漫画:『カムイ伝』白土三平(030105)
 2003年2つ目の読書もG先生に送っていただいた漫画。これも満腹。G先生,ありがとうございました。

  

■『カムイ伝』(全21巻/白土三平/小学館ゴールデン・コミックス)
 凄い作品です。めっちゃ濃い。この1〜21巻は第1部。その後はどうなっているのだろうと,インターネットで検索。ちょっと勉強。カムイというのはアイヌ語で「神」という意味だそうです。で,この後の2部が現在進行中というか,始まったもののいまは途絶えているんでしょうか? よくわかりませんが,インターネット上で見る限り,第2部の評判は芳しくないようで,この先を読むかどうしようか,悩みます。
 ともあれ,この第1部だけでも,充分読み応えがありますし,そのフレームの大きさに驚きます。「ある時代の文化・歴史・制度など,とにかくひっつかまえて1つの体系というか混沌を再構築して描ききってやるぅ〜」という山口昌男先生ではありませんが,そんな気迫が感じられます。大江健三郎の『同時代ゲーム』を読んだときも同じように感じましたが,さすがに漫画,それと私も少しは大人になったせいか,今回の白土作品はよりリアルにズシンと来るモノがありました。士農工商,下人・非人という差別や階級闘争的な問題が全体の低音部としてあっての物語で暗い話なのですが,「ここんとこ,わかってないと社会を見誤るぞお〜」と予備校講師風に強調しておきたい気分です。暗示的に自然界の食物連鎖が描かれるあたりも怖い。一揆や侍の対決場面などでは,手足や首が飛ぶなど凄惨なシーンも描かれているのですが,実はこれが現代では,もっとソフトに言論や経済的圧力で,しかし本質的には武力や暴力の行使と何ら変わっていない形で生きていると思うとゾオオ〜っときてしまいます。全体に解説やセリフが多すぎる感じだし,絵も何だか汚いし暗い(冷静に見ると上手な絵です)のですが,それでも是非皆さんに読んでいただきたい作品です。おすすめです。
 昔,黒澤明の『七人の侍』について,あるオバサンに「あれはいいですよね」と言ったら「汚くて貧乏くさい百姓や,どしゃ降りの雨の中で泥んこになってる侍を見て何が楽しいのよ」と一蹴されたことがありましたが,まあ,そうした所はご辛抱いただければと存じます。
 なお,忍者のカムイが活躍するテレビで放送していたものは『カムイ外伝』でして,私も間違っていたのですが,この『カムイ伝』では,忍者のカムイは1人の印象的な登場人物にすぎません。
 それと,21巻にある副田義也という方の解説は読ませます。寝転がって読んでいたのが思わず座り直してしまうような,品格のある名文だと思います。もし,この『カムイ伝』を読まれる機会がありましたら,最後の最後のこの解説も是非読まれるとよろしいと存じます。


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