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アンティーク スターリングシルバー バターナイフ
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No. 4669 ヴィクトリアン スターリングシルバー バターナイフ
長さ 14.1cm、重さ 16g、ブレード部分の最大幅
1.8cm、1895年 シェフィールド、James Deakin
& Sons Ltd作、一万三千円
今から百十五年前のヴィクトリア時代に作られたスターリングシルバー バターナイフです。 ブレードはシンプルで使いやすく、小花の入った植物模様のレリーフは気の利いた美しさで、今のものにはないゴージャス&アンティークな雰囲気に仕上がっています。
バターナイフは元々バタースペードという鏝状(こて状)のシルバーウェアから発展してきた経緯があります。 このバターナイフはバタースペードと同じようなこて状ブレードを持ち、ブレード面に対して柄先が2センチほど高い位置にくる構造となっています。 その昔の「こて状バタースペード」の面影を残しているという意味で、バターナイフの歴史的発展過程を示しているわけで、博物館的な興味を感じさせてくれるアンティークとも言えましょう。
この辺りの経緯について詳しくは、英国のバターナイフの歴史を解説しております
「9. トラディショナル イングリッシュ バターナイフ」の解説記事をご参考ください。
写真三番目にあるように、柄の裏面には四つのブリティッシュホールマークが、しっかり深く刻印されているのもこの品のよい特徴です。 ホールマークは順に「James
Deakin & Sons Ltd」のメーカーズマーク、1895年のデートレター、スターリングシルバーを示すライオンパサント、そしてシェフィールドの王冠マークになります。
「James Deakin & Sons Ltd」は1865年にジェームス・ディーキンによってシェフィールドで創業されたのが始まりです。 1886年には彼の三人の息子達、ウィリアム、ジョン、アルバートもパートナーに加わり、ファミリービジネスとして上述の社名に変更し、事業は順調に発展していきました。 1888年にはロンドン支店開設、ヴィクトリア後期の1890年代には、スコットランドのグラスゴーとアイルランドのベルファストにも支店を開設しています。
写真のバターナイフが作られたのは1895年のことですので、息子たちがファミリービジネスに加わって、支店も順調に増えていった銀工房の最盛期における作品と言ってよいでしょう。
しかし多くのシルバースミスがそうであったように、事業のピークは英国の国力がピークであったビクトリア後期からエドワーディアンの時代にあったようです。 その後は事業を次第に縮小していき第二次世界大戦が始まった1940年には店を閉めました。 メーカーズマークの「JD
WD」はJohn & William Deakinのイニシャルになっています。
この品が作られた1895年というのは、19世紀の終わり頃であるとともに、六十余年続いたヴィクトリア時代の終り頃にもあたっています。 当時の様子については、英国アンティーク情報欄にあります「14. Still Victorian」や「31. 『Punch:1873年2月22日号』 ヴィクトリアンの英国を伝える週刊新聞」の解説記事もご参考ください。
No. 5450 エドワーディアン スターリングシルバー キングスパターン バターナイフ
長さ 16.8cm、重さ 43g、ブレードの最大幅 2.2cm、柄の最大幅
1.9cm、柄の最大厚み 3mm、1905年 ロンドン、Goldsmiths
& Silversmiths Co Ltd作、一万八千円
今から百年以上前のエドワーディアンの時代に作られたスターリングシルバー キングスパターン バターナイフです。 英国でアンティークという言葉を厳密な意味で使うと、百年以上の時を経た品物を指します。 この銀のバターナイフが作られたのは1905年ですから、少し前に正式なアンティークに仲間入りしているわけです。 やはり百年経っているということは、アンティークとしての大きな魅力になると思うのです。
日本における1905年といえば日露戦争が終った年にあたり、このころ夏目漱石は『我輩は猫である』を『ホトトギス』に連載中で、翌年には『坊っちゃん』や『草枕』が発表された時代と思えば、ずいぶん昔であることが実感できます。
