【乳幼児期のアトピー性皮膚炎について】

【しっかりとしたスキンケア】

Q65:スキンケアの目的は何ですか?

Q66:皮膚表面に受けた損傷を回復させるスキンケアについて、説明してください

Q67:皮膚面の感染を治療し、予防するスキンケアについて、説明してください

Q68:皮膚表面への刺激を少なくするスキンケアについて、説明してください

Q69:皮膚の生理的な機能を維持・増進させるスキンケアについて、説明してください

【十分な環境整備】

Q70:環境を整えるうえで、何に注意すればよいのですか?

【しっかりとしたスキンケア】

Q65

スキンケアの目的は何ですか?

A65

 スキンケアは、健康な皮膚機能を取り戻す治療です。 ここでは、スキンケアを、次の4点にまとめて説明します。

  1. :皮膚表面に受けた損傷を回復させるスキンケア
  2. :皮膚表面の感染を治療し予防するスキンケア
  3. :皮膚表面への刺激を少なくするスキンケア
  4. :皮膚の生理的な機能を維持・増進させるスキンケア

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Q66

皮膚表面に受けた損傷を回復させるスキンケアについて、説明してください。

A66

[掻く]行為を繰り返すなかで、皮膚のバリア機能がダメージを受けると、 感染防御能が弱まり、細菌感染やウイルス感染が起きやすくなります。 皮膚に感染症が合併すると、さらに[かゆみ]が強まります。
[掻く] 行為と [かゆみ] との悪循環は、アトピー性皮膚炎をさらに悪化させます。 そのために、皮膚バリア機能のダメージは、できる限り速やかに回復させる事が大切です。
皮膚表面に受けた損傷を回復させるために、ステロイド外用剤は最も効果的な治療手段です。 ステロイド外用剤は、感染症による炎症であれ、アレルギー性炎症であれ、炎症を強く抑える働きがあります。 しかし、ステロイド外用剤を長期に使用すると、皮膚表面の免疫を失調させ、さらに過敏な皮膚を作ります。 また、ステロイド外用剤そのものによる接触性皮膚炎を起こす事も稀ではありません。
ステロイド外用剤を効果的に使用するためには、次の点に注意する事が大切です。
(1) ステロイド外用剤を使用する量と期間を、使用を始める時にあらかじめ決めておく。
(2) ステロイド外用剤だけに頼るのではなく、基本的な治療法を実践する。

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Q67

皮膚面の感染を治療し、予防するスキンケアについて、説明してください。

A67

皮膚感染症は知覚神経を刺激し、激烈な[かゆみ]を引き起こします。 [掻く] 行為は、 皮膚感染防御能をさらに破綻させ、皮膚感染症を助長させます。
難治性のアトピー性皮膚炎では、殆どの場合、皮膚感染症が合併していると考えています。 皮膚感染症の治療としては、
(1) 超酸性水による消毒 
(3) 抗生物質含有外用剤の塗布
(4) 抗生物質の内服
などがあります。
それぞれ治療上の特徴や、適応・副反応・使用上の注意点があるので、主治医と相談のうえ行うようにして下さい。

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Q68

皮膚表面への刺激を少なくするスキンケアについて、説明してください。

A68

皮膚表面への刺激を少なくする事は、[かゆみ]が起こらないようにするうえで重要です。

1. 汗、汚れ
汗を長く留めておかない事は、アトピー性皮膚炎のスキンケアの出発点です。 成人に比べると、子どもさんは発汗量が多いので、特に注意が必要です。 夏期は、行水などを含めて一日3〜4回は汗を落としましょう。 冬期でも、毎日の入浴は必要です。入浴後の保湿軟膏の塗布も忘れないで下さい。

2. ダニ
生きたダニが、皮膚に直接接触しないように環境を整える事は、アトピー性皮膚炎を治療するうえで重要です。寝具や床面などに、特に注意を払うようにして下さい。

