旅する生物
ここで言う旅とは時間の旅でも自主的な旅でもありません。人間による生物の強制的な旅です。
皆さんドジョウはご存知ですよね?どんぐりがころころとお池にはまったときにあら大変と出てくる髭の生えた淡水魚です。さて、このドジョウが現在侵攻を受けており、近い将来見られなくなってしまうかもしれないと言う事をご存知ですか?
もともとドジョウは田圃と深い関係にある魚でした。田圃に水が入ると中で産卵し、成長して越冬したり、川に戻ったりして生活していたのです。ところが近年では田圃そのものが減少したのに加えて、田圃に水を引き込む用水路などがコンクリート化され整備されたためにドジョウの数そのものが非常に減ってきています。そのため、現在では食用などに中国産のドジョウが輸入されるようになってきました。ところが日本と中国では当然生息する魚は違います。輸入されるのはカラドジョウ(唐泥鰌)なのです。カラドジョウのほうが背鰭に近いところから肉鰭が盛り上がっているのですぐに判別できます(下図参照)
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| ドジョウ | ドジョウの尾部 | カラドジョウ | カラドジョウの尾部 |
ところが最近、日本の河川などからカラドジョウが捕まるようになってきたのです。これはおそらく、カラドジョウが逃げ出したか、売れ残ったりして要らなくなったものを捨てたのかしたのだろうと思います。しかもどうやら繁殖もしているようなのです。そうなると在来の日本のドジョウと交雑(雑種ができること)の可能性も有ります。哺乳動物などでは種間の雑種は出来ない、出来てもその子孫は繁殖能力を持たないと思われていますが、魚の場合は子孫はより劣った生殖能力を持ち、ゆっくりと絶滅に向かうことも有り得ることが知られています(このことについては次回以降に書きます)。ドジョウとカラドジョウの場合がどうなるのか私は詳しく掴んでいませんが、もし生殖能力が維持されたままの雑種が出来るとしても、これはこれで問題だと思います。日本の淡水魚でニホンバラタナゴと言う絶滅が心配されている魚がいます。この魚は環境の悪化が主原因で減少しているのですが、もうひとつ大きな原因があります。それはやはり中国産のタイリクバラタナゴとの交雑です。外観的には非常に似ているこの魚達が交じり合う危険について、別に良いじゃないか、と思う人もいると思いますが、私はこれは文化の侵略のようなものだと考えています。中国で育った人は中国語を、日本で育った人は日本語を話すように魚にもその地域の特色を身につけているはずです。昔日本が占領地で行った日本語使用の強制のようなことをすればその国の特色が褪せてしまいます。生物が自ら進んで日本に来たのであればそれも進化のひとつだと思うのですが人間の勝手な都合で行われるのだとすれば良いこととは思われません。このように帰化生物の問題はいろいろな問題を内包しています。このことについて時々考えてみたいと思います。