写真のバターナイフは柄の最大厚みが3mmもあり、ブレードもしっかり厚めで、43グラムと持ちはかりがあります。 シルバーがたっぷり使われた重厚さはアンティークとして好ましいですし、普段使いとされても銀の感触が心地よいでしょう。
英国アンティーク情報欄の 「4.イングリッシュ スプーン パターン」で解説しているハノーベリアン、オールドイングリッシュ、そしてフィドルパターンに続く主要なパターンとして登場したのがキングスパターンでした。
キングスパターンデザインの中で大きな役割を果たしているシェルモチーフの歴史はかなり古いことが知られています。 12世紀にスペインの聖地
St.ジェイムス オブ コンポステラへ向かう巡礼者たちが、St.ジェイムスの紋章であったシェルを身につけて旅したことから、クリスチャンシンボルとしてのシェルが次第に確立していきました。 15世紀以降はセラミックスやシルバーの分野で、このシェルモチーフが繰り返し取り上げられて今日に至っています。
写真三番目で裏面のホールマークは順に、「Goldsmiths
& Silversmiths Co Ltd」のメーカーズマーク、スターリングシルバーを示すライオンパサント、ロンドン レオパードヘッド、そして1905年のデートレターとなります。
「Goldsmiths & Silversmiths Company」は1880年創業のシルバースミスですが、銀製品の他にゴールドやジュエリーの分野でも名を馳せていて、チャールズ・ウォーラル氏のように40年以上にわたって人気を博したデザイナーも抱えていました。 また、この会社のビジネスはそれだけに止まらず、ウォッチやクロックのメーカーでもありましたし、さらには貴金属やダイヤモンドのトレーディングも手がけていました。 「Goldsmiths
& Silversmiths Co Ltd」という名前から、ちょっと普通の銀工房ではないような、大きなビジネスの規模を感じるのですが、それはまさにその通りであったわけです。
この品が作られた当時は、ロンドンのリージェント通り112番地にお店を構えていました。 リージェント ストリートは東京の銀座通りのようなもので、ヴィクトリア時代の昔からロンドンで最もポッシュな界隈であったわけで、そこに店を構えていたこと自体が、「Goldsmiths
& Silversmiths Company」の規模の大きさを示していると言えます。 エドワーディアンの時代には、クライアントはふかふか絨毯とダークマホガニーの階段を上って、その先の素晴らしく豪華な専用ティールームに案内されたということで、当時のゴージャスな雰囲気を伝えるエピソードです。
キングスパターンは今日でも作られ続けているデザインですが、その歴史を遡ってみると、このパターンがイギリスで最初に登場したのは19世紀初めのことになります。 キングスパターンから派生したデザインにクイーンズパターンと呼ばれるものがあります。 派生パターンなので、あまり見かけるものではないのですが、キングスパターンとクイーンズパターンの違いについてご説明しておきましょう。
写真二番目と三番目をご覧いただくと、柄先のシェルが表側は凹状で、裏側は凸状をしているのが分かります、これがキングスパターンのメルクマールになります。 そしてクイーンズパターンは表と裏ともに凸状シェルになります。 つまりキングスパターンは表裏が凹凸、クイーンズパターンの表裏は凸凸ということです。
No. 4191 Mappin & Webb ヴィクトリアン スターリングシルバー バターナイフ
長さ 13.5cm、重さ 20g、ブレード最大幅 1.95cm、柄の最大幅
1.35cm、柄の最大厚み 2mm、1898年 シェフィールド、Mappin
& Webb作、一万六千円
(1)ふっくらと丸みある厚めなブレードの瓢箪やなすを思わせるフォルム。
(2)ヴィクトリアン アンティークであること。
(3)Mappin & Webbの作であること。
以上三点で気に入って求めました。
メーカーは言わずと知れた有名工房ですが、このシルバースミスの歴史をご紹介しましょう。
マッピン関連のアンティークを扱っていると、「Mappin
& Webb」とよく似た名前の「Mappin Brothers」というシルバースミスに出会うことがあります。
