身分制度は現代の方が厳格だ

みぶんせいど【身分制度】
封建時代に人の身分が固定していて、代々継承され、
変更することが困難または許されなかった制度。


江戸時代は厳格な身分制度のもとで民百姓は
苦しんでいた、よくある歴史書の書き出しにある一文だ。
もしかして、そうだと思っている人はいませんか?
それっておもいっきり間違ってますわ。
とは言ってもこれを書いている私かて学生のころは
だまされていたのだから
別に恥ずかしいことではありません。
ここでは赤穂浪士を例に出して勉強してみましょう。

蛙の子は蛙、あ、いやそうじゃなくて
厳格な身分制度ということをわかりやすく言ってみると
武士の子は武士、百姓の子は百姓ということである
といっていいのではないだろうか。
よくよく考えてみればこんな社会はたしかに嫌だね
生まれた瞬間に将来が決まっているのって
キリスト教的に表現するなら予定説といったところか
たとえて言うならば共産党の幹部の家に生まれたら
将来はバラ色とか、国家首席の家に生まれたら独裁者、
政治家に生まれてきたら政治家になることが決まって
いるみたいだ・・・ってよく考えてみたら現代はそうやん(笑)
いやな世の中やね、ほんま

百姓の場合
だいいち、これは不公平というよりむしろもったいない
話ではないか、よくよく考えてみれば百姓の子どもに
生まれてきたといってもその子が上手に米が作れるとは
限らない。霜の降りる夜に野菜の管理ができないかもしれない。
今日は眠いから明日でいいや、などと夜通し畑に通うことを
しないければ野菜はもうしなびてメタメタである。
そんな才能に恵まれない百姓の作った食べ物を食べる国民は
とっても不幸だ。

大工の場合
私の例で話してみよう。
他でも書いたが私の親父は大工である。というわけで
厳格な身分制度のもとなら私の将来は大工になる必要があるわけだ。
しかし学校の技術の時間に製図をしてみてわかった事なのだが
私には大工に必要とされる基本技術がまったく不足していることが
判明した(笑)。
おまけにおおざっぱな、よく言えば思いっきりのいい性格
のおかげで緻密な設計、施工などは望むべくも無い。
とりあえず家の形にはなるだろうが、はたして何日持つのだろうか。
耐久力は韓国で数年前に落ちまくった橋やデパートといい勝負
のような気がする。私がお客さんなら絶対私には依頼しないだろう。


政治家の場合
政治家だって同じだ、河野家を見てみれば一目瞭然だ。
血統図だけ見れば良血であることが明白な河野洋平氏に
政治家としての才能があると思う人はまずいないだろう。
息子の太郎氏は隔世遺伝で、ましな遺伝子をうけついだようだが、
そんな人物が大臣をしなければいけないというのは不幸な話だ。
しかし、これは河野洋平氏が無能であるとかそういうこととは関係なく
そういう身分制度になっている現代社会がいけないのである。
もしかしたら彼はなにか有能な才能をもっていて
(というより何も才能のない人物がいたらそれこそ不思議だ)
歴史に名を残したかもしれない、栄光ある家名に生涯消えぬ泥を
塗らなくても良かったはずなのだ。
身分制度が固定されていると、どれだけ迷惑なものかは
昔の日本陸軍や海軍を見ればよくわかるだろう。

年功序列で保たれる和
海軍における序列とはハンモックナンバーが全てであった
事は誰もが知っているだろう。
早い話が、学校における年次が下の者は上の人間を抜く事が出来ない
という実にわかりやすい決まり事だ。
平時においては実に有効な取り決めである事は言うまでもない。
なにしろ戦争が起きない平和な世の中では、戦争を遂行する能力で
昇進させるなどまったく無駄な事であり、むしろ有害なものである。
そのような能力は、いざ、事が起こってみないとはっきりと
目に見えるものでもない。
そのような要素で昇進をさせてしまえば「組織としての和が乱れる」
ことは必然である。
我が国において和を乱すとは、殺人を犯すよりも罪が重いということは
誰もが知っているだろう。
そこでやむをえず、誰も文句がつけられない絶対的基準をすえる
必要があるわけだ。
確かに年次が上の人に「あんたのこれは間違ってるんじゃないか」
とはなかなか言えないだろうねえ。
なおかつ年次が一緒でも成績にはピンからキリまであるので
主席の奴にいったいどんな文句が言えるのだろうか?
「ふん、しょせん出来そこないが」などとバカにされるのがオチである。
だから平時であれば、村山さんが首相になったってたいしたことはないのだ。
おいぼれた年寄りにむかって「あんたの能力は心配やで」
といっても気にする必要はない、そんな能力をいつ発揮するのだ。
そんな機会は早々訪れるものではない。いいんですよ、誰がなったって。

