。数点の写真と,同時代を共にした方々の証言によりいつの間にか読者は,そのプレーを見たことがあるかのような錯覚に陥ります。これはなかなか大した筆力です。関心しました。ただ残念ながら澤宮氏は野球選手だったことがないようで,これは多くのスポーツ・ノンフィクションを読んでもよく感じるのですが,“これは選手の実感とは違うだろう”という箇所がありました。まあ,それを望むのは贅沢というものでしょう。そのかわり吉原選手の熊本弁は,きっと他の地域出身の人が書いたものより本当に近いだろうと思います。

 さて,この本のサブタイトルは,“伝説のファイター吉原正喜の生涯を追う”。こうして吉原選手のことを1冊の本にまとめていただいて有り難い。伝説は活字にしておいてほしいものです。澤宮さん,晶文社の方,どうもありがとう。
 西鉄ライオンズ,村山実,沢村忠,ファイティング原田,輪島功一,釜本邦茂…なんて人たちの“伝説”も,読んでみたいなあ…。そういえば。


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