【食物アレルギーをもつ子どもさんの離乳食について】
| Q37 |
アレルギーハイリスク児とは、どのような子どもたちをさすのですか? |
| A37 |
アレルギーの病気は、誰にでも現れるわけではありません。その子どもさんがご両親からいただいたその子らしさ(遺伝情報)と、その子どもさんが生まれ育った環境の組み合わせによって、アレルギーの病気へのなりやすさが決まります。
この遺伝情報には、他の子どもさんに比べてアレルギーの病気のなりやすいという遺伝情報も含まれています。今のところ、遺伝子診断の技術を用いても、具体的なアレルギー遺伝子は解明されていません。
そこで、統計的な技法を用いて、アレルギーの病気になりやすい子どもたちを見つける研究がすすみました。
(1)二親等以内にアレルギーの人がいる子どもさん
特にご両親や兄弟に、アレルギーの病気がある子どもさん
(2)生後すぐに調べられたIgEの値が高い子どもさん
臍帯血のIgE値 0.5 IU/ml 以上の子どもさん
生後6かヶ月の IgE値 5.0 IU/ml 以上の子どもさん
生後12かヶ月の IgE値 10.0 IU/ml 以上の子どもさん
(3)生後早くから、アトピー性皮膚炎が現れている子どもさん
このようなグループに当てはまる子どもたちは、アレルギーの病気になる可能性が統計的に高いと言われています。 このようにアレルギー遺伝情報を多く受け継いでいる子どもたちを、アレルギーハイリスク児と呼ぶ事にします。遺伝情報は、今のところ変えるわけにはいきませんが、子どもさんが生まれ育つ環境は、よい方向に変える事ができます。
ここでは、離乳食に絞って、アレルギーになりにくい食事についての説明をします。
このページの先頭へ |
| Q38 |
離乳とは、どういう言葉ですか? |
| A38 |
離乳とは、「母乳や人工乳だけの栄養から、乳汁以外の食物へと移行すること」と定義されています。
乳児期のあとも乳製品をふんだんに使う欧米では、本来の意味での離乳=断乳は一生涯実現することがないので、離 乳食という言葉ではなく、移行食という言葉が用いられています。
一方、乳製品になじみの少なかった時代の日本では、離乳食とは言葉通りお乳から離れるために準備された食事でした。しかし、食習慣の欧米化とともに、離乳期のあとも乳製品を摂る習慣が一般化したため、離乳食という言葉は本来の意味を離れて移行食という考え方に変わりつつあります。
このページの先頭へ |
| Q39 |
離乳食には、どのような目的があるのですか? |
| A39 |
離乳食には次のような目的があります。
- 栄養的側面
(1)母乳や人工乳では不十分な栄養素の補給
(2)消化酵素活性の発達に見合った食物摂取への橋渡し
- 顎機能の発達的側面
(3)咀嚼能力や嚥下能力の発達促進
(4)構音機能獲得の促進
- 精神発達的側面
(5)豊かで安定した母子関係の確立
(6)生活リズムの確立
- 文化的側面
(7)その国、その家庭の食文化へのいざない
|
このうち、栄養面・精神面の役割が大きいといえます。特に「離乳食はこころの栄養」という言葉があるように、はじめの頃は食べる食品も量も少ないのですが、それでもまわりの大好きな人と同じようなことがしたいという、あかちゃん自身の気持ちを大切にしてあげて下さい。
離乳期は、子どもさんの側からみると、新しい食品や食器を次々と経験し、受け入れていく楽しみな時期です。お母さん側からみると、子どもさんを新しい食環境に慣らしていく根気のいる時期です。お互いに努力の必要な時期なので、あせらずに、ゆったりと進めていきましょう。
このページの先頭へ |
| Q40 |
アレルギーハイリスク児に離乳食を与える時に、何に注意すればよいのですか? |
| A40 |
アレルギーハイリスク児の離乳食を考えるときに、いつから何を始めていけばよいのか、何は与えない方がよいのかなど、心配な問題が残ります。
アレルギーハイリスク児の離乳食の問題を、次の4点に整理し、説明を加えたいと思います。