3. 生活用品
石鹸・シャンプー・化粧品などの生活用品は、敏感肌の人のために開発されたものをお勧めします。

4. 肌着
直接皮膚に触れる肌着やパジャマは、木綿や綿製品をお勧めします。 洗濯には、合成洗剤・柔軟剤・漂白剤を使わない方が無難だと考えます。

5. 砂遊び
夏期は、水遊びを中心とし、砂に触れさせない方が良いでしょう。 どうしても、砂遊びがしたい時には、あらかじめ手足に保湿軟膏を塗り、 長袖・長ズボン・手袋・靴下を着用した完全武装スタイルで出かけ、帰宅後はすぐに入浴させ、 保湿軟膏を塗ったうえで、着替えさせて下さい。

6. 直射日光
海などで直射日光に当たる機会のある時は、帽子や長袖Tシャツなどで、顔や身体を保護して下さい。 日光が強い時間帯では、波や砂浜からの反射光で障害を受ける事があるので、注意が必要です。 低刺激のサンスクリーン(SPF値の低い製品)の使用も、効果的です。

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Q69

皮膚の生理的な機能を維持・増進させるスキンケアについて、説明してください。

A69

アトピー性皮膚炎の皮膚は、急性期の皮膚の炎症が落ち着いた後も、角質層の水分保持機能が劣り、 ドライスキンの状態が続きます。そのために、わずかな刺激で、アトピー性皮膚炎が再発します。
アトピー性皮膚炎が落ち着いた後も、皮膚の生理的な機能を維持・増進させるスキンケアを、 気長に続ける事が大切です。

(1) 入浴
体温より少し高め(37〜38℃)のぬるめのお湯に、30分以上ゆったりとつかるようにしましょう。 ドライスキンの人も、お湯の中では、しっかりと皮膚に水分を保持できます。
石鹸を手に塗り、皮膚の表面の汚れだけを優しく落とす事。タオルは使わない方が良いでしょう。 汚れのひどくない部位は、お湯だけで洗うようにして下さい。

(2) 入浴剤
炭酸が含まれていないタイプの入浴剤の使用は、皮膚の水分保持を高めて効果的です。 漢方薬を煎じた入浴剤も、よく使われています。

(3)保湿系外用剤
皮脂の不足を補うために、保湿系外用剤を塗る事は効果的です。
ただ、アトピー性皮膚炎の皮膚は、健康な皮膚に比べて乾燥しやすいために、入浴後5〜10分ほどで、 入浴前の乾燥状態に戻ります。湯舟からあがった後は、できる限り早い時間に保湿系外用剤を塗るようにして下さい。脱衣場に出る前に、浴室内の洗い場で軟膏を塗ると、効果的です。

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【十分な環境整備】

Q70

環境を整えるうえで、何に注意すればよいのですか?

A70

私たちを取り巻く環境の中から、健康に良くないと考えられる刺激を取り除く事は大切です。 良くない環境刺激により身体が過敏となり、免疫失調に陥ると、アレルギー疾患の他にも、 自己免疫疾患や、悪性新生物(ガンなど)に罹りやすくなります。
(1) ダニ・カビなどの微生物
ダニは、アトピー性皮膚炎や気管支喘息の主要な原因となります。 生きたダニは、皮膚の毛穴や角質層の損傷部位から皮膚内に侵入して、アレルギー性炎症を起こし、 激烈な [かゆみ]を引き起こします。しかし、生きたダニには一定の重量があるので、 気管支の奧まで吸い込まれる事はなく、直接気管支喘息の原因にはなりません。
一方、ダニの排泄物や、ダニの死虫体は、細かくて軽いために、容易に気管支の奧まで吸い込まれて、 気管支喘息を引き起こす強いアレルゲンとなります。アトピー性皮膚炎だけでなく、気管支喘息などのアレルギー疾患の予防や治療を考えると、 生きたダニだけではなく、ダニの排泄物や、ダニの死虫体を除去する対策が重要となります。
ダニは、
1. 適度な湿度と温度が保たれている場所
2. エサになるホコリがある場所
3. 卵を産むために潜り込めるフカフカとした場所で繁殖します。
ダニの繁殖に適した場所は、人間にとって住み心地の良い場所といえます。 そのためにダニを完全に減らす事は容易ではありません。
ダニアレルギーを本気で治すためには、住み心地を二の次にして、健康的な住まいを優先する事も必要です。

