成果主義とは
成果主義とは何のためか?
目的は、機会均等に組織員に誇りをもたらすこと。企業の継続はその手段。
下記は、毎日新聞に、第一部を05年6月7日から17日、第二部を8月24日から31日、反響特集を9月26日まで連載された特集に向けて検証、所見を述べたものである。
三大新聞の一社が、成果主義について取り組んだとは注目に値するのですが、現状の日本社会の成果主義の必要性とその解釈については誤解があると思い新聞社にも書き送ったものです。(一部は記事を要約したので、詳しくはリンクされた原文を参照されたい)
目次
1) 第1部「成果主義」って何ですか
2) 第2部「成果主義」って何ですか:・試行錯誤
3) 第2部・試行錯誤 反響特集
1) 「成果主義」って何ですか 第一部 (毎日新聞)
反響特集
特集の結論として
成果主義は差をつけすぎてうまくいかず、年功制はつけるべき差をつけずに駄目になった。業種、業態ごとに労働事情は違うはず。時間はかかるだろうが、それぞれにあった最適な人事評価制度を探していく必要がある。
と、結んでいるが、要は、評価者、被評価者の立場や都合でなく、企業継続を目的とした被評価者から納得の得られる評価制度を考えるべきであろう。
どうしたら、「やる気」、または少なくとも、「やらなければならない気」が起きる制度になるか、と。
以下は、個別所見 最新順
re:「成果主義」って何ですか 結論
成果を上げ、パイを増やして互いの分け前を増やそう。
re:「成果主義」って何ですか 付言
>>成果主義は差をつけすぎてうまくいかず、年功制はつけるべき差をつけずに駄目になった。
>>業種、業態ごとに労働事情は違うはず。時間はかかるだろうが、それぞれにあった最適な人事評価制度を探していく必要がある。
>被評価者も参加して作る貢献度評価制度がそれである。
上記も、個別社内事情に合わせた設定、運用が必要であり、それはまた毎年の事情に合わせて変わるものでもある。
原則は、出来高払い。この原則上で、どうしたらやる気が出る風土となるか。
上司次第で、部下が得られるものは決まるが、上司が仕切ろうとすればするほど、部下のやる気は出ない。
なぜなら、上司が誇りを手に入れてしまえば、部下に誇りは手に入らないから。
すなわち、花(誇り)を部下に与えれば、実(継続)は経営者の手に入る。
第1部 悪夢と福音 反響とその結論
「成果主義」って何ですか」 10
「自分の実力をちゃんと見てくれているのだろうか」。
「成果主義」による人事制度が、日本の企業社会にもたらした功罪は何か。働く現場からその答えを探った連載「『成果主義』って何ですか−−第1部 悪夢と福音」(6月7〜17日掲載)に、多くの読者からご意見、ご感想をお寄せいただきました。
# その要約
■現役世代
◇「今までがもらい過ぎ」と/明らかに不可能な目標設定
●固辞していた店長に任命され、1年で黒字転換させたが、「上司の言うことを聞かなかった」との理由で降格になった。
●「成果」の基準がはっきりしない。成果主義の目的は総人件費削減としか思えない。
●上司に対する「受け」がかなりのウエートを占めており、明らかに不可能な目標設定がある。
●部・課・係とチームでサービス水準を引き上げていくもので、個人をバラバラにする成果主義はなじまない。
●本来は現在の実力を査定する「実力主義」であるべきだ。
■家族
◇個人をバラバラにする/ノルマ未達成でリストラ
●企業の利潤だけが追求される中、人をもっと尊重する働き方に変化すべきだ。
●日本特有の「仕事が第一」という考え方に、いつも違和感を感じる。
●息子たちの年代が定職に就かないのもこんな現状だからだろうか。フリーターになってくれた方がどんなに楽か、と考えてしまう。
■OB世代
◇目的は総人件費削減/評価の唯一の尺度は「利益」/協力者にも見返りを
●生産性向上や業績改善のために成果主義を取り入れたというケースは聞いたことがない。目的が総人件費の削減にあるからだ。
●成果主義=拝金主義に求められるのではないか。