「Mappin Brothers」は1810年にジョセフ マッピンが創業した工房で、彼には四人の後継ぎ息子がありました。四人は上から順にフレデリック、エドワード、チャールズ、そしてジョンで、年長の者から順番に父親の見習いを勤めて成長し、1850年頃には引退した父ジョセフに代わって、四兄弟が工房を支えていました。
ところが末っ子のジョンは、工房の運営をめぐって次第に兄たちと意見が合わなくなり、ついに1859年には「Mappin
Brothers」を辞めて独立し、「Mappin &
Co」という銀工房を立ち上げました。 以後しばらくの間、「Mappin
Brothers」と「Mappin & Co」は「元祖マッピン家」を主張しあって争うことになります。
しかし最初のうちは「Mappin Brothers」の方が勢力があったこともあり、1863年には末っ子ジョンの「Mappin
& Co」は「Mappin & Webb」に改名することとなりました。 Webbというのはジョンのパートナーであったジョージ ウェブの名から来ています。
「元祖マッピン家」問題では遅れをとったジョンでしたが、兄たちよりも商売センスがあったようです。 スターリングシルバー製品以外に、シルバープレートの普及品にも力を入れ、目新しい趣向を凝らした品や新鮮なデザインの品を次々と打ち出し、しかも宣伝上手だったのです。 ヴィクトリアン後期には当時の新興階級の間でもっとも受け入れられるメーカーに成長し、それ以降のさらなる飛躍に向けて磐石な基盤が整いました。
20世紀に入ってからの「Mappin & Webb」は、「Walker
& Hall」や「Goldsmiths & Silversmiths
Co」といったライバルの有名メーカーを次々にその傘下に収めて大きくなり、今日に至っています。 また「Mappin
Brothers」ですが、時代の波に乗り切れなかったのか、1902年には「Mappin
& Webb」に吸収されてしまっています。
「Mappin & Webb」については、英国アンティーク情報欄の「31. 『Punch:1873年2月22日号』 ヴィクトリアンの英国を伝える週刊新聞」にあります解説記事もご参考ください。
No. 5446 ヴィクトリアン スターリングシルバー リリーパターン バターナイフ
with クレスト SOLD
長さ 19.8cm、重さ 51g、ブレード最大幅 2.95cm、柄の最大幅
2.3cm、柄の最大厚み 3mm、1862年 ロンドン、二万三千円
リリーパターンのシルバーウェアは、私も話では聞いていましたが、実際に手にしてみたのは初めてで、レアものアンティークをご紹介できると思います。
「Lily pattern(ゆりパターン)」は、エルキントンが1850年に考案しデザイン登録したのが始まりです。 そしてChawner
& Co.のパターンブックでは 「Lily pattern」と呼ばれて、世に知られるようになった経緯があります。 ヴィクトリアン中期のNaturalism(自然主義)を代表するデザインで、しばらく後のアール・ヌーボーにも影響を与えたデザインと考えられています。
キングスパターンやフィドルパターンといったメジャーなパターンではなく、マイナーパターンの一つなので、アンティーク シルバーウェアの参考書では紹介されることがあっても、実際に見かける頻度はそう多くありません。
今から百五十年ほど前に作られたヴィクトリアン中期の品なので、長さが20センチにブレード幅は3センチほどもあって、50グラムの持ちはかりと、現代のバターナイフと比べると、びっくりするようなキングサイズになっています。 ブレード面がゆるやかな曲面構造をしているのも、当時のバターナイフの特徴で、ヴィクトリアン中期のバターのあり方を思い起こさせてくれます。 幅広な柄先には羽ばたく鳥の紋章が彫られているのも素敵です。
ブレード裏面にはブリティッシュ ホールマークが刻印されています。 メーカーズマークはもともと刻印が少しあまいようですが、ロンドン
レオパードヘッド、スターリングシルバーを示すライオンパサント、1862年のデートレター、ヴィクトリア女王の横顔の四つホールマークは、しっかり深く刻印されています。
この品が作られた当時の時代背景については、「英国アンティーク情報」欄にあります「31. 『Punch:1873年2月22日号』 ヴィクトリアンの英国を伝える週刊新聞」と「14. Still Victorian」の解説記事もご参考ください。 それから、「9.トラディショナル イングリッシュ バターナイフ」の解説記事もご参考ください。
