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和文英訳は自習が難しいとされる。たしかに,自分の書いた英文がどこまで「自然」なものであるかは,ノン・ネイティブには判断が難しい部分がある。しかしながら,辞書を適切に活用することで,相当程度まで正確である程度は自然な英文を書くことはできる。ここでは,大学入試問題を実例として,電子辞書に収録されている,和文英訳に活用できる辞書の使い方を具体的に解説していきたいと思う。
XD-H9100(CASIO)
関連収録辞書:新編英和活用大辞典/Longman Language Activator/Longman Advanced American Dictionary/ジーニアス和英辞典/ジーニアス英和大辞典
以下の日本文の下線部を英語に訳せ。
4年前,英国の研究者が,日本の子供の知能が英国の子供より高いのは,魚をたくさん食べる習慣があるからだ,と発表した。たしかに,マグロやサバなど,ある種の魚に含まれる特殊な物質が頭脳の働きをよくするのに役立つことは,動物を使った実験で証明された。しかし,こういう実験の結果をすぐさま人間に当てはめるのは疑問であるという科学者もいる。
下線部で 中心となるのは,「動物を使った実験で証明された」という部分である。まず手始めに,「実験」を英語で何と言うかから調べてみよう(知っている人も多いと思うが)。和英辞典(XD-H9100では[シフト]-[大英和]で呼び出す)で「実験」を検索してみると,experimentであることはすぐにわかる。名詞を英作文で使う場合には,可算/不可算の区別が問題となり,これはU(不可算名詞)/C(可算名詞)の略号で示される。U Cとあるのでどちらとしてでも使えそうな印象を受けるが,用例はすべて可算名詞として用いているので,experimentは可算名詞を基本と考えておこう。
和英辞典の記述にはこの他にも有益な情報がいろいろと含まれている。たとえば,後に続く前置詞は[in, with, on]であり,「inは実験の分野,withは実験に使う材料・方法など,onは実験される対象を示す」という説明があり,用例にも「動物[人体]実験をする do [carry out, perform] experiments on animals [human beings]」というのが挙がっている。これで,「動物を使った実験」はexperiments on animalsでよいことがわかる。
「実験で証明された」は「実験が証明した」とすることにしよう。experimentを主語とする動詞にどのようなものがあるか,また,特に[S]Experiments on animals [V]proved ...と言えるかどうかを調べたいような場合には,英和活用大辞典を使うのがよい。もちろん,[英和活用]キーで呼び出してもよいのだが,和英辞典からジャンプすれば簡単である。[スーパージャンプ]を押してから,カーソルキーを使ってexperimentを反転させて[訳/決定]を押すと,「ジャンプ先辞典」の一覧が表示されるので,「英和活用」を選択すればよい。「experiment1 n.」とあるのが目的の項目(n.は名詞を表す)なので,これを選択する。
英和活用大辞典では,連語関係を<...>で表現する。たとえば,<動詞+>は当該項目の前に来る動詞を表す。今回はexperimentに後続する動詞を調べたいので,<+動詞>を選べばよい。例文が5つ挙がっており,そのなかにThe experiment proves the validity of his theory.というのがあるので,どうやらExperiments on animals proved ...と言えそうだと判断できる。
ここで気になるかもしれないのが,英和活用大辞典の例文ではproveの後がthe validity ...という名詞句になっているが,that節も続けられるかどうかという点だが,これについては英和辞典の用法記述を確認すればよい。ジャンプ機能を用いて英和辞典のproveの項を見ると[SV (that)節/wh節]とあるので,that節を続けても問題ないことがわかる。
以上から,「動物を使った実験で証明された」はExperiments on animals proved ...とできると結論しておこう。
「頭脳」を和英辞典で引いてみると,brain / mindのどちらかが使えるだろうとわかる。ただ,前者は「知能,あたま」,後者は「考える力,思考力,頭脳」とされているだけで,使い分けについてあまり具体的な情報は得られない。こういう場合には英英辞典を使うのが有効,ということで,まずはbrainからジャンプしてみることにしよう。ジャンプ先は「ロングマン英英」である。1にはorgan,2にはintelligenceの意味がある。いったん[戻る/リスト]で戻って今度はmindからやはり英英にジャンプしてみると,your thoughts, or the part of your brain used for thinking and imagining thingsという記述がある。これらを比較すると,どうやらbrainのほうが,臓器としての側面により焦点のあたった語ではないかと考えることができる。物質が影響する,という文脈を考えると,brainを採用するのが適切だろう。
「頭脳の働き」はいったん「頭脳が働く」と主語+動詞の形に戻して考えることにしよう。brainを主語とする動詞にはどのようなものがあるか,英和活用大辞典で調べてみるが,残念ながら適切な例文はない。ちなみに,SHARPのPW-A8800などに収録されているOxford Collocations Dictionary for Students of Englishには,brainの項にBRAIN+VERBとしてfunction / tick over / workが使えるとある。後者が学習者用であるのに対して,英和活用大辞典はプロユースであるという違いのせいかもしれない。