●成果を上げるのに陰ながら協力した者にも何らかの見返りが必要だ。
●あるサラリーマン・アンケートによると、評価への不満が7割にも及ぶ。会社を辞める原因もほとんどがこれです。
●仕事は計画より長くかかることはあっても、短いことはない。残業時間の上限を決めておくべきだ
◇労働事情に合う評価制度を−−労働政策研究・研修機構統括研究員、伊藤実さん
成果主義は差をつけすぎてうまくいかず、年功制はつけるべき差をつけずに駄目になった。業種、業態ごとに労働事情は違うはず。時間はかかるだろうが、それぞれにあった最適な人事評価制度を探していく必要がある。
毎日新聞 2005年7月4日 東京朝刊
所見
目的、情報の共有がなく、被評価者の納得が得られない評価制度なら評価査定など行わない方がいい。
所属企業の必要性と報酬への自己責任を、被評価者が自覚しないうちは、上記のような意見が交錯する。
社員が所属企業の必要性、企業継続の必要性、それへの自己責任を感じなければ、愛社精神や<やる気>の良循環は始らない。
この会社が、自分にとって必要であり、守り育ててゆく価値があると感じない限り。
それは、自分の欲しいもの、すなわち、必要な金と誇り(認められる)が手に入るかどうかによる。
となると、経営者は、それは自立自助、自己責任で手に入るものだ、と社員が理解、納得するシステムが必要になる。
被評価者も参加して作る貢献度評価制度の事例
第一部 完
以下、個別新聞連載分とその所見です。(最新順)
「成果主義」って何ですか 9
ゴマスリ、情実の横行は何故
東京都内にある大手ソフトメーカー。中小企業向けの営業・マーケティング部門に配属された社員に、阿波踊りの踊り方を教えるビデオが配られる。
以前、徳島のソフトメーカーに勤務していたこの執行役員が、職場に一体感を築こうと数年前から始めた。
新たに配属された社員たちは「参加しないと査定に響くのか」という疑問を上司にぶつける。ある上司は「参加は君の自由だよ」と答えていた。しかし、この上司が突然、執行役員に呼ばれた。03年12月のことだった。
この上司のグループは、阿波踊りへの出席率が80%前後で、他のグループに比べ1割ほど低かった。席に戻って来た上司は、青ざめていた。
「執行役員から、『来年は君は必要ない』と言われた。出席率が低いのは部下の掌握力がない証拠だと罵倒(ばとう)されたよ」と、当時の部下に漏らした。上司は翌年、担当していた部門を外れた。
◆ ◆
大手外資系IT(情報技術)企業の元社員(48)は「成果主義は上司に生殺与奪の権限を与えてしまう。特に外資系では力のある上司に権限が集中し、『絶対君主』的な存在になることがある」と指摘する。
同社の大阪営業本部ではかつて、部長の実家で行う田植えの手伝いをしたかどうかで評価が変わったという。京都にある実家に集合し田植えをした部下には業績の数字に手心を加える。手伝った社員の多くが、翌年、昇進を果たしていた。
◆ ◆
経済評論家の森永卓郎氏は「成果主義の最大の欠点は、公正で公平な評価が難しいこと」と指摘する。実力主義といわれる米国でも、上司をホームパーティーに招待するなど家族ぐるみのゴマすりが横行するという。
森永氏は「成果主義をうまく機能させるためには、評価に上司の査定を入れない仕組みにするか、上司が不公正な評価をしたら、いつでも他の部署に移れる仕掛けを導入することが必要」と主張している。
毎日新聞 2005年6月17日 東京朝刊
所見
何故、公正な評価が行われないか。
公正な評価とは目的ではない、手段である。
その存在目的は企業継続であり、そのための業績改善であり、それを可能にする評価システムが求められる。
自己過信上司独裁や自立的業績改善を求めない風土に、情実やゴマスリが横行する。
だが、業績改善が不可欠となれば、やる気を持った人材が必要となる。
それには、部下のやる気を得られる公正評価が不可欠となる。
「成果主義」って何ですか 8
「成果主義」って何ですか:第1部 悪夢と福音/7
逃れられぬ年功の呪縛?
