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英国アンティーク界で頂点を極める店、Wartski
ロンドンでもトップクラスのアンティークジュエリーのお店、ウォルツスキーを、天才ジュエリーデザイナー、ファベルジュの作品とあわせてご紹介します。


世界中のアンティークが集まるロンドン。そのロンドンでも、トップクラスのアンティークジュエリーの店といえば、知る人ぞ知る「ウォルツスキー」。
ボンドストリートからちょっと入ったグラフトンストリートという高級老舗街にある「ウォルツスキー」は帝政ロシア期のジュエリーデザイナー、カール・ファベルジュの作品、18世紀のゴールドボックス、そして18、19世紀のアンティークジュエリーを専門としているお店です。
「ウォルツスキー」は先々代のモリス・ウォルツスキー氏が1865年、ウェールズに店を開いたのが始まりです。1911年にロンドンに進出し、現在はグラフトンストリートに店舗を構えています。
1920年代には先見の明があった先代のエマニエル・スノーマン氏が革命後のロシアに渡り、ソビエト新政府が資金繰りに窮して、売りに出したファベルジュの作品を買い付け、これが今日でも「ウォルツスキー」のファベルジュ・コレクションの中核になっています。
カール・ファベルジュはロシア皇帝アレクサンドル3世とニコライ2世の御用を勤めたジュエリーデザイナーで、ロシアに四カ店の他、ロンドンにも支店を持っていました。宝飾細工の技術を駆使したインペリアル・イースターエッグで有名なファベルジュは、アールデコを思わせる作品を、その20年以上前に作り出していた天才でもありました。また根付のコレクターでもあったファベルジュは、半貴石に精緻な細工を施した動物や植物の小さな彫物も多く残しています。その斬新かつ繊細な作品の数々を前に、私は、天才は時空を超えるんだ! と感動しました。
ところで英国では、ファベルジェは7歳の子供でも知っているという有名作家です。といいますのはイースター(復活祭)のお祭りで、子供達が卵の殻に描く色や模様のお手本に、ファベルジェのイースターエッグが使われるからなのです。
このファベルジュの英国での人気は、ロシア皇帝アレクサンドル3世のお妃と英国王エドワード7世のお妃が姉妹であったことに起因しています。ファベルジュの作品はこのお妃姉妹を通じて英王室に紹介され、英国でも人気を博すようになったのです。
しかしロシア革命後、スイスへのがれたファベルジュは再びジュエリーを作ることをしませんでした。
そして現在、ファベルジュの三大収集家とは、英国王室、「ウォルツスキー」、そしてニューヨークのマルコム・フォーブス・コレクションです。フォーブス氏所蔵のインペリアル・イースターエッグは、氏のファベルジュ・コレクションのきっかけとなった最初の収集品で、これは「ウォルツスキー」から購入したものです。ちなみにお値段は500万ポンドだったそうです。

ところで「ウォルツスキー」と英国王室との結びつきですが、20世紀初めには、英国王エドワード7世とクイーンメアリーから後援され、現在でも女王エリザベス2世と女王のご母堂、そしてチャールズ皇太子から王室御用達のロイヤルワランティを授かっています。
また王室との結びつきだけでなく、アカデミズムにおいても彼らの研究活動が一目おかれる先端であり続けたことが、「ウォルツスキー」を一般のアンティークジュエリー商を超えた存在にしています。
学術研究において、現当主であるケネス・スノーマンさんはファベルジュ研究の第一人者として広く知られ、いくつもの専門書を出されている方。さらに、役員のジェフリーさんやキャサリンさんもカスティラーニ、ジュリアーノ、ファリーズについての長年の研究を行い、その成果を著作にされている方々です。
ケネスさんのファベルジュに関する著作を見せていただきましたが、ファベルジュ代表作の写真が多いのはもちろん、彼のジュエリーデザインのデッサンもふんだんに盛り込まれていて、学術的な意義とともに、見て楽しめる素晴らしい本です。
「ウォルツスキー」では二年に一回の割合で彼らの研究成果を発表する形で展示会を開催しています。1997年5月には「One
Hundred Tiaras(An Evolution of Style)展」が、1999年6月には「Falize(A
Dynasty of Jewellers)展」が開かれ、現在は来年(2001年)6月に向けて「19世紀のフランスジュエリー展」の準備が進められています。
その際、大英博物館、ビクトリア&アルバート博物館、メトロポリタン・ミュージアム、そして英王室からも展示用にジュエリーを借り出すことが出来ます。これは、信用と学術実績があればこそ出来る展示会であり、ロンドンでも他のアンティーク・ジュエリー店には真似の出来ないことです。
アンティークジュエリー店として「ウォルツスキー」ではファベルジュ以外にもルネッサンス期からアールデコ期までのジュエリーを扱っていますが、中でもカスティラーニ、ジュリアーノ、そして19世紀フランスジュエリーを得意分野としています。
著名な作家のサインドピーシズを扱う英国アンティーク界でも頂点を極めるお店であるにもかかわらず、お話しを伺ったスノーマンさんやキャサリンさんなど、お店の方々の飾り気なく親切な応対は、とても印象的でした。 (はた
じゅん)
西洋アンティークの隔月刊誌「オクルス」2000年7月号掲載記事。
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