XD-H9100を使っているわれわれはどうすればよいか。このような場合には「例文検索」を用いるとよいだろう。[シフト]-[複数検索]で例文検索の画面を呼び出し,「例文検索」のところに「brain&work」と入力して[訳/決定]を押す。「英和活用」には適切な用例はない(参照している辞書は上部で反転表示されている)が,「アクティベータ」にカーソルキーで移動すると,少しずれるかもしれないが,My brain worked fast as I tried to decide what to do.という例が見つかる。「brain&function」で調べてみると,「英和活用」にはMy brain doesn't function properly when I am tired.といった有益な例文が見つかる。この例文は動詞functionの<副詞1>の項に挙がっているもので,ふつうにbrainとfunctionとの連語関係を調べているときにはなかなかたどりつかないものだが,電子辞書ならではの例文検索機能を使うことで,この例文にたどりつくことができた。また,この例文検索では,名詞functionがbrain functionやthe function of the brainという形で使えることもわかった。
これをパッと処理できる人は意外と少ないのではないだろうか。serveあたりを思いつく人もいるかもしれない。しかし,和英辞典を「やくだつ」で引いてみると,「→やくにたつ」とあり,参照先にジャンプすると最初に出てくるのはhelpである。[SV (to) do]で「<物・事が>…するのに役立つ」という意味になることもきちんと書いてある。また解説にも,「『役に立つ』の意味の動詞でもっとも一般的な語はhelpで,強力な助けとなることを意味する。serveは堅い語で,as,forを伴うときは,<物・事>が『本来の機能ではない役割を果たす』場合に使われ,to不定詞を伴うときは『…するのに役立つ』よりも直接的に『…する機能を果たす』の意味を表す」とあって,この場合にはhelpが適切だと判断できる。このあたり,「和英の中に英和の機能を組み込んだハイブリッド方式を採用」(CASIO電子辞書カタログより)している『ジーニアス和英辞典』だけのことはある,と言えるだろう。
念のため,ということでActivatorにジャンプしてみると,【HELP】の項目の3にto help something to happenとあり,そのなかにhelpがto help something such as an improvement to happenという説明とともにあるので,これでいけそうだとわかる。「頭脳の働きをよくするのに役立つ」はhelp the brain (to) function betterと表現することにしよう。functionを名詞として用いるなら,help (to) improve brain function [the function of the brain]としてもよいだろう。
いよいよ最終段階である。まずは「物質」を和英辞典で調べてみると,substanceが使えると判断できる。他に「有毒化学物質」にtoxic chemicalsとあり,この名詞chemicalを使ってもよいだろう。これについて英英にジャンプしても,a substance that is used in or produced by a chemical processとあることから,substanceをより限定したものがchemicalであることがわかる。
「特殊な」はどう表現すればよいだろうか。和英辞典からはspecialないしはparticularだろうという感触がえられる。specialについては「(普通一般と違って)特別の,特殊な」という説明がついており,「ある種の魚に含まれる」を考え合わせると,これでいけそうか,と思える。念のため例文検索をかけてみるが,substance&special / substance&particularのいずれについても結果は得られない(ということは,英和活用にも該当項目はない,ということだ)。さらに英和活用でsubstanceの連語関係を調べてみるが,<形容詞・名詞+>の項にも,残念ながら有益な例はないので,和英辞典の記述を信じて「特殊な物質」はa special substanceとすることにしよう。
続いて「含まれる」を考えていく。英和活用でsubstanceの<動詞+>の項,つまりsubstanceを目的語にとる動詞としてどのようなものがあるかを調べてみるが,ちょうどよいものは見つからない。実はこの「含まれる」は動詞を使わずに前置詞inを使って処理するのが簡単だ。それが思いついたとして,substance&inで例文検索をかけてみると,英和活用の何とretardationの例にToxic substances in the body damage the brain, causing retardation.というのがある。
いよいよ最後の「ある種の魚」にとりかかろう。「魚」はもちろんfishでよいが,こういうときにきちんと英和辞典で語法記述を確認してほしい。英和辞典でfishを引いてみると,2として「U魚肉,(食物としての魚)」があり,例を見るとたまたまであるがFish contains high levels of essential fatty acids ...というのがある。ここから,前述の「含まれる」をcontained in ~とするのも可能だろうと考えることができる。
「ある種の」はcertain kinds of ~でいけそうだ。例文検索でcertain&kindを調べても,certain kinds of ~という例がたくさん見つかる。なお,kindについて英和辞典の解説を確認しておくと,ofに続く名詞は無冠詞単数が基本であるとあり,fishが単数か複数か,可算か不可算については特に悩まなくてよいこともわかる。
以上の検討過程から,問題の解答はとりあえずExperiments on animals proved that a special substance (contained) in certain kinds of fish helps the brain (to) function better.とできるだろう。もちろん,これがどこまで自然であるかなど,さらに詳しく検討する余地はあるが,まずは十分なものではないだろうか。
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