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アーキテクチュラル アンティーク 
ヴィクトリアンタイルやステンドグラス等も扱うアーキテクチュラル アンティーク(建築資材アンティーク)をご紹介します。
西洋アンティークの隔月刊誌「オクルス」2000年9月号掲載記事です。



英国アンティークの奥の深さは、それが一部の人の楽しみに止まらず、普通の人たちの生活に深く根ざしているところにあるように思います。
週末になれば、近所のどこかでアンティークフェアが催されていますし、セカンドハンドの品を扱うカーブーツセールも多くの人々の楽しみでたくさん開かれています。

前回ご紹介したアンティーク ジュエリーのお店ウォルツスキーをその高級感、豪華さの点で、英国アンティークのさまざまな分野の中で、一方の極にあるとすれば、今回ご紹介するアーキテクチュラル アンティークはその対極にあるといっていいかもしれません。アーキテクチュラル アンティークのお店の構えはたいていは、お世辞にもきれいとは言いがたい所が多いのです。しかしこの国の人々の古い物を大切にする心意気に触れるには、この分野を避けて通れません。
そして、時々、ハッとするほど素晴らしい物に出会え、まるで宝探しをしている気分を味わえるのもこの分野の特徴と言ってよいでしょう。

(写真1)ヴィクトリアン後期のペインティング ステンドグラス


ロンドン郊外にお店を構えられるロイド リードビーターさんにお話を伺いました。
アーキテクチュラル アンティークとは、古くなったお屋敷、教会、大きなビル、農家の納屋等およそありとあらゆる昔の建築物が改築や取り壊しになるとき、再利用可能な資材を取り外して持ちかえり、また現代の生活に蘇らせる仕事です。
この仕事の中身を勘案して日本語にすれば「建築廃資材再利用業」とでも言えばぴったりする気がします。
取り扱う品物は、ヘビーサイドと呼ばれる煉瓦、大理石の板、敷石、木の床板等の廃資材から始まり、ドア、ドアノブ、窓枠、バスタブ、ボイラーなど、そして飾り金具、装飾的なタイル、シャンデリア、ファイヤーピース、庭の装飾品、ステンドグラスなど美術性の高いアンティークまで多岐にわたります。年代はジョージアンからヴィクトリアンそして1930年代くらいまでです。

ロイドさんは20年間大工さんをした後に、この仕事を始められました。
今ではアンティーク ディーラーとしての仕事が大半で、古い建物取り壊しの話しがあれが、英国中どこへでも仕入れに出かけます。一方、古いマナーハウスの床板を使って新しい家のフローリングを手がけるなど、昔の経験を活かして古い物ならではのぬくもりを追求するお仕事も続けられています。

古い物を愛するイギリス人ではありますが、建物解体業者さんの中には、その価値を充分に理解されていない方も多く、ロイドさんから見れば、宝の山も、いっしょくたに壊してしまう業者もあり、そこがロイドさんの悩みです。
ですから、建物解体情報を入手し、業者さんを指導し、コンディションよく建築アンティークを取り出すための事前準備はとても大切な仕事です。
お店のスタッフはロイドさんを含め数人とこじんまりしていますが、ロイドさんは自分の目が行き届く範囲で、このまま取り扱うアンティークの質を落とさずやっていきたいと少し照れながらおっしゃっていました。

お店は資材置き場のようですが、我が家のインテリアの一部にちょっとしたアンティークなアクセントを加えたい人たちで賑わっています。一見すると廃材にしか見えない建築資材アンティークですが、使う人の心意気次第で美しく蘇るのですね。見せていただいた古い木材のフロアーは、新しい素材ではなかなか得られない暖かみが感じられ、味わい深いものになっていました。

(写真2)ミントン ヴィクトリアン タイル、'King Lear'、Mintons China Works作、ヴィクトリアン後期の英国製


手近なところからアーキテクチュラル アンティークに親しもうとすると、例えば装飾タイルがあります。大きな品物が多い建築アンティークの分野にあって、小ぶりで扱いやすいのが利点です。15cm四方、厚さ1cmほどのタイルで、暖炉の左右の飾りとして使われてきたものが多いようです。19世紀後半のヴィクトリア時代には、ミントン、ウェッジウッドを始めとして多くの有名な窯元がこのタイルを焼いていました。
美しい幾何学模様のタイル、草花のモチーフのタイル、風景、人物を描いたタイルなどいろいろあり、お部屋に飾ったり、鍋敷き等に使われたりしているようです。キッチンやお風呂の壁に一枚、二枚でもとり入れられたら楽しそうです。

また、ステンドグラスも人気があります。教会から出てきたような、宗教的なモチーフの凝った品の中には手描きの作品もあり、作者の筆使いを見るのも楽しみです。現在マーケットに出てくる品の多くは、1930年代にロンドンの市域が急速に拡大した際、郊外に多くの家が建てられ、そこで使われた花模様などのワンポイントのステンドグラスが多いようです。70年の年月を経て、多くの家が改装される周期にあたり品物が出てきているわけですが、それがまた日常の暮らしにとけ込んでいきます。

タイル、ステンドグラス、その他の建築アンティークを普段の生活にとり入れて、古い物を上手に活かしていく英国の人たちのスタイルはなかなかいいなと思います、私たちの暮らしにもうまく組み込んでいけたら楽しいのではないでしょうか。 (はた じゅん)

(写真3)ミントン アールヌーボー ヴィクトリアン タイル

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