3人の課長を束ねる上司の所長が休んだ。「今日がチャンスだ」。電力会社の課長だった長沢健一さん(62)=仮名=は「談合」を仕掛けた。
「談合」は、自分のためでもあった。長沢さんは、「評価者の一人になれ」と命じられ不安だった。「他のグループの部下はよく知らない」。しかも、3人の課長のうち、自分だけがまったく違う評価をしたら、上司に「人を見る目がない」と思われ、自分の評価に響くと心配した。ほかの2人に「評価がバラバラだったらまずいよな」と声をかけると、2人とも大きくうなずいた。
「成果主義で社員が個人プレーに走り、現場の人間関係を悪くしたら、かえって効率が悪くなる」。
◆ ◆
「今期も超えられなかったか」。大手銀行の企業融資担当、河崎浩一さん(29)=仮名=は、ため息をついた。入行7年目になるが、いくら業績を上げても1年上の先輩の給料を抜けない。
「結局は年功序列で決まっているとしか思えない」。上司に不満をぶつけると、「年次が高いほうが責任が重く、仕事のレベルが高い」という答えが返ってきた。「割り当てられた担当によって難し
さの違いもあるし、仕方がない」。河崎さんは疑問を感じつつも、自分に言い聞かせた。しかし、「もっと成果主義を徹底してほしい」というのが河崎さんの本音だ。
◆ ◆
成果主義は目標達成度などから評価に差をつけるが、「結果を数値化しやすい営業でさえ、競合会社が多い分野と少ない分野では難易度に違いがあり、簡単に比較できない」という声は強い。
高橋伸夫・東大大学院教授(経営学)は「差をつけるのが難しいため、人事を先に決めてから点数を逆算してつけ、つじつまを合わせる企業が増えている」と話す。看板は「成果主義」でも、中身は「年功型運用」というケースが少なくない。=つづく
毎日新聞 2005年6月16日 東京朝刊
所見
人事評価は難しいといわれる。
個人目標や売り上げを評価対象にするから誤解が起きる。
待遇改善には、利益改善しかない。なぜなら、配当原資はそこからしか生まれないのだから。
利益改善結果を出せば評価される、と部下達が信じた時から、彼らは変わる。
本来、組織のあるべき人間関係は、互いに必要と感じる組織風土であり、共同作業で業績が上がって初めて人間関係も良くなる。
なあなあの人間関係や年功序列のつじつま合わせ評価から、納得を得、やる気が出る風土が育つだろうか。
「成果主義」って何ですか 7
「成果主義」って何ですか:第1部・悪夢と福音/6
採点する側の苦悩
「その判断は違うんじゃないか」。JTたばこ事業本部事業企画室次長の中西健次さん(36)は昨年3月、初めて出席した会議でいきなり異議を唱えられた。
同社は半期ごとに社員をSS・S・A・B・Cの5ランクで評価。
賞与や定期昇給で最大35%の格差を付けている。
評価をつけながら、面談で部下に結果を伝えるときの説明を考える。管理職になる前、上司との面談で悪い点ばかりを指摘され、やる気をなくした経験があるからだ。
面談では、良かったことをまずはっきり言う。
その上で、最優先の課題を一つ二つ付け加える。そうして伝えた評価に部下が納得し、「頑張ります」と言ってくれた時、ようやく肩の荷が下りた気がする。
◆ ◆
部課長がつけた課長代理以上、約40人の評価表が上がってきた。これを人件費の枠に収まるよう5人の執行役員で調整する。
執行役員の5人も自分の担当部門の評価は落としたくない。
「そちらの部門は業績が落ちたのに最高のA評価が多すぎる」「会社への貢献度ではまだ、こちらが上だ」−−。調整会議で、そんな主張がぶつかり合う。
結局、各部門の釣り合いをとる「相対評価」で落ち着く。
部門ごとに人件費の総枠をある程度決めるため、優秀な社員が多いところでは、枠内に収めるため無理やり評価を落とされる社員も出てくる。
「これでも成果主義なのか。実態を知れば、社員は納得しないだろうな」。石井さんは、矛盾を感じる。
リクルートマネジメントソリューションズによると、評価する側の研修の需要が昨年から急増している。管理職に定期的な受講を義務付ける企業も増えているという。同社の奥田宏次・ビジネスユニット長(43)は「目標設定の段階から部下と十分話し合うことが適正な評価に結びつく」とコミュニケーションの大切さを強調する。成果主義では評価する側の能力も厳しく問われる。=つづく
毎日新聞 2005年6月15日 東京朝刊
所見
分配原資は限られているのだから、評価による比例配分しかない。