- 果汁の与え方
- 離乳食の開始時期
- 離乳食の進め方
- 食材の選び方
このページの先頭へ |
| Q41 |
離乳食を始める前に、湯冷ましや果汁を与えると聞いたのですが? |
| A41 |
乳汁以外に果汁などの液体成分を与えることを、離乳準備といいます。これは離乳食には含みません。
湯冷ましや果汁は、次の目的で与えられてます。
- 暑い時に水分を補給する。
- お乳以外の味に慣らし、味覚を発達させる。
- 果汁を与えることで、ビタミンCを補うことができる。
- 口の中を清潔にする。
|
しかし、アレルギーハイリスク児には、果汁や湯ざましは与えない方が良いと思います。
離乳食の準備として、4〜5か月になれば、野菜スープから始めましょう。
このページの先頭へ |
| Q42 |
なぜ湯冷ましや果汁を与えないほうが良いのですか? |
| A42 |
1. 水分補給の目的は、初期の頃に開発された育児粉乳が、高蛋白質・高ミネラルだったために、腎臓に負担がかかりました。そのために、水分を補給して、尿をでやすくする必要がありました。現在の育児粉乳では、母乳に近い低蛋白質、低ミネラルのタイプに改良され、腎臓への負担もなくなりました。 授乳期には、ふつうお乳(母乳でも人工乳でも)で十分な水分はとれています。むしろ、湯ざましや果汁で、水分を多く与えると胃液の酸度(
pH )がアルカリ側に傾くために、胃液の消化酵素の働きが弱まり、その結果未消化なミルクが小腸に届くために、食物アレルギーが成立しやすくなると考えられています。
汗をかき、水分補給が必要な時には、ほうじ茶や番茶などの刺激の少ないお茶を飲ませてあげて下さい。
2. 味覚の発達は、母乳栄養の場合、母乳を摂るだけでも十分に発達すると考えられます。
母乳は、お母さんが食べたものによって成分が変わります。吸いはじめと、おしまいの頃との母乳では、味も成分も微妙に違います。
また初期乳と成熟乳とでは、栄養成分や免疫成分などに、大きな違いがあることが分かってきました。
このような母乳の微妙な変化を、あかちゃんは味わっています。 このことがあかちゃんの味覚の発達の手助けとなっています。
果汁の強い味や、市販の果汁に含まれている甘みは、かえってあかちゃんの微妙な味覚の発達を損なうことになりかねません。
人工乳の場合には、この微妙な味わいを経験する事ができませんが、離乳期まで急がなくても良いと思います。
3. 果汁を与えることで、ビタミンCを補うことができる。
母乳がでない場合、歴史的には牛乳や山羊の乳を加熱して殺菌し、あかちゃんに与えていました。 そのときに、ビタミンCが壊れてしまいました。 また、初期の頃に開発された育児粉乳も、ビタミンCが足りなかったために、果汁でビタミンCを補うことが強調されて、果汁を与えることが育児の常識となったそうです。
現在では、育児粉乳も改良され、ビタミンCが不足する事はなくなりました。 母乳の場合には、もともとビタミンCが豊富に含まれていますので、果汁で補う必要はないと思います。
4. 口の中を清潔にする。
以前に市販されていた育児粉乳は、糖質の濃度が高く、口の中を清潔にする目的で、湯冷ましを飲ませることが勧められていました。
現在の育児粉乳では、湯冷ましを飲ませる必要はありません。
離乳食が進み、食事のあとで水分をほしがるようであれば、ほうじ茶や番茶などの刺激の少ないお茶を飲ませてあげて下さい。
このページの先頭へ |
| Q43 |
なぜ果汁はあまり良くないのですか? |
| A43 |
あかちゃんに果汁を与えない方がよい理由として、次の3点が考えられます。
(1) 果物の安全性
果物がアレルギーの原因になることがあります。 特に、オレンジ・グレープフルーツなどの柑橘類やキウイ・バナナ・パイナップルなどのトロピカルフルーツが、アレルギー症状を起こしやすいようです。
その結果、口の中が痛くなったり、唇が腫れ上がったり、喘息発作をきたすこともあります。
