旅する生物 第2話 
〜イワナとカワマス〜

 皆さんイワナ(岩魚)と言う魚をご存知でしょうか?川の上流域に住む魚で貪欲なことで知られています。養殖が一般化する以前は幻の魚なんて呼ばれていました。この魚、湖やダム湖などに降ると大型化し、黒部の銀山湖では1mクラスのものが獲れたといいます。 今回はこのイワナについて書きたいと思います。

 もともとイワナと言うのは氷河期に広がった魚で冷たい水を好みます。そのために氷河期が終わり暖かくなると冷たい水を求めて川の上へ上へと生息域を狭くしていきました。ですから川ごと、沢ごとに模様や色など固有のものが有ったのです。 ここにアメリカからカワマス(ブルックトラウト)がやってきました。どういう経緯かは知りませんが、この魚が上高地に放されてしまったのです。そしてこの上高地の土地でイワナとカワマスが交雑していることが発見されました。
  実はこれは大変なことなのです。イワナとカワマスの間に生まれた子(雑種1代目=F1と言います)は生殖能力を持ち、なおかつその子供の生存能力が低いことが知られていたのです。また、いわゆる雑種強性でF1そのものは生残率が高いことがわかっていました。このままでは上高地のイワナは緩慢な絶滅が訪れると予想されたのでした。

 結局各方面の努力の成果か、自然の力なのかイワナはまだ上高地に生息しています。しかし、安易に放したたった一種類の魚によって自然はこのように崩壊する危険性を秘めています。アフリカのある湖ではたった一種類の外来魚を入れただけで200種もの元からそこにいた魚が絶滅してしまったと言うことです。

 皆さんも飼っていた動物に飽きたからといってどこかに捨てたり、放したりすることはやめてください。飼う前にしっかりとした検討をするか、どうしても駄目な場合は自分の手で殺すくらいの心構えで動物は飼育するようにしましょう。

 さて、ここまでは人間による生物の移動について書いてきましたが、逆に人間によって移動できなくなるとどうなるかと言うことを書いてみましょう。

  日本の川をちょっと移動すると堰堤と言うのが見られることが多いのです。人家に近い場所ならともかく、なんでこのような山奥にまで必要なのか、非常に疑問に思うことが多々あります。大体、このような砂防堰堤やダムなどを作って砂をせき止めてしまうから日本の砂浜が消失しつつあるのです…。話が脇にそれましたので軌道修正して…。このようなダムや堰があると魚はそれ以上移動できません。

 栃木県の調査によると堰堤などにより他と隔離されて12年立ったところに生息するイワナは脊椎骨数やヒレのすじの数などが変化してきているそうです。これが何を意味するかと言うと遺伝的な多様性が保たれなくなってきている…つまり血が濃くなってきていると言うことです。これがどのように影響するかと言うと環境の変化に弱くなると言うことを意味します。人間にも暑がりや寒がりがいるように魚にもいろいろな性格のものがいたはずです。ところがこのように隔離された環境では全員が暑がりになってしまうことがあり、結果的にたまたま暑い日が続いたりすると全滅する可能性が高くなるのです。

このように人間が行ってきた行為は思わぬところで様々な影響を与えています。たまには自分が行っている行為を見直すことも必要なのでしょう。

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