その評価が、実績結果に基づかず、態度評価や主観が入れば入るほど説得力がなくなる。
部下とのコミュニケーションとは、部下の自己評価と上司評価の格差を埋めるための確認をいう。
納得を得られなければ、やる気は期待出来ないのだから。
ために、双方の立場から、その目的、項目、基準を共有する評価システムが要求される。
「成果主義」って何ですか6
「成果主義」って何ですか:第1部・悪夢と福音/5
◇上司を採点、「360度評価」 正直にできるわけない
その会社は、評価の公平性を高めるため、「評価する者(上司)の評価」を、部下や同期、その上の上司とさまざまな角度から行う「360度評価」を採用している。シートには「コスト削減の努力」「指示を出すタイミング」など20近い項目が並び、それぞれを4点満点で採点する。
部下達は、「上司に目をつけられたくない」「人事部に不満分子と見られ、自分の評価も下がるかもしれない」「うかつなことは書けない」。発想は一気に低きに流れた。「触らぬ神にたたりなし」が結論で、自由記述欄には一文字も書かなかった。
松下電工は、管理職の異動、昇進の参考にするため77年から「360度評価」を取り入れたが、86年に廃止した。上司が部下を飲みに連れて行き、「評価、よろしく頼むよ」という談合まがいのケースが発生したほか、「このくらいをつけておいたよ」と同僚同士での情報交換も行われた。
「360度評価」は評価の公正性を高める仕組みとして注目される。上司は、好き嫌いなど不合理な評価をして部下から悪い評価を受ければ、自分の査定に響くからだ。しかし、「日本の職場では人間関係の『和』を大切にするため、仲良しクラブになる可能性もある」(日本能率協会)と実効性に疑問符を付ける指摘もある。=つづく
毎日新聞 2005年6月14日 東京朝刊
所見
360度評価など見当違いだろう。
部下に上司を評価させて、その部門の結果が果たしてよくなるだろうか。
もし、本音をいうとすれば、辞める当日しかないではないか。
上司の評価は、その責任部門の結果で評価するべきである。
なぜならば、成果主義の下、結果を良くしようとする上司は遠からずやる気を出させるにはどうしたらいいかを考えるようになる。
見張り、恫喝管理では、能力のある人材ほど早く逃げ、それでは部門の結果は良くならず責任者の評価は上がらないからだ。
人間に、「認められたい症候群」がある限り、減点主義ではやる気にはならず、成果主義でないとその気にならない、とは、上司が自身を振り返っても自明ではなかろうか。
「成果主義」って何ですか5
「成果主義」って何ですか:第1部・悪夢と福音/4
◇年功ではこれほどやる気は起きない 評価と意欲の好循環
菊池さんは00年6月、すかいらーくに入社。店長になるまで平均3年かかるが、1年後、石巻西店長(宮城県)にスピード昇格した。年収は300万円から450万円に跳ね上がった。
店の利益を伸ばすには、来客数に見合った従業員の確保が重要だ。それには集客予測が欠かせない。地元に住むアルバイト店員に協力してもらい、小学校のPTA会合、授業参観といった来客が集中する日を把握した。こんな工夫や努力が、すべて点数に反映した。
運営手腕を見込まれ、今年3月に本部の経営企画担当に抜てきされた。500万円に上がっていた年収はそのままだが、中期戦略などを管理する重要な役割だ。評価が上がると、仕事の負担も重くなる。「たいへんだが努力が評価につながるからやる気が出る。年功序列より納得して働ける」。成果主義に対する違和感はない。
「仕事の情報収集。勉強するほど同僚たちと差がつく」。大手損保の事故調査担当、横山文哉さん(29)=仮名=は週末の多くの時間を勉強に充てる。
会社が成果主義を導入したのは3年前。初めての評価はSを最高とする5段階で4番目のCだった。ボーナスは6万円下がった。ところが翌年、評価はBに上がった。事故調査を進める地域スタッフとの連携がうまくいき、仕事が効率よく運んだからだ。
今年は希望の海外担当に異動したこともあり、A評価。ボーナスは20万円増え、年収は700万円から850万円に。平均的な同期より約100万円高い。
成果主義導入前は、だらだら仕事している同僚の方が、勤務時間が長くなって給料が高くなったり、大して仕事ができない先輩のボーナスが上がっていくのに抵抗を感じていた。「年功制度だったら、これほどやる気は起きなかったと思う」。横山さんは満足そうに、そう言った。
