『自由と秩序 競争社会の二つの顔』猪木武徳(020914)

  

■『自由と秩序 競争社会の二つの顔』(猪木武徳/中公叢書/本体;1,700円)
 猪木武徳先生は国際日本文化研究センター教授。もともと大阪大学教授で,併任されていたようですが,最近は国際日本文化研究センター教授という肩書をよく目にします。大阪大学は辞められたのですかね? 労働経済学,経済思想,日本経済論がご専門(国際日本文化研究センターサイトより)ですが,それらに限らず,幅広い評論活動をされています。新聞等で拝見する先生の論評は鋭く重く,いつも参考になります。

 本書は2001年7月10日初版。私が読んだのは2001年11月25日の再版です。

 何でこの本を読んだかといいますと,経済学の入門書をたくさん読んでは来たものの,「何で資本主義を続けて行かなきゃいけないんだ?」ということがよくわからなかったからです。社会主義の壮大な実験が破綻したことはわかります。が,資本主義体制だって現状,それほどうまくいっているとも思われない。これで行くしかないのだろうか,と実は確信が持てないでいるのです。この本の書名を見たときに,きっと答があるだろうと期待しました。

 この本は4部構成。第1部「民主制をめぐって」,第2部「市場経済の力と限界」,第3部「戦後日本の合理主義」,第4部「国際社会の中の日本」。

 先の私の疑問の答は第2部にありました。要するに,他に現状に変わるよい体制が考えられない(ま,これだけ市場経済が発達してしまえばこれをひっくり返すなんてことはまず不可能だろうとも思いますが)ので,これで行くしかないということと理解しました。現状の体制のよくない点を補修しつつ行くしかない,と。

「経済競争を否定した計画経済システムも,その逆の一元的な競争システムも,いずれもそれだけで人間社会に秩序と平和をもたらすことはない」(84ページ)
「人間は(略),たんなる実用的な合理性を超えた存在であるから,その要求するところをすべて満たすような単一のシステムを創り上げることはできない。このことは,結局いかなる社会的システムも折衷的(eclectic)なものにならざるをえないことを意味する」(85ページ)
「求められるのは,この市場や民主制のもつ欠陥や難点を補正したり,補強作業を行ったりすることによって,なんとか使いこなしていくことなのである」
(240ページ)

 こんなことは皆さんわかっていたことなのでしょうが,私は改めてこう言っていただき,「なるほどね」と足元が固まった気がしました。

 さてさて,私のチビた疑問はともかく,この本に書かれていることは示唆に富み,奥が深いです。これをテキストにして,賢い方の講義を受けたいという感じです。つまりちょっと私にはレベルが高すぎて,ついていけない部分があり,「これってどういうことなのかな?」と何回か思いました。それと,先生のお立場もあるとは思いますが,「で,先生はどうすればいいとお考えで?」と質問したくなるようなところもいくつかありました。非常に勉強になりました。また何年か後に是非読み返してみたい本です。自分が成長しているかどうかわかるでしょう。

【余談】 この本の帯にもラファエルロの「アテネの学堂」の一部が使われています。「知的な雰囲気を出す」のに,この絵は最適なんですかね(近頃の読書(2002.9.11)参照)。猪木先生の本の帯は間違っていません(上の写真だとチト見づらいですが)。左がプラトン,右がアリストテレスです。


Google

TOPへBACK

このサイトは「目次部分」「本文部分」という2分割の画面で表示される仕様にしていますが,検索エンジン経由ですと単独のページがピックアップされる場合があります。そのような場合には,恐れ入りますが以下をクリックして,新たにアクセスし直してください。
【注】2分割で表示されている場合に下をクリックしますと,フレームの中に2分割の画面ができてしまいますのでご注意ください。その場合はブラウザの「戻る」ボタンを押していただくと,現在の画面に戻ります。
http://homepage1.nifty.com/kanen/