「花の木」会席とお弁当

大畑弓子さん

 40代半ばは、女性にとって人生のターニングポイント。子供を育て終えて、ふと我に返るとき。これまでの主婦業に閉塞感を抱いていた大畑さんは、何とか社会につながりを持ちたいと思い、「自分にできることは、何か」と考えた。そして――

 娘時代、飯田深雪さんに洋風家庭料理を習ったり、料理が得意で、お客様を迎えるのが好きだった大畑さんは、家族がいない昼間、自宅を開放して好きな料理でおもてなしをするというイメージを、頭の中で膨らませていった。

 鎌ヶ谷に住んで5年目のこと。友達も知り合いもほとんどいない、どうやったらいいだろう。ある日、近所の奥さんに話してみたら、そのお宅でパッチワークの教室を開いていた先生が忘年会を予約してくれて、背中を押された形になった。

 松花堂弁当から始めてみたが、口コミで評判がどんどん拡がって、会席コースの予約はカレンダーを埋め尽くすようになり、一時は、1年以上待たないと予約ができないほどになった。

 洋室のテーブルに八人、暖簾で仕切った和室の座卓に4人。やさしく生けられた庭に咲く折々の花。前菜、お造り、揚げ物、焼き物、蒸し物と運ばれてくる度に、食器や盛りつけ、色、形に目を奪われ、味わって顔がほころび話がはずむ。デザート、お茶までたっぷり時間をかけていただく至福の時を、どれだけの人が過ごしていったことか。

 和食は、30年ほど前、雑誌「ミセス」に載っていた手記を読み、感動し、尊敬している京都・雲月のおかみ福地千代さん(86才)の料理を手本にしている。会えるかもしれないという期待を胸に、京都まで食べに行ったことがあるが、「料理人は黒子に徹すべし」という信条で会えなかったそうだ。

 色んな人と知り合え、助けてもらい、無我夢中で10年。時には自己嫌悪に落ちいりながらも、楽しくて仕方がなかったと言う。でも、夢中になりすぎて手を痛めてしまい、今は2人の方に手伝ってもらっている。最初は「そんなこと、できる訳がない」と反対した夫の裕さんも、定年退職した今、テーブルのセッティングやガラス磨きなど、協力してくれている。

目で楽しみ、舌で楽しむ