労働政策研究・研修機構の伊藤実・統括研究員は「低成長の今、年功型運営では経営は難しく、成果主義導入は避けられない面がある」と指摘。その前提として、「従業員が納得できる昇進・昇格のシステムが必要だ」と強調している。=つづく
毎日新聞 2005年6月10日 東京朝刊
所見
自主的なやる気を起こさせるには、従業員が納得する評価システムが必要だ。
云うことをきいたか、守ったか、を見張り、権威をかさに恫喝したのではやる気は生まれない。
「成果主義」って何ですか4
「成果主義」って何ですか:第1部・悪夢と福音/3
◇皆が嫌がる仕事をしているのに 人件費削減の隠れみの
「あなたのやってる仕事なら、これが妥当でしょう」。測定機器製造会社「ノイズ研究所」(神奈川県相模原市)の事務職員、比嘉かよ子さん(44)は上司に呼ばれ、主任からヒラ社員への降格を言い渡された。同社が「成果主義」を導入した01年4月のことだ。
給与は、勤続年数に関係なく仕事の内容で決まる「職務給」になった。月給33万円、賞与を合わせた年収は500万円だったが、急激な減少を緩和する経過措置が終わる3年後には、月給は26万円、年収は400万円に落ち込む。
商業高校を卒業した比嘉さんの得意分野は経理だが、当時は資材購買課で、在庫管理を担当していた。倉庫にいる時間が長い地味な仕事。「会社の都合で押し付けられたのに」と怒りを覚えた。
比嘉さんは救済を司法に求めた。04年2月、横浜地裁川崎支部は「代償措置が不十分であり、成果主義導入による賃下げは無効」という判決を下した。しかし、会社は控訴。比嘉さんの地位もそのままだ。この件に関して、ノイズ研究所は「係争中なのでコメントはできない」としている。
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東京都新宿区の電子機器輸入販売会社。「私の自慢は赤字を出したことがないことだ」という社長の自慢話を、営業マンの長沢徹夫さん(42)=仮名=は苦々しく聞いた。「人件費を削っているんだから、利益が出るのは当たり前だ」。
成果主義導入前、長沢さんの賃金が下がったことはなかった。しかし、導入された01年から4年間で、750万円だった年収が200万円下がった。売り上げは常に目標を達成し、5割も上回ったこともあった。
「売り上げが目標をクリアしているのに、この評価は納得できない」。上司に理由を聞くと、「勤務態度が悪く、他の部門への貢献度も低い」というのが回答だった。
毎日新聞いわく
成果主義には「社員同士のやる気を促し、業績向上を図る」という効果が期待される。しかし、「人件費削減を目的とする企業もある。頑張っても評価が伴わず、従業員がやる気を失うケースも多い」(東京都労働相談情報センター大崎事務所)との指摘もある。=つづく
毎日新聞 2005年6月9日 東京朝刊
所見
企業継続への貢献度とは何なのか、を被評価者に伝えていないケースである。
職務給や売り上げだけではなく、利益と信用への貢献度なのだ、と明確に伝わる評価が行われていない結果である。
有用な人材のやる気をなくさせるこの悲劇を避ける為には、評価制度構築は、被評価者も参加させ、目的、目標、項目、そして比較基準を具体的にすり合わせ、決定することが不可欠。
急がば回れ、とはこのことである。
「成果主義」って何ですか3 (毎日新聞)
「成果主義」って何ですか:第1部・悪夢と福音/2
◇上司も会社も信用できない 総合評価の正体
「評価の基準が分からない」。東京管理職ユニオンには、成果主義に関する相談が増えている
会社が示した評価方法では、業績が占める割合は全体の3分の1にすぎない。残りは「企画立案や情報伝達など成果につながる行動をとっているか」が対象。でも、その評価基準はいくら聞いてもはっきりしなかった。
売り上げの数字を増やしても、それ以外の数字にならない部分が評価を大きく左右する。それが「総合評価」の正体だった。
「もう上司も会社も信用できない」。手塚さんは、悩んだ末に翌年、転職を決意した。
毎月末、自己分析シートに自己評価と翌月の目標を書く。そのシートと営業実績、上司の評価を加えた「総合評価」で給料が決まる。営業実績は目標を達成しているが、給料は上がらない。「どれだけ業績を上げたら、どれだけ給料が上がる」という基準は分からない。でも、上司には問いただせない。「反抗すると悪い評価につながる」と不安だからだ。
いくら頑張っても評価は上がらない。「正直言って面接官にだまされたと思う」。会社への不信感が日増しに募る。
