漢詩
漢詩文

【文学散歩・漢詩文】

 
菅晋寶

……渓声轟脚下,雑樹茂生……
…有唐門者、蓋一石而二洞直起,
可五十丈、如門上架門…

― 訳 ―
…渓を流れる水の音が足下に轟いている。様々な樹が茂っている。(中略)
唐門がある,岩に二つの穴が真っ直ぐに立って覆い被さってい
る、五十丈もあろうか,門の上に門があるようである。…
菅茶山の弟,晋寶が帝釈峡を記したもの。

(かんしんぽ,1768〜1800,「鬼橋記」より)


国府犀東

我婦半身沈水中 
失雌豈独敢称雄
天然橋本推双璧
従是孤眠涙亦紅

― 訳 ―
我が妻は,半身が水の中である。妻の身が危ないのに夫だけが無事でいても仕方がない。天が造った橋は,本来,雌雄であった。このような姿に今は,ただただ涙が流れるばかりである。
1928年4月に帝釈峡を訪れた時,堰堤を築くため雌橋が,水中に没することを聞き,感懐を記した七絶。

(こくぶさいとう,1873〜1950,「神石郡誌」より)


阪谷朗蘆

…百丈横跨千尋谿,萬古不撓穹隆勢
雲根夭嬌逸蟠魑,上生老樹為欄楯

― 訳 ―
深い渓谷に横にかかっている石橋は,古来たわむことがなく,(中略)
岩は龍のようにわきあがりとぐろを巻いているように見え,
岩の上には老樹が楯のように並んでいる。

(さかたにろうろ,1822〜1881,「鬼橋詩」より)


速水太郎

帝釈風光勝畫圖  更依水力衆民蘇
風酸雪虐五年後  喜見千尋一大湖

― 訳 ―
帝釈の風景は美しい,それは絵などに描けるものではない。水の力により,この地の人を豊かにしたい。自然の障碍を乗り越えた五年の後。今,喜びの中に青々とした湖を見る。

(はやみたろう,1862〜1936,「速水太郎翁頌徳碑」より)


   
頼杏坪

 …山水之美 神爰垂跡…

― 訳 ―
…帝釈の山石水木,春花秋葉の彩りは,これ皆,神工鬼斧の妙である。
神秘の境域である。山水は美しく,神はここにその跡を残したのである…。

…就裏神橋尤秀奇,高架両山跨碧渓,傳道山霊役萬鬼,一夜攅石此搬運…

― 訳 ―
…その中で最も神橋がすぐれている。高く両山にかかり碧渓をまたいでいる。伝説によると山の神が多くの鬼どもを使役して一夜のうちに石を切り,ここに運ばせたそうだ。…

1816年61才の時に帝釈を訪れた時の感懐。

(らいきょうへい,1756〜1835,「帝釈廟碑」より)