平時でなければ大混乱
しかし、いざ有事になってしまうと、これは大変である。
阪神淡路大震災においてのノンビリムードは誰の記憶にも
新しいことだろう。私の住んでいる地区だって超激震地区であり、
近所の三分の二が建て直すハメになったくらいだ。
危機管理なんて必要ない、だって何も起こらないんだから
と常日頃から主張(見たいな事)していた社会党に素早い
対応を望むほうが間違っている。
この間の潜水艦事故で社民党は、思う存分森首相を
非難していたわけだが、そっくりそのまま、彼らにお返しする。
まあ、それはさておいて平時の取り決めにしたがって
戦争中も人事を行ったそれこそが最大のミスであることは
疑いの無い事実である。
どれだけ能力が高かろうとも、山口提督は水雷艇の艦長を出し抜いて
司令長官にはなれなかったし、小沢提督だって機動部隊を指揮できる
順番がまわってきた時には、機動部隊が組織できないほど物量が
足りなくなったという悲惨な目にあっている。
反対に能力があろうと無かろうと年次が高く秀才であった、おっさん
達は思う存分無能ぶりを発揮し、虎の子のゼロ戦やパイロット
空母を沈めてしまうという、ていたらく。
「赤紙一枚で兵力の補充は出来るから気にする事は無い」だとさ
これで勝ったらそれこそ不思議だ。

ここで一度、陸軍と海軍の違いを述べておこう。

陸軍においては陸士(陸軍士官学校)を出なくても大将にはなれる。
これがなぜかは簡単で、無能な将軍の指揮で戦っていれば命がいくつ
あっても足らないからである。だから成績優秀でも能力の足らない人物は
それとなく左遷してしまうという事が行われていたからだ。
その点、海軍は完璧である。海軍兵学校を出ていない人物はどんなに
能力が高かろうとも、兵科の少佐や中佐以上の軍人にはなれない。
完璧な身分制度が出来上がっていた。

兵学校があれば当然大学の事についてもふれる事が必要だろう。
陸軍においては陸士よりも陸大の方がはるかにウェートが高かった。
陸大さえ出れば出世は思うがままだったようである。
海軍においては面白い事に海兵を出れば、海大を出なくても大将に
なれる、そのように陸軍と海軍は正反対であるということも言えます。

赤穂浪士の場合
元禄時代といえば現代なら「もはや戦後ではない」と言われる
くらいに平和な世の中であった。
そらそうでしょう、関が原から100年くらい経っているのだから。
ところが社会の流動性はとんでもないくらい高い、そんな時代だった。
当時の武士は現代の日本よりも、むしろアメリカに近く
すさまじいほどの転職三昧であった。

ここで、一つあなたに質問をしてみよう。

四十六士のなかで親の代から浅野家に仕えていた者の割合を答えよ
1 もちろん100%
2 ほぼ90%
3 75%くらい
4 50%未満
5 じつは10%

5は論外としても1.2だろうなって大部分の人は答えるだろう。
こたえはなんと4番である。

もう一つ質問をしてみよう。

播州浅野家の家老四人のうちで、先代から家老だったのは?
1 もちろん4人に決まっている
2 たまたま3人だった
3 じつは2人しかいません
4 1人きりでした
5 全員成り上がりでした

1か2だろうねって皆さん答えるだろうが、実はこれもすごいことに
4番なのである。

なんと先代から家老、つまり「家老の子は家老」という言葉に
対応しているのは大石内蔵助ただ1人であった。
残りの三人は全て一代家老である。
それだけではない大野九郎兵衛の父親は百姓だった。
百姓の子供がたった一代で家老になれる社会とは
まことにすさまじき競争社会ではないだろうか。

作家の堺屋太一さんの言葉を引用してみよう
「家康は家老も百姓も区別が無い社会はよろしくないが
出身によって人生が決定するような社会を考えたわけではない。
百姓から武士に、武士から町人に変わる可能性は充分に残しながら
それぞれの地位につけば、はっきりと扱い方の違う社会を
目指していたといえよう」

「徳川家康の研究」プレジデント社より

そういう風に実にフレキシブルな考えを元につくられた身分制度
は現代よりもはるかに機会の平等やチャンスに恵まれていた
それこそが徳川幕府が長く続いた最大の要因であったのだろう。
(それ以外にも商業経済の発達に伴って武士の地位というのは
光通信の株券のごとく値下がりする一方で、幕末まで
相対的に下落の一途をたどったが、これは別に書こう。)
しかし、どんなすぐれた制度であっても何百年も続けば、さすがに
金属疲労を起こすものである。
幕末の頃にいたっては「人の身分が固定していて、代々継承され、
変更することが困難または許されなかった」の定義そのままになってしまうのである。
そのあたりは福沢諭吉の自伝などを読むとよくわかる。
下級武士の子は下級のまま、それは面白くなかったことだろう。
上級武士の家計に生まれた子供はどんなにアホでも上に立つそんな社会は
たしかにつまらない。
現代でもたいして違いは無いのかもしれへんけどね