『病いの宇宙誌』山口昌男(030223)
 同じ本なのに色の感じが随分違ってしまいました(右側が実物に近いです)。カバーが格好いいので,広げてスキャン。造本装幀は戸田ツトム+岡幸治さん。表紙だけじゃなくて背も帯も斜めの明朝体で統一しております。石だか炭だか藁だかよくわからない謎の物体の写真も効いてます。

 

■『病いの宇宙誌』(山口昌男/人間と歴史社/本体2,388円)
 文化人類学というのは,なかなか便利な学問のようで,山口先生に見せちゃうとなんでもかんでも分析されてしまうという感じです。帯には「治療文化人類学」なんて言葉も見られます。「ま,そうね。それもアリか」と思います。『笑いと逸脱』(近頃の読書〈2003.2.7〉)と同じように,山口先生がそこら中で書き散らしたり話しっぱなしになっていたのをまとめた本(1990年12月初版)。
 
本のタイトルにもなっている「病いの宇宙誌」は先生も自信を持って世に出された文章のようです。近代医学は患者の身体全体でなく部分を見てそこの完治を目指すが,それだけじゃマズイだろうというようなことが書かれています。病気と共生することも大事だという話もあり,病気=悪,病気=排除の対象,という考え方があまりにも浸透しすぎており,これはよくないぞと先生はおっしゃっております。医師の言葉を借りながら例えば風邪ならば,しっかりひいて回復の過程を経験することが大事で,それが他の病気に対処するときの練習にもなるのだというようなことが述べられていたり,医者と患者の地位の差,病気の祝祭性などにも話は及んでおり興味の尽きない内容です。
 その他諸々。玉石混淆。「治癒の文化」「死を引き寄せる技術」「映像の世界の文化英雄たち」など。「映像の世界の文化英雄たち」は映画『カッコーの巣の上で』を中心に書かれた文章。私は『カッコーの巣の上で』をちゃんと観ていないのでよくわかりませんが,この文章は面白かった。何かの事情で異常に管理の厳しい精神病院に送られた健常な男(映画ではジャック・ニコルスンが演じたのですよね)が,精神的に病んでいってしまう話のようで身につまされました。私も似たようなもので,山口先生風に言うと,執着気質の人の集団の中にいる分裂気質の人間らしく,どーも社内で収まりがよくないのでございます。20年も勤めているのに。仕事そのものは楽しいので精神的に破綻することはない(はず)ですが。近々レンタルビデオを借りて観てみようと思いました。
 山口節にも随分慣れ,この程度の読み物だとスイスイ読めるようになりました。きちんと理解しながら読んでいるわけではないのですが,少しずつ断片的に山口センセ的知識やものの見方・考え方が体内に蓄積されてきた感じがしています。


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