No. 4267 ジョージ三世 スターリングシルバー フィドルパターン バターナイフ
with フラワーエングレービング
長さ 18.0cm、重さ 30g、ブレード部分の最大幅
2.45cm、柄の最大幅 1.8cm、1808年 ロンドン、一万八千円
表と裏の両面にわたってブレードとハンドルに手彫りのフラワーエングレービングが施され、ゴージャスな雰囲気のスターリングシルバー バターナイフです。 作られたのは今から二百年前という古さも魅力です。
このバターナイフのパターンは柄の形がヴァイオリン(Fiddle)に似ていることから、フィドルパターンと呼ばれます。 もともとは18世紀のフランスで人気だったこのフィドルパターンは、19世紀に入った頃からイギリスでも次第に流行っていきました。 フィドル パターンについてはアンティーク情報欄「4.イングリッシュ スプーン パターン」の解説記事も合わせてご覧ください。
柄の裏面にはスターリングシルバーを示すライオンパサント、1808年のデートレター、そしてジョージ三世の横顔マークが刻印されています。 その横にメーカーズマークがありますが、刻印があまく、判読がむずかしいです。
見たところ、アセイオフィスマークがありませんが、それは次の理由によります。 柄先にホールマークを刻印することをトップマーキングと言い、1800年前後にロンドンで作られた小物シルバーウェアのトップマーキングにおいては、ロンドン レオパード ヘッドの刻印を省略することが当時流行っていました。 この品にもロンドン アセイオフィス マークがありませんが、同時期に作られたロンドン物ではよく見かける傾向なのです。 おそらくロンドン中心思考がこうした習慣を生んだと思われますが、1830年ぐらいから以降は改まりきっちり刻印されるようになっていきます。
英国でアンティークという言葉を厳密な意味で使うと、百年以上の時を経た品物を指します。 気に入った古いものを使っていくうちに、その品が自分の手元で‘アンティーク’になっていくことは、コレクターの喜びとも言えますが、このバターナイフが作られたのは1808年ですから、余裕でアンティークのカテゴリーに入るどころか、"ダブル"アンティークにもなるわけで、やはりこれほどの古さは大きな魅力と言えましょう。
最後になりましたが、品物名に「ジョージ三世」とありますのは、ジョージアンの時代の中でも、ジョージ三世の治世(1760年から1820年まで)が最も長かったこともあり、この時代のアンティークには「ジョージ三世」の名を冠することが多い為です。 国王ジョージ三世については「5.シルバーホールマークとジョージアンの国王たち」の記事後半にある解説もご覧ください。
No. 4185 ヴィクトリアン スターリングシルバー バターナイフ
長さ 15.5cm、重さ 21g、ブレード最大幅 1.9cm、柄先の飾り直径
7mm、1893年 ロンドン、George Maudsley Jackson作(=Josiah
Williams & Co.作)、一万六千円
今から百年以上前のヴィクトリアン後期に作られたスターリングシルバーのアンティーク バターナイフです。 柄先の飾りが印象的で、ねじれ柄の構造は強度の追求と同時に、デザイン的な美しさをも狙っていて好印象です。 今から百十五年も前に作られたアンティークながら、コンディションが良好なところもポイントになりましょう。
バターナイフは元々バタースペードという鏝状(こて状)のシルバーウェアから発展してきた経緯があります。 このバターナイフはバタースペードと同じようなこて状ブレードを持ち、ブレード面に対して柄先が2センチ以上高い位置にくる構造となっています。 その昔の「こて状バタースペード」の面影を残しているという意味で、バターナイフの歴史的発展過程を示しているわけで、博物館的な興味を感じさせてくれるアンティークとも言えましょう。
写真三番目のホールマークは順に、「GMJ (=George
Maudsley Jackson)」のメーカーズマーク、1893年のデートレター、スターリングシルバーを示すライオンパサント、そしてロンドン レオパードヘッドです。
George Maudsley JacksonはJosiah Williams
& Co.の共同パートナーの一人であったことから、GMJはJosiah
Williams & Co.と実質同体と考えてよいシルバースミスになります。
ホールマークのガイドブックである『JACKSON'S
