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『小説 小栗上野介』童門冬二(021231)
2002年最後の読了書籍は,童門冬二先生の『小説 小栗上野介』。
■『小説 小栗上野介』(童門冬二/集英社/本体1900円)
上毛新聞・神奈川新聞に2000年10月〜2001年9月まで連載されたものをまとめた書籍。四六判・2段組・約400ページの力作です。読み応え充分。しっかりとした出来で,最後まで緊張して読みました。ただ,連載の期日や単行本の分量の制限もあったのでしょうが,最後まで同じペースで描き切っていただけると,私のような知識の少ない読者にはありがたかったのですけれど…。
小栗上野介(おぐりこうずけのすけ)は,幕末の江戸幕府の勘定奉行などを務めた人で,勝海舟などと違って,あまり有名ではない幕臣。私には,何となくセコく頭の堅いお年寄りというイメージがあります(幕末を描いたドラマなどでは,このような描き方をされる場合が多いのではないでしょうか。それと上野介という名前も印象を悪くしている原因かもしれません)。しかし,この小説では,最後まで江戸幕府の重臣として振る舞った誇り高き組織人としての側面と,幕府の中にありながら開明的で賢明で行動力のある人物像が強調されています。そういえば,童門先生の小説で出てくる小栗上野介は,悪く描かれてはいないようです。先生は「あとがき」で,江戸城開城について,小栗らが主張したように,「たとえ出刃包丁を振り回しても,サツマイモを刺し貫きたかった心情は,今もわたしの胸の一隅にある」と書いていらっしゃいますが,こうした点だけでなく,組織人としての所作といったところで,小栗上野介を高く評価していらっしゃる様子がうかがえます。組織人の参考にもなりますし,エンターテイメントとしても非常に面白い仕上がりになっています。
実母や妻との絡みも,ほのぼのとした,いい味が出ています。あまり言われていないことだと思いますが,童門先生は恋人達や夫婦など男女間の話をさらっと,いやらしくなく,でも愛情たっぷりで上手に書かれますよね。おススメです。
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