また、柑橘類や、トロピカルフルーツには、仮性アレルゲンとよばれる化学物質(セロトニン・ヒスタミンなど)が多く含まれ、アレルギー反応によく似た症状を引き起こします。
さらに、輸入果実の場合、防腐剤として使われる農薬やワックスの問題があります。消化管や免疫系が未熟な乳児期前期に、アレルギーを引き起こし、消化管に炎症を引き起こす危険性のあるものは、なるべく口にしないことが大切だと思います。
(2) 果物の甘み
果物は、その香りや甘み、好ましい食感のために、多くの世代に好まれています。 お母さんにとっても、あかちゃんが好むことだし、身体にも良さそうなので、つい求めるだけ与えがちです。
しかし、果物に含まれている甘み(果糖)には、ブドウ糖と同じように、腸内の細菌を良くない方向へと変える働きがあります。
(3) 果汁の与え方
果物をそのまま食べているうちは良いのですが、果汁の形にすると、食べられないほどの果物の量を、一度に摂る ことになります。(コップ一杯のジュースは、その7倍位の量の果物を食べたことと同じといわれています) 年齢が大きくなると、果汁は子どもさんの大好きな飲み物になります。お母さんも「100%果汁なら安全だし、栄養もあるのではないか」とつい与えすぎてしまいがちになります。
しかし、果汁100%と表示されている場合でも、市販のジュースには、ブドウ糖が添加されている場合が多く、この場合、果糖とブドウ糖の二重の意味で、糖分の摂り過ぎになります。
果汁を与える場合には、手づくりの果汁を、それも量を考えて与えてほしいと思います。
このページの先頭へ |
| Q44 |
離乳食はいつ頃から与え始めたらよいのですか? |
| A44 |
離乳食の開始時期を考えるときに、アレルギーの側面に焦点を当てると、なるべく遅い時期が望まれます。
1993年 Aggettらは、生後4〜6ヶ月間の完全母乳哺育とともに離乳食の導入を遅らせる事により、アレルギーハイ リスク児の12〜36ヶ月までのアレルギー疾患及び、牛乳による消化器症状の発症率を低減化できると述べています。
私達も、次に述べるアレルギーハイリスク児のための離乳食案に基づき指導したところ、アトピー性皮膚炎の皮膚症 状の著明な改善をみました。
しかし<Q39:離乳食を与える目的>のところでも説明しましたが、顎機能の発達や精神発達の側面から考えると、離乳食の開始を遅らせすぎる事にも問題が残ります。
早過ぎもせず、遅くなり過ぎもしない離乳食の開始時期は、次の3点を考慮して決める必要があります。
(1) 月齢・体重の目安
歴史的にみると、1900年〜1935年には6か月頃が離乳食の開始時期とされていましたが、1937年頃から3〜4か月と早期に離乳食を開始する事が勧められました。その結果、腎臓に過度の負担がかかる事がわかり、アレルギー疾患も起こりやすくなる事がわかりました。
そのために、1980年以降、離乳食開始の推奨月令は、4〜6か月に戻された経緯があります。 体重は、6Kgを越えた頃が、目安にされています。
(2) 消化・吸収の発達
子どもの消化機能の発達は、医学的にもよくわかっていない分野です。デンプンの消化酵素の発達は、生後4か月から始まると考えられています。1歳半には、ほぼ大人の80%の消化機能を持つと考えられます。
(3) あかちゃん自身の要求
健康な発達をしているあかちゃんは、離乳食をただ受け身で、いただいている訳ではありません。4か月を過ぎる頃から、お父さんやお母さんが食事をしている時に、その口元をじっと見つめて、あかちゃん自身も少し口元を動かし始めることがあるでしょう。
「お母さん、わたしにも分けてください」と、まだ言葉で伝えられない気持ちを口元の動きに託しているようです。 |
以上の点を考慮すると、4か月半を過ぎて体重も6Kgを越えた頃、大人と同じことがしたいという気持ちが食事に寄せられる時期が、離乳食を始める頃かと考えています。
このページの先頭へ
次のページへ
前のページへ |
文責:小児科 木村彰宏/いたやどクリニック小児科
※無断転載を禁じます。