HALLMARKS』によれば、「GMJ」についてのコメントは「Wide
range of particularly good flatware.」とありますので、GMJ単体の評価もかなり高いのですが、Josiah
Williams & Co.も有名シルバースミスの一つです。
一般にヴィクトリア時代創業のシルバースミスが多い中にあって、Josiah
Williams & Co.はジョージアンの時代に始まった老舗の一つになります。 1800年創業のJosiah
Williams & Co.はブリストルのメーカーで、地方では最大のシルバースミスでした。 今日でも中世の街並みや大聖堂が美しいブリストルは、16世紀にはエイボン川河口の貿易港として栄え、その後はイングランド南西部の主要都市として発展しました。 しかし大きな都市であったがゆえに、第二次大戦中の1940年11月24日にはドイツ軍による空襲を受け、Josiah
Williams & Co.も工房を失い、残念ながら140年の歴史に幕を閉じました。
それから、この品のデートレターをご覧いただくと、その形が盾状をしていて特徴があります。 ロンドンアセイオフィスにおける19世紀のほぼ第四四半期にあたる1877年から1895年までのデートレター サイクルは「盾」と覚えておかれると、アンティークハントの時には便利です。 この時代はイギリスの国力が大いに伸張した時期にあたることから、今日においてもこの頃のアンティークに出会う可能性も高いのです。 デートレターをすべて暗記することは難しくても、「ロンドンの盾はヴィクトリアン後期」と知っておく価値はあると思います。
この品が作られた当時の時代背景については、「英国アンティーク情報」欄の「14.Still Victorian」の解説記事を、そして英国のバターナイフの歴史については、「9.トラディショナル イングリッシュ バターナイフ」もご参考ください。
No. 5826 エドワーディアン スターリングシルバー バターナイフ SOLD
長さ 18.6cm、重さ 34g、ブレード最大幅 2.6cm、柄の最大幅
1.6cm、柄の最大厚み 2.5mm、1903年 シェフィールド、Cooper
Brothers & Son作、一万七千円、(8本あります-->7本あります-->6本あります-->5本あります-->4本あります-->3本あります-->2本あります-->1本あります-->SOLD)
装飾が素晴らしく、豪華であることに加えて、34グラムと持ちはかりがあるので、銀を使っている楽しみが増えます。 全体として、エドワーディアンという時代の優雅な雰囲気が伝わってくるアンティークと思います。
この品は複数求めましたので、元々の用途について少し悩みました。 もし一本だけ見たら、バターナイフと思うでしょう。 エドワーディアン頃のテーブルセッティングによれば、お屋敷においては12人分ないしは24人分のシルバーウェアのセットが備えられ、バターナイフは数人で一本が配されましたので、バターナイフがまとめて残っていることもあり、そうかも知れません。
しかしバターナイフが複数揃っていることはどちらかと言うと稀なので、フィッシュイーターという可能性も考えました。 ところがまた、フィッシュイーターには魚のデザインが入っていることが多いですし、お揃いのフォークも一緒にないことから、フィッシュイーターらしくないとも考えられるのです。
元々の用途について考えておりましたが、この品をお求めいただいたお客様から以下のようなコメントをいただき、やはりバターナイフと、私も考えを固めました。 お客様からのコメントは皆様にも参考にしていただけると思いますので、ご紹介させていただきましょう。
『前に購入しました、バターナイフ、使い勝手がおそろしく良いです。 通常の形態のバターナイフには戻れません。 なんで、線対称の形のナイフが主流にならなかったのかがとても不思議です。』
『詳細ではこんな感じです。 先端刃付けの角度がよく、バター、マーマレードの塗り切りが自然にできます。 少し大きめなこともあ
り、塗り広げるだけでなく、ジャムやマーマレード
を(イギリス風に?)盛るように塗るのに最適です。 チーズなどは、エングレービングに食い込んでしまい、使用後に洗うのもうまく行きません。 ジャム、マーマレードナイフというくくりはないのでしょうか。 畑様の説明通り、フィッシュイーターにも使えそうですが、銜えてみるとエッジが唇に鋭く当たる感じ
