近頃の読書(020811)
 山口昌男先生の『「挫折」の昭和史』を読み終わった勢いで,薦めてくれる方のあった,五木寛之さんの『日本人のこころ4』を一気に読みました。

  

■『日本人のこころ4』(五木寛之/講談社/本体1,500円)
 
本書の帯には「東都の闇を支配した「賤民の王」 日本列島の血流となった漂白の民 エタ,非人,サンカと呼ばれ差別された人びとがつくった豊饒な日本文化の原郷への旅」と書かれています。
 今回の読書については,昨年から続いている山口昌男先生シリーズ,小沢昭一さんまとめ読み
(近頃の読書(2002.5.9)),昨年暮れに読んだ中上健次『紀州』(近頃の読書(2001.12.29))などから少しは私の頭にも知識が蓄積されており,若干の知識を持ち合わせていたせいかスムーズに進みました。まあ,作家である五木寛之さんの文章が,読みやすく書かれていることが最大の要因だとは思いますが…。
 
この本を読む前の日に読み終えた山口昌男先生の『「挫折」の昭和史』もそうでしたが,この本で,五木氏も従来の歴史学(権力の側から見た歴史と言ってもいいと思いますが)では無視されて来たような事柄の中に私たちの「根っこ」があるのではないか,というようなことをおっしゃっています。
 
「非定住民」「一所不住」「家船」「賤民」「遊女」「サンカ」「芸能」「被差別の民」「皮革生産」「悪所」「遊郭」「浅草」「フーテンの寅」などの言葉がぞろぞろ出てきます。山口先生ほど深く広くなく,中上健次さんほど生々しくなく,五木氏は適度な分量で味付けも濃くなく,どなたでも召し上がれるように料理されています。さすが「売れる書き手」という感じがいたしました。そういえば,五木氏の作品は『青春の門』シリーズの他に何冊かは読んでいるのですが,悪い印象はありません。でも『青春の門』もそうですが,特に強い衝撃を受けたこともありません。今回も同じような感じでした。しかし,もしかすると,今回はたまたま先に山口昌男先生シリーズや中上健次さんの『紀州』を読んでいたので,これまでと同じような感じになってしまったのかな,という気もします。取り上げられている事柄はあまり一般的でないことですし,コワイ面もあるけれど興味深い話です。
 
読んでソンのない本だと思います。
 それと,本書に掲載されている写真はかなりイケてます。実はこれは借りて読んだ本でして,まったく失礼なことに撮影された方のお名前がわからなくなってしまいましたが,モノクロでビシッと決めた写真でして,「おお,プロの迫力じゃあ」と感心してしまいました。五木氏のスナップみたいな写真ばかりなのですけれど,どれも迫力というか集中力の感じられるようなデキでして,こちらも一見の価値ありだと思います。何気ない写真なのに撮影者の気迫が感じられるって凄くないですかね?


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