自然教育はこのままで良いの?

 初夏の清流と聞くと、何を思い浮かべるでしょうか?川の中で泳ぐアユ?夕方に聞こえてくるカジカ
ガエルの声?暑い日に食べる川で冷やしたスイカ? 今回は日が暮れると美しく光るホタルの話です。

 最初はホタルを離れて系群と言う言葉の話です。系群とは別種になるほど分かれては居ないけ
ど、同じ種の中で色々な変化が現れていることを言います。 例えば、沖縄で見るクマノミ、伊豆で見
るクマノミ、小笠原で見るクマノミは大人になるとそれぞれ違う体色をしていますが、種としては同じ
クマノミです。ハナハゼも伊豆と沖縄では尾鰭の形が異なっています。系群に分かれる要因には様

々な理由があると思いますが、遺伝的な隔離が上げられるでしょう。つまり、もともと同じだったもの
が別々の場所で暮らすうちに違う方になってきている…別種になる途中だとも考えられます。つまり
その土地に合うように分化してきている可能性があります。

 さぁ、ここでホタルに戻します。ホタルもそれぞれ系群があります。どうやら求愛のときの発光リズ
ムが地方によって異なるらしいのです。近頃、昔の風景を取り戻そうだとか、身近な自然を取り戻そ
うと言う運動が各地で見られます。それ自体は良いことですが、もうちょっと突っ込んで考えて欲しい
なと思うことがあります。自然の象徴としてホタルを増やそう、呼び戻そうと言う運動を例にあげてみ
ましょう。まず、なぜその場所からホタルが消えたのか、原因を探ることが最初です。幼虫が生息す
る河川の水質などの環境は大丈夫か、蛹になるときに潜り込める柔らかな土の部分は有るか、観
察しやすいのか…等です。これらを最初に解決しないと何処かからかホタルを連れてきても只の大
量虐殺になってしまいます。地域ぐるみの環境を整える地味で長期間かかり労力の要る運動を最初
に行わなければいけないのです。そして、わずかにでもその土地産のホタルが残っている場合。安
易に何処かからかホタルを持ってきて放してしまうと、その土地のホタルは絶滅する可能性がある
のです。例えば、ホタルの少なくなった原因が幼虫の餌のカワニナが少なくなったことに由来するな
ら後から来たホタルの群れが食ってしまうでしょう。そして、元々から居たホタルたちは居なくなるの
です。なぜなら求愛の時のリズムが違えば違う系群と交雑することはないのですから。そこに居るの
は同じホタルでありながら昔からそこに居たホタルたちと全く関係の無いホタルたちになってしまう
のです。

ここで、発光のリズムが違うくらいで、同じホタルなんだから問題は無いじゃないという人も居るで
しょう。確かに同じホタルです。でも、元から居たホタルは昔からその土地に住み、その土地に暮ら
してきたのでその地方の環境になじんでいます。他から移入したホタルはちょっとした環境変動で絶
滅するかもしれません。同じホタルであっても違いは有ると思います。

 それと似たことに、サケの放流があります。サケは昭和になって急速に放流してから産卵しに河に
帰って来る魚が増えました。これはなぜかと言うと、それまでいろいろな川で取れた親を一箇所に集
めて卵を取り、各河川の孵化場に配っていたのを、それぞれの河で取れた親からそれぞれの河に
放流するように改めたからだそうです。例え隣り合った河でも、卵から子供が孵化し、海に降る時期
は違うそうです。この為、その河で取れた親から取った子供を同じ河に放すことで帰ってくる率が良
くなったのだそうです。

 ところが、そういったことに関係なく、本州のあちこちの河川でサケを放流すると言う事業が行わ
れていることを見かけます。たいてい大きな河川で行われていますが、こういった河川には堰堤が
有ることが多く、水質もあまりよくないのが現状です。そういったことに配慮せず、子供達にサケの
稚魚を放流させるのはいかがなものでしょうか?教育想念上、自然に触れ合う機会を作るのは非常
に良いことだと思うのですが、これがサケである必要はないでしょう。放流した近辺で育つ魚であれ
ば、あとで釣ることも出来るでしょうし、成長の観察も出来るかもしれません。ヤマメやカジカ、ウグ
イだって良いのではないかと思います。もちろん種苗の入手の困難性など障害はありますが、それ
なら産卵床を作ってみるとか、いろいろなアプローチや方法は有ると思います。

 良かれと思ったことが仇になる、善意の自然破壊にも書きましたがそのようなことにならないよう
に様々な視点からの検討が必要だと思います。

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