がするので、口に入れることを想定したシルバーで
はない気がします。 』
ゴージャスな柄の飾りが印象的ですが、このデザインはバンドワーク パターンと呼ばれ、フォリエイト
スクロール(葉っぱが巻いたデザイン)とインターレーシングになった帯状飾りがその特徴になっています。 このバンドワーク パターンは17世紀のフランス装飾様式に起源があり、18世紀には宮殿のフロアパネルや家具の装飾として好まれ、その後は銀器や陶器のデザインにも取り上げられるようになったものです。
それから、ブレード部分に施されたウェーブパターンは、繊細な手彫りのエングレービングになっています。 波模様モチーフには、Continuation(続いていくこと)や
Eternity(永遠)という意味合いが象徴されており、ヴィクトリアンからエドワーディアンの頃に好まれたクリスチャンモチーフのデザインです。
波模様の基本デザインは深めなタッチで彫られていますが、背景の少し色合いが濃く見えるシェード部分は、細かい彫刻線で影を付けていった仕事です。 ブレード先の方ほど彫りが繊細になる仕掛けになっており、解像力不足でよくご覧いただけないのが残念ですが、マグニファイイング グラスで鑑賞いただくと当時の手仕事のレベルに驚かれると思います。
裏面のブリティッシュ ホールマークは順に、メーカーズマーク、シェフィールド アセイオフィスの王冠マーク、スターリングシルバーを示すライオンパサント、そして1903年のデートレターです。
この品が作られた当時の時代背景については、「英国アンティーク情報」欄の「14.Still Victorian」の解説記事もご参考ください。
No. 5175 ヴィクトリアン スターリングシルバー Queen
Anne パターン バターナイフ with フラワーエングレービング
長さ 13.5cm、重さ 15g、ブレード最大幅 1.9cm、1900年
シェフィールド、一万五千円
ヴィクトリア時代の最後に作られたスターリングシルバー バターナイフです。 ブレード面にはお花の彫刻が二つあって可愛らしく、花びらの内側など特に彫刻が細かくて、見事な出来栄えと思います。 エッジ周辺に施された彫りも丁寧な仕事で好感が持てます
柄のデザインはQueen Anne パターン、あるいはオーバニー(Albany)パターンと呼ばれ、1880年代にイギリスで初めて登場し1900年頃にはかなりの人気となりました。 このバターナイフは1900年の作ですので、Queen
Anne パターンの絶頂期の品と言えましょう。
裏面のホールマークは順にシェフィールド アセイオフィスの王冠マーク、スターリングシルバーを示すライオンパサント、1900年のデートレター、そしてメーカーズマークになります。
この品が作られたヴィクトリア時代の背景については、「英国アンティーク情報」欄の「31. 『Punch:1873年2月22日号』 ヴィクトリアンの英国を伝える週刊新聞」や「14.Still Victorian」の解説記事もご参考ください。
No. 5481 ヴィクトリアン スターリングシルバー バターナイフ
長さ 19.2cm、重さ 45g、ブレード最大幅 2.7cm、柄の最大幅
1.8cm、柄の最大厚み 4mm、1893年 ロンドン、一万六千円
この品が作られたのはヴィクトリアン終わり頃の1893年で、日本では日清戦争が始まる少し前の頃にあたり、今から百十四年も前のことです。 19センチの長さに、ブレード幅が最大で3センチほどあって、現代のバターナイフと比べるとかなりのキングサイズであることから、バターナイフと言われても今日的にはちょっとピンと来ないかも知れません。 しかし、これがアンティークでしか感じることが出来ない昔のシルバーウェアの味わいになっています。
鏝状(こて状)構造に加えて、幅広なブレードと大きなサイズを考えると、今日的にはオードブルサーバーとして使っても良さそうに思います。 45グラムという持ちはかりも純銀の心地よい重みを楽しむのに十分です。
バターナイフは元々バタースペードという鏝状(こて状)のシルバーウェアから発展してきた経緯があります。 このバターナイフはブレード面に対して柄先が3センチほど高い位置にくる構造で、その昔の「こて状バタースペード」の面影を残しているという意味で、バターナイフの歴史的発展過程を示しているわけで、博物館的な興味を感じさせてくれるアンティークとも言えましょう。