毎日新聞いわく
「総合評価」は、業績の数字だけで表せない「過程」や「仕事ぶり」も評価対象にする。評価する側の裁量の余地が大きいため、東京管理職ユニオンの千葉茂執行委員は「会社が都合よく運用する『ブラックボックス』として利用されがちだ」と指摘する。賃金をめぐる同ユニオンへの相談では、8割は総合評価が問題になっている。=つづく
毎日新聞 2005年6月8日 東京朝刊
所見
評価結果に納得が得られないなら、不信感は増すばかりだから、評価査定などやめた方がいい。
やる気を出させるには納得が不可欠。ならば、評価制度構築の際、納得が行くようなやり方、査定項目、基準の決定について、被評価者も参加させての打ち合わせが不可欠。
その作業で、経営側と従業員との目的の一致が出来、被評価者が望む具体的な評価と経営側とのそれのすり合わせが出来、納得が生まれる。
この作業なしに、納得は生まれない。
上記のケースは、それが欠けていた事例だろう。
「成果主義」って何ですか2 (毎日新聞)
「成果主義」って何ですか:第1部・悪夢と福音/1 「勝ち組」の悲劇(その1)
◇83%が導入−−日本能率協会調査
日本の企業が、「成果主義」の人事制度を本格的に取り入れ始めて10年がたつ。年齢や職歴に応じて給料が決まる「年功序列」に対し、実績で待遇を決めるこの制度は、従業員のやる気を引き出しながら、人件費の膨張も抑えられると、一気に広まった。しかし、そんな「一石二鳥」の期待とは裏腹に、導入した会社の中からは、「評価」の基準や公正さなどをめぐり、さまざまな不協和音も聞こえてくる。「成果主義」は、会社と従業員に何をもたらしたのか。その功罪を、現場からすくい上げる。
成果主義は、従来の年功序列による人事制度に代わって、90年代半ばから国内企業が本格的に導入を始めた。95年に日経連(現日本経団連)がまとめた報告書「新時代の『日本的経営』」が大きなきっかけになった。この報告書は、日本的経営の行き詰まりを打破し、国際化の進行に対応するため、人件費高騰を招いた終身雇用・年功序列賃金の再検討を迫ったものだ。
年功序列では「経験が増すほど仕事の能力も高まるはず」という前提で、勤続年数に従って賃金や役職が上がる。これに対し、成果主義は、よりわかりやすい「実績・成果」を基準にして賃金や昇進・降格を決める仕組みだ。
日本能率協会が国内主要企業1325社を対象に昨年末調査した結果、回答を寄せた227社のうち、83・3%に当たる189社が「成果主義的な人事制度を導入している」と答えた。
毎日新聞 2005年6月7日 東京朝刊
所見
「成果主義」って何ですか:第1部・悪夢と福音/1 「勝ち組」の悲劇(その2)
弟はなぜ死んだのか−−姉の裕美子さんの問い掛けは続く ◇評価あだ「過労」自殺
02年9月。平塚労働基準監督署は、諏訪さんの自殺を労災と認定。コマツは「厳粛に受け止め、社員の健康管理について改善を進めたい」とした。そして裕美子さんら遺族は03年7月、コマツを相手取り、損害賠償を求める民事訴訟を東京地裁に起こし、現在も係争中だ。コマツ側は「係争中なのでコメントできない」と話すが、裁判では「自殺に追い込むほど難しい仕事はさせていなかった」などと主張している。
諏訪さんは、成果主義の犠牲者だったのか。過労自殺に詳しい川人博弁護士は「成果主義が、結果を出さなければならないという圧力を生み、強度のストレスになって心をむしばむ要因の一つになっている」と指摘する。
毎日新聞 2005年6月7日 東京朝刊
所見
このケースで、弁護士は「成果主義が、結果を出さなければならないという圧力を生み、強度のストレスになって心をむしばむ要因の一つになっている」と指摘する。
成果主義が、やらされている、ノルマを掛けられている、という方向から観ればその通りだろう。
しかし、報酬の対象として、契約の対象として、自己責任から観れば、それは自らが選択した仕事であり、契約である。
無論、契約の内容、責任の軽重は、当事者間(雇用者、被雇用者)で選択、決定された筈。
出来高払いの原則である成果主義は、この前提の理解の下でなければ加害者と被害者を生む。
成果主義は、この理解と納得から始らなければ誤解が悲劇を生む。
総括
成果主義とは何のためか?
目的は、機会均等に組織員に誇りをもたらすこと。企業の継続はその手段。すなわち、企業の存続理由は個々人に誇りをもたらすこと。
2) 第2部「成果主義」って何ですか:・試行錯誤
3) 第2部・試行錯誤 反響特集