近頃の読書(020621)
 小林光恵先生の新刊。意欲作。看護の世界から踏み出してエンターテイメントに挑戦されたんですね。今回は。

■『限りなくキョウダイに近いフウフ』(小林光恵/作品社/本体1,500円)
 
これ,結構怖い話でして,兄妹のように付き合う夫婦が,実態に合わせて本当に兄妹(法的な意味で)になろうとする小説です。

 夫婦も長くやってると,お互いが空気のようになったり,兄妹のようだったり,私の場合は,ツマは「パンツのゴムみたいなものでいてくれないと実にコマル」なんて愛情のかけらもないようなことを言っているわけですが,子供のいないご夫婦の中には確かに兄妹みたいな関係の人は少なくないものと思われます。また私のトコのような子アリ夫婦にしてもいずれ子は離れていくわけで,親の役割をほぼ終えた後の私ら夫婦は一体どんな関係になるのか,と思うと怖くなったりします。
 
夫婦って何?
…とつい考えさせられてしまうところが怖いんですね。夫婦なんて大して強固な関係でもなく,内心では「結構危うい関係だよね」なんて思いつつ考えないようにしてやり過ごしてますものね。大抵は。もちろん,この小説ではそんなことが露骨に語られたりはしてないのですが。

 例によって語り口が自然で,読みやすいです。この読みやすさの原因は文章のリズムがいいということなのでしょう。仲のいい友達から「あのね…」で始まる世間話を聞いているように読み進めていけます。登場人物のキャラクターが頭に浮かびやすいのも凄いテクニックだと思います。これは『ナースマン』のときにも思ったことですが,性格づけがきっちりできているんですね。

 セックスレス夫婦,晩婚,離婚,DV,また高齢化で親との付き合いが長くなる,相続もややこしいといったことなど現代家族の状況がさまざまに折り込まれています。こうしたナマナマしい現実(20代後半から40代後半の人には特に身近な話として読めるように思います)も含めて,話の展開が面白いことはもちろんですが,大変興味深く読ませていただきました。

 おススメです。エンターテイメントとしてそのまま楽しんでも読めますし,「ちょっと待てよー」なんて,夫婦のコトを考えるきっかけとして読まれてもよいと思います。話題作になっていい作品ですが,さて,どうなることでしょう。このまますぐテレビドラマの脚本も起こせてしまう気もしますので,テレビ放映されたら社会の大きな話題に確実になると思うんですけどね。


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