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『喪の途上にて』野田正彰(030211)
以前,広告か何かで見かけた記憶はあるのですが,つい読みそびれていた本。近所の「BOOK-OFF」で発見。100円。
■『喪の途上にて』(野田正彰/岩波書店/本体3,000円)
野田正彰先生(京都造形芸術大学教授。精神科医)は,いつも気になる方。精神科医としての知識や経験をベースに,現代の人間や社会の問題について鋭い考察・意見などを述べておられます。この本は1992年1月初版1刷。私の手元にあるのは1998年12月の12刷。この価格にしてはかなり“売れた”本のようです。
この本の副題は「大事故遺族の悲哀の研究」。1985年8月の日航機墜落事故の遺族の方々から聞き取られたことを中心に文章がまとめられています。遺族には「悲哀の時間」(=喪の仕事,喪の過程)が必要であり,周囲はそれに対する配慮をしなくてはならないということが繰り返し強く訴えられています。
「はじめに」から引用。
「今日の不幸の特徴は,効率を求めて慌ただしい動きを止めない日常の傍らに,ふと,その人だけの不幸が停滞していることにある。人々も,友人や,知人も,親族も,近隣も,地域社会も…変わらぬ日常に生き,その人の悲しみのために少しだけ時間を止めようとしない。遺族もまた,日常的業務に多くの時間を奪われている。日常的業務が悲しみを紛らわすといわれるが,私はそれを現代の欺瞞だと思う。今の生活形態にあっては,一面の真実ではある。だがそれは,貧しい悲しみの紛らわし方にしかすぎない。悲哀は,日常の流れを断ち切って,全ての時間をしばし止めてこそ深く体験される。ところが今日の不幸は,奔流する日常の片隅に,陥穽のような空白を作っている」
ヘビーでしたが,父の一周忌を終えた後,改めて自分を見つめ直すにはよい読書でした。急に大事故で家族を失ってしまった方々の,想像の及ばない世界の話(飛行機墜落,遺体回収〈それも僅かな部分遺体だったり〉,マスコミの取材攻勢,遺族会,補償問題等々)が展開され,事故から数年経って,ようやく少し立ち直りかけているところの方々の声が重く伝わってきます。妻にも一読を薦めました。
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