柄の裏面には四つのブリティッシュ ホールマークがしっかり深く刻んであるのも好印象です。 ホールマークは順にメーカーズマーク、ロンドン
レオパードヘッド、、スターリングシルバーを示すライオンパサント、そして1893年のデートレターになります。
それから、この品のデートレターをご覧いただくと、その形が盾状をしていて特徴があります。 ロンドンアセイオフィスにおける19世紀のほぼ第四四半期にあたる1877年から1895年までのデートレター サイクルは「盾」と覚えておかれると、アンティークハントの時には便利です。 この時代はイギリスの国力が大いに伸張した時期にあたることから、今日においてもこの頃のアンティークに出会う可能性も高いのです。 デートレターをすべて暗記することは難しくても、「ロンドンの盾はヴィクトリアン後期」と知っておく価値はあると思います。
この品が作られた当時の時代背景については、「英国アンティーク情報」欄にあります「31. 『Punch:1873年2月22日号』 ヴィクトリアンの英国を伝える週刊新聞」と「14. Still Victorian」の解説記事もご参考ください。 それから、「9.トラディショナル イングリッシュ バターナイフ」の解説記事もご参考ください。
No. 5398 スターリングシルバー Queen Anne
パターン バターナイフ
長さ 13.6cm、重さ 17g、ブレード最大幅 1.75cm、柄の最大幅
1.2cm、柄の最大厚み 2.5mm、1966年 バーミンガム、一万二千円
5388 バターナイフとペアで求めた二本目になります。 柄のデザインはQueen
Anne パターン、あるいはオーバニー(Albany)パターンと呼ばれ、1880年代にイギリスで初めて登場し1900年頃にはかなりの人気となりました。 このバターナイフは1966年の作ですので、Queen
Anne パターンの絶頂期からずいぶんと離れていますが、親しまれてきたブリティッシュ デザインということでしょう。
写真二番目のホールマークは順に、メーカーズマーク、バーミンガム アセイオフィスのアンカーマーク、スターリングシルバーを示すライオンパサント、そして1966年のデートレターになります。
この純銀バターナイフは古いアンティークとは違って比較的近年の品ですが、別の意味でレアものになると思います。 といいますのは、1960年代のブリティッシュ ホールマーク入り銀製品はかなり品薄という事情があります。 英吉利物屋のサイトを眺めてみても、1940年代、50年代、70年代の銀はあっても、1960年代の品はあまりないと気が付かれるでしょう。
第二次大戦後の間もない頃でもティーストレーナーなどの茶道具で銀器を見ますし、70年代になるとエリザベス二世戴冠二十五周年のシルバージュビリーを記念した純銀アクセサリーをよく見るようになります。 前後の時代と比べて60年代はイギリス銀製品の谷間の時代であるようです。
どうしてだろうか?と、イギリス人の知り合いに聞いてみました。 二度にわたる世界大戦を経て大英帝国の威信も地に落ちて、かつての英国植民地が次々と独立していったのは60年代のことです。 それまであって当然と考えられていた植民地を失う経済的ダメージはやはり大きなものだったとのこと。 そして英国病とまで呼ばれた構造的な経済停滞が進行していったのも60年代のことでした。 この時期の銀製品の少なさは、イギリス経済社会が失速状態になっていたことが大きな原因だったと考えられます。
No. 5867 エドワーディアン スターリングシルバー バターナイフ
with ジェード(翡翠)ハンドル SOLD
長さ 12.3cm、重さ 16g、ブレード部分の最大幅
1.95cm、翡翠ハンドルの最大幅 1.15cm、翡翠ハンドルの厚み
4.5mm、1905年 バーミンガム、二万七千円
今から百年と少し前、エドワーディアン中頃に作られたバターナイフです。 手彫りのエングレービングの素晴らしさ、ジェードハンドルの色合いのよさ、そしてジョイント部分の繊細な作りの具合からすると、実用品というよりは宝飾品の範疇に入りそうなアンティークになっています。
スターリングシルバー ブレードの銀の輝きが、翡翠の深緑色の深みを増すように思います。 差込み式のシルバー柄にマザーオブパールやジェード等のハンドルがついたタイプの品はあまり見かけないので、レアものアンティークとも言えましょう。
