『高校生のための経済学入門』小塩隆士(020901)
 来年に大学受験を控えた娘が「経済学っておもしろそうだね」なんて言っていることもあり,この本を本屋さんで発見したときはちと嬉しかった。帯には「お父さんも再入門!」なんて書いてあるし…。

  

■『高校生のための経済学入門』(小塩隆士/ちくま新書/本体700円)
 
2002年3月発行の新刊。私が買ったのは同年4月の2刷でした。これ,売れてるってことですね。著者の小塩隆士先生は1960年生まれ(私より2歳年下)で東京学芸大学教育学部助教授。

 小塩先生は,はしがきで,「(高校のカリキュラムでは)「政治・経済」や「現代社会」という科目が経済学の内容を含んでいますが,あまり突っ込んだ説明はされていないようです」と控え目におっしゃっています。が,私の見るところ,経済学の理論的なことは需要と供給の例のグラフ以外は,経済事情あるいは経済史関連の記述でうまくごまかしてるな…という気がします。これは憲法などにも言えていて,日本国憲法の人権の部分を深くやらないで(ここが基本のはずなのに),人権思想ですとか,大日本帝国憲法から日本国憲法へとか,日本の統治機構の仕組といったところで軽く流しています。これは現場の先生方のご専門の関係で,経済学部や法学部出身の方が少ないからなんだろうな,などと思っています。経済学に関して言えば,歴史や経済の現状については他学部出身の方でも比較的教えやすいですものね。

 とはいえ社会に出ればたいていの場合,経済に関する知識が多いにこしたことはないわけでして,高校ぐらいでもう少し教えていいと思います。たとえば,景気が悪いときに国債を発行して国民に借金してまで政府支出を増やす根拠は何なのだとか,それがうまくいかないから追加的に同じ事を何年も繰り返していくとどうなってしまうのか(現状なわけですが)とかぜひ教えてあげてほしいですね。国債も年金も負担の将来世代への転嫁という面が大きいんだぜなんてことが強調されすぎて高校生の暴動が起こったりして…。

 この本は,これまで私が読んだ経済理論の入門書(入門の入門ですけど)の中で一番わかりやすかったです。一般教養としての経済学ならこれでほぼ十分でしょう。独占(この話もホントは面白いんですよね。独占を許すことのメリットなんてところをちゃんとみんなが勉強していれば,変な「公平」とか「平等」がよくないってコトもわかるんですけどね)と寡占とか厚生経済学の基礎,IS-LM分析等々,入門レベルの議論で扱われていないものももちろん多いですが,普通の大学の経済学部の1・2年生で,ここに書いてあることだけでも理解している学生は相当少ないと思われます(淋しい話かも)。ミクロからマクロまで概観できます。数式・グラフを極力使わずに説明されています。

 それと少しですが,基礎でない話も出てきます。たとえば90年代の財政政策について。当初予算で抑制,補正予算で追加を繰り返していた頃,本書では「マイナスの乗数効果」が発生していたという指摘がなされています。あの頃「ストップ・アンド・ゴー政策じゃ効果は小さい」という話はありましたけどね。「マイナスの乗数効果」って経済学の教科書でまず書いてないですよね。ふーん。なるほどな〜と思いました。

 おすすめです。お父さんだけでなく,お母さんにも読んでいただきたい。


Google

TOPへBACK

このサイトは「目次部分」「本文部分」という2分割の画面で表示される仕様にしていますが,検索エンジン経由ですと単独のページがピックアップされる場合があります。そのような場合には,恐れ入りますが以下をクリックして,新たにアクセスし直してください。
【注】2分割で表示されている場合に下をクリックしますと,フレームの中に2分割の画面ができてしまいますのでご注意ください。その場合はブラウザの「戻る」ボタンを押していただくと,現在の画面に戻ります。
http://homepage1.nifty.com/kanen/