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■神社は自然のツボ
太古の昔より人間は自然の中で生きてきました。自然の恵みで命を育み,不順な天候に餓え,自然の脅威におののきながら生きてきました。自然の一部だった人間には自然の力を感じる能力があるのでしょう。自然に感謝し,自然の怒りを鎮める祀りの場所には自然の力あふれる神聖な場所が選ばれました。時を経て,注連縄が張られ,拝殿が作られ,神社と呼ばれるようになりました。
今でも鎮守の森の中,拝殿の前に立つとき,古代の人々の祈りを感じます。自然のパワーが満ちてくるのを感じることはないでしょうか。神社はケガレタ(気枯れた)心にパワー(気)を補給する場所だと理屈抜きに直接理解できます。
■八百万(やおよろず)の神
神様が八百万柱もあるなんて,一神教国の人には想像もつかないことかもしれませんね。クリスマスを祝った一週間後には神社に初詣に行くなんて理解を超えています。
八百万の神は自然そのものです。八百万の神に言葉(聖典・教義)はありません。神の代理人(聖人)が人間社会の教えを垂れることもありません。自然はいつもそこに在ります。八百万の神もただそこにいます。私にとって,八百万神は自然との絆なのかもしれません。
■一宮って?
平安時代のそれぞれの国(六十八ありました)で一番重きをおかれた神社が一宮とよばれるようになったようです。制度的裏付けはありませんから,複数の神社が一宮を称している場合もあります。東京の一宮をご存知でしょうか。「大宮」の氷川神社/武蔵(以下,神社名/旧国名)です。
伊勢神宮(三重)、出雲大社(島根)、熊野大社(和歌山)、熱田神宮(愛知),海の正倉院といわれる宗像大社(福岡)は一宮ではありません。国司に任せることなく朝廷が直接祀る神社でした。
平安期以降の神社(天神様(菅原道真),春日大社,明治神宮,靖国神社など)も一宮にはなりません。
■私の一宮巡拝
一宮は,北は鳥海山(秋田・山形),南は開聞岳(鹿児島)。北海道と沖縄にはありませんが,対馬,壱岐,隠岐,佐渡にもあります。一宮を訪ねて日本中アチコチに行けますね。ロングツーリングコースも書けます。私は一宮全てを巡るのに約十年かかりました。
■正しい参拝方法
神社では,こうして生きて,自分の足で,健康に参拝できる幸せに感謝しましょう。
○正式な参道を通ってお参りしましょう。参道の真ん中は神様が通る道です。遠慮しましょう。
○手水で身と心を清めます。
・右手に持った柄杓で左手を。
・左手に持ち替えて右手を。
・右手に持ち替えて左手に水を受けて口を漱ぎます。
・柄杓を立て柄に水を流します。
○拝殿の前に立ち「二礼二拍手一礼」(出雲大社では二礼四拍手一礼)。
・頭を深く二回下げます。
・柏手を二回打ちます。
・頭を深く一回下げます。
八百万の神は人間の言葉は解しません。家族の健康と家庭の平和は,自然から分けてもらったパワーで自ら実現しましょう。
■山は神様
山は御神体です。山は雨をもたらし,水源となり野を潤します。鳥海山は大物忌神社/出羽。男体山は二荒山神社/下野。隣に江戸時代につくられた東照宮は日光(二荒)と呼ばれます。富士山の南には本宮浅間神社/駿河,北には浅間神社/甲斐。白山は白山神社/加賀。奈良の三輪山は大神神社/大和。阿蘇山は阿蘇神社/肥後。開聞岳は枚聞神社/薩摩。拝殿の前に立てば山そのものが神だということが自明の理に思えます。
■海も神様
玉前神社/上総。安房神社/安房。気比神社/越前。若狭彦神社・若狭姫神社/若狭。住吉神社/摂津・長門・筑前・壱岐の四国。厳島神社/安芸。海神神社/対馬。なんと十社を数えます。海に囲まれた日本に海の神様が多いのは当然でしょう。
■結びの神・大国主
「実を結ぶ」のムスビです。稲に象徴される恵みの神、生産の神,田の神なのでしょう。一宮に一番多いのがムスビの神。その中でも大国主の命(大黒様とも呼ばれます)が一番人気です。気多神社/能登。気多神社/越中。砥鹿神社/三河。小国神社/遠江。伊和神社/播磨。出雲大神宮/丹波。都農神社/日向。七社を数えます。
これほどアッチコッチに大国主の命が祭られているのは,各地のムスビ神が統合されて大国主という名前になったのでしょうか。それとも有名な大黒様の名前をうちの神様にもつけてしまったのでしょうか。
大国主の命の総本山(神社では根本社)は・・・そうです,出雲大社です。ムスビの神が縁結びの神でもあるのは,子供が生まれ,成長するのはムスビそのものだからですね。
■一番人気のお稲荷様
稲荷神社といえば京都の伏見稲荷,愛知の豊川稲荷,茨城の笠間稲荷・・・各地に賑やかな大きなお稲荷さんがあります。稲荷は稲成りの意味ですから,ミノリ,ムスビの神様なのでしょう。お稲荷様が一宮に一つもノミネートされていないのは不思議ですねえ。官の神社ではなく民の神社なので一宮にはならなかったのでしょう。でも,現代ではお稲荷様は圧倒的に一番人気の神社です。
■時の朝廷の勢力範囲
吉備津彦神社/備前,吉備津神社/備中,吉備津神社/備後の三社はそろって吉備津彦をご祭神としています。吉備津彦は朝廷が派遣した四道将軍の一人とされていますが・・・吉備を征服した勇者というよりは,吉備古来の勢力が大和朝廷の体制に組み込まれたことを象徴する人物なのでしょう。吉備国(岡山)は一宮の成立当時,すでに大和朝廷の勢力下だったのでしょう。
鹿島神宮/常陸、香取神宮/下総の神は土地の神様ではなく,大和朝廷の武力神です。北関東で朝廷が武力で勢力拡大中だったのでしょうか。
日本海側で一番北の一宮は大物忌神社/出羽(鳥海山)に対し,太平洋側は都々古別神社/陸奥(福島県南部)です。福島県以北にはまだ大和朝廷の力が充分に及んでいなかったのでしょう。
■日本三景には一宮
松島には塩竃神社(奥州一宮),天橋立には篭神社/丹後,宮島には厳島神社/安芸。塩竃神社は陸奥一宮ではありませんがちょっとオマケして,日本三景は一宮が見守っています。自然のツボにある神社が自然豊かな場所にあるのは当然のことなのでしょう。そして,神社があることで自然が守られてきたのでしょう。これからも鎮守の森を,自然の森を護っていきたいものです。
(ニューサイクリング2004年9月号掲載)
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