写真では解像力不足で十分にその繊細さがお伝え出来ないのですが、アンティークハント用のルーペがお手元にあれば、ブレード部分に施された手仕事の素晴らしさも分かっていただけると思います。 基本デザインの背景に色合いが濃く見える部分は、1ミリ間隔に何本もの細やかさで彫刻線を施して影を付けた細工で、ハンド エングレービングとしては限界的な繊細さを伴った仕事になっています。
彫刻のモチーフはウェーブパターンになります。 波模様モチーフには、Continuation(続いていくこと)や
Eternity(永遠)という意味合いが象徴されており、ヴィクトリアンからエドワーディアンの頃に好まれたクリスチャンモチーフのデザインです。
波模様の基本デザインは、深めなタッチで彫られています。 じっくり観察していくと、彫りの跡から彫刻刀を振るった向きまでもが窺い知れ、銀職人さんの息遣いが伝わってくるところにも惹かれるアンティークと思います。
ジェードハンドルのバターナイフやジャムスプーンには、ブリティッシュ ホールマークのないものも見られますが、この品の場合は英国製ということもポイントになっています。 写真二番目で見えるように、裏面のホールマークは順にメーカーズマーク、バーミンガム アセイオフィスのアンカーマーク、スターリングシルバーを示すライオンパサント、そして1905年のデートレターになります。 ジョイント部分にもスターリングシルバーを示すライオンパサントが刻印されています。
No. 6837 ジョージ三世 スターリングシルバー フィドルパターン バターナイフ
長さ 18.9cm、重さ 42g、ブレード最大幅 2.6cm、1813年
ロンドン、William Eley, William Fearn &
William Chawner作、一万七千円
もうすぐ二百年という時が経とうとしているスターリングシルバー フィドルパターン バターナイフです。 ジョージアンの中でも1760年から1820年までのジョージ三世時代は長かったので、アンティークにおいても、この時代の品には「ジョージ三世...」と接頭辞のように国王の名前を冠することが多いのです。
メーカーのWilliam Eley, William Fearn &
William Chawnerは、ジョージアンの時代にあっては最も有力なパートナーシップとして覚えておいてもよい名前です。
英国シルバーフラットウェアの歴史を紐解くと、1700年代後半から1800年代初めの頃には、有力シルバースミスとして四つのファミリーがありました。 それらはChawner家、Fearn家、Eley家、そしてSmith家の四つのファミリーでした。 彼らは互いに競争しあうと同時に、徒弟制度を通じてお互いに密接に結びついていたので、ある意味ではシルバーギルドの枠内で四ファミリーがもっと大きな大家族を構成していたと考えてよいかも知れません。 と言いますのは、トーマス・チョーナーの下で徒弟として修行を積んだのが、ウィリアム・ファーンやジョージ・スミスであって、長じたウィリアム・ファーンの下で修行をしたのが、ウィリアム・チョーナー二世やウィリアム・イーリーであるといった、徒弟制度上の樹形図で四つのファミリーは結びついていたからなのです。
四つのファミリーは必要に応じてパートナーシップを組んで、メーカーズマークを使い分けており、この品は四大ファミリーのうち、イーリー、ファーンそしてチョーナーが組んだパートナーシップであったと言うわけです。
写真二番目でホールマークは順に、メーカーズマーク、スターリングシルバーを示すライオンパサント、1813年のデートレター、そしてジョージ三世の横顔はデューティーマークです。
英国でアンティークという言葉を厳密な意味で使うと、百年以上の時を経た品物を指します。 気に入った古いものを使っていくうちに、その品が自分の手元で‘アンティーク’になっていくことは、コレクターの喜びとも言えますが、このバターナイフが作られたのは1813年ですから、余裕でアンティークのカテゴリーに入るどころか、あと七年で"ダブル"アンティークになるわけで、そんな辺りにもアンティークファンとしての楽しみ方がある品と言えましょう。
英国のバターナイフの特徴と歴史については、英国アンティーク情報欄の「9.トラディショナル イングリッシュ バターナイフ」の解説記事を、またフィドルパターンについては「4.イングリッシュ スプーン パターン」の解説記事をご覧になってください。
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