防ダニ対策のポイントは、部屋の床面と、寝具です。 敷きつめの絨毯やカーペットは、 ダニの繁殖にとって好都合です。しかし昔の建て方と違い、風通しの悪い床面に敷かれた畳も、 ダニの繁殖を助けます。板の間やコルク床など、ダニが潜り込んで繁殖できない床面が理想です。 部屋の全てをフローリングにできない場合でも、居間や子どもの寝室はフローリングにしたいものです。
寝具は、人が長時間をその中で過ごす、身近な環境です。 天日干しや掃除機かけなどの日常の管理が大切な事は、 いうまでもありません。また、ダニの排泄物や、ダニの死虫体を完全に除去するためには、 洗えるタイプの布団を購入し、定期的にダニを洗い流してしまう事もよい方法です。安全な防ダニ布団や、 高密度繊維で作られたシーツを用いる事も効果的です。

カビも、アレルギー疾患の主要な原因となります。夏期は、エアコンの中のカビに注意して下さい。冬季は、結露管理が大切です。(除湿器を使う。加湿器は使わない)

(2) ペット
いぬ・ねこなどのペットとのおつきあいは、心の癒やしにつながる側面があります。 そのために、一概にペットの飼育を否定する訳ではありません。しかし、ペットの毛やフケがもつアレルギーは、 生まれてすぐの子どもさんを過敏にする、主要なアレルゲンとなります。その後のアレルギーマーチの出発となります。
一度、ペットアレルギーが成立すると、アトピー性皮膚炎が悪化し、気管支喘息発作が起きるなど、 心身共に疲労につながる環境刺激となります。
ペットを飼育する時には、できる限り室内に入れない事。定期的に入浴させる事などの注意が必要です。
子どもさんが小さい時や、アレルギー体質が強い人は、はじめからペットを飼わない方が良いでしょう。

(3) 食物
アレルギーになりやすい子どもさんは、授乳中の母親の食事・ミルクの選択・離乳食などについて、注意が必要です。 また、離乳食の問題だけではなく、離乳食の完成期の目標となる大人の食生活も、 現代では高動物性蛋白質食・高脂肪食・低繊維食に片寄る傾向にあります。
大人自身の食生活も、健康的なものに変えていく必要があります。 加工食品に頼る食生活を改めて、できる限り手作りを心がけ、不必要な食品添加物を避けるようにしましょう。
仮性アレルゲンを多く含む食品の調理方法や、摂取量にも注意して下さい。

(4) 喫煙
喫煙は、吸っている本人やまわりで生活する人の健康にとり、「百害有って一利無し」というべきものです。 禁煙が一番の解決法ですが、それが無理な場合には、次の点は最低限守るという心がけをお願いします。
a)室内で喫煙しないようにする。
b)公共の場でも、乳幼児や妊婦の近くでは吸わないようにする。 

(5) 花粉などの植物
花粉症の季節に外出した時は、帰宅後は、すぐに洗顔するようにしましょう。
寝具の天日干しは、花粉症の季節にはお勧めできません。この季節は布団乾燥機をうまく使いましょう。 もし、天日干しをする時には、取り入れたらすぐに掃除機をかけて、花粉を吸い取って下さい。
観葉植物は、果物アレルギーを起こしたり、室内の湿度を高めてカビを増やす事があるので、 室内で育てない方が良いでしょう。

(6) 金属
金属による過敏症を合併している場合には、歯科の治療を見直して下さい。 また、身につける生活用品の金属にも注意しましょう。

(7) 室内化学物質
新築の家屋に引っ越しをする時や、リフォームを行う時には、壁紙・フローリングの板・ 接着剤に揮発性有機化合物(VOC)が少ない建材を選択するように、建築施工業者と相談して下さい。 また、適度な自然換気率が保てる工夫も必要です。 転居後は、できる限り窓を開けて、十分な換気を試みる事が大切です。
それでも、化学物質過敏症が疑われる症状が続く時には、 揮発性有機化合物を吸着させるタイプの空気清浄機の使用を勧めます。

(8) 屋外化学物質
水質汚染・大気汚染・土壌汚染など環境汚染は、アレルギー疾患だけではなく、 悪性新生物
(ガン)や不妊症が増加するなど、私たちの健康や、私たちの子孫に関わる大きな問題です。
環境汚染は、すぐには解決できない問題ですが、無関心ではいられません。

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文責:小児科 木村彰宏/いたやどクリニック小児科
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