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No. 4692 ヴィクトリアン スターリングシルバー ロケット
楕円の長径 3.5cm、短径 2.6cm、留め具含む縦長 4.7cm、重さ 10g、1881年 バーミンガム、二万九千円

両面に施された手彫りエングレービングの素晴らしさ、ホールマークから読み取れる百三十年近く前に作られたアンティークとしての古さ、そしてコンディションの良さと、三拍子揃ったヴィクトリアーナです。 留め具がブローチタイプになっていますが、留め具を外して普通のロケット ペンダントヘッドとしてお使いいただくのは簡単です。

フラワーエングレービングが可愛らしく、ルーペで詳細に観察してみても、かなりレベルの高い手仕事であることから、気に入って求めました。

お花の本体部分は、ドット状の彫刻で、七重に同心円を彫ってあります。 葉っぱの背景部分は彫刻がかなり細かくて、写真では十分にその繊細さがお伝え出来ませんが、アンティークハント用のルーペがお手元にあれば、1ミリ間隔に何本もの彫刻線を引いて影をつけていったヴィクトリアンの限界的な手仕事の素晴らしさも分かっていただけると思います。 花模様の輪郭やその他基本パターンの彫りは深めのタッチで、じっくり観察していくと、彫りの跡から彫刻刀を振るった向きまでもが窺い知れ、銀職人さんの息遣いが伝わってくるところにも惹かれる品と思います。

表側に見える葉っぱは、その形から判断してアイビーでしょう。 小花の周りをアイビーがリースのようになってぐるっと一周取り囲んでいます。 19世紀後半からしばらく、ヴィクトリアンやエドワーディアンのイギリスでは、当時の自然主義的傾向にアイビーがよくマッチした為、バルコニーやガーデンファーニチャーに絡まるアイビーが大変好まれました。 アイビーは蔦がしっかりと絡まることから、Fidelity(忠実ないしは誠実)、Friendship(友情)、あるいはMarriage(結婚)を象徴するモチーフとされます。 そしていつも緑であることから、Immortality(不滅)や Eternal Life(永遠の魂)を表すクリスチャンモチーフともなっています。

ホールマークは順に1881年のデートレター、バーミンガム アセイオフィスのアンカーマーク、スターリングシルバーを示すライオンパサント、そしてメーカーズマークになります。 蓋を開けると内部にもスターリングシルバーを示すライオンパサントと1881年のデートレター刻印があります。

英国でアンティークという言葉を厳密な意味で使うと、百年以上の時を経た品物を指します。 この銀のロケットが作られたのは1881年ですから、余裕で正式なアンティークのカテゴリーに入るのみならず、少し先には一世紀半も見えてきている古さは、やはりアンティークとしてのポイントになります。 既に十分古い品ですが、気に入った古いものを使っていくうちに、その品が時を重ねていくことは、コレクターの喜びとも言えますので、このアンティーク ロケットには、そんな楽しみ方もあるかと思うのです。

ロケットというアクセサリーは、ヒンジがあって開け閉めしながら使われることから、普段からずっと使われ続けていれば、やがては耐用年数を超えてしまうのが普通です。 その意味で、百三十年近くも前に作られた品が、これだけのコンディションを備えたまま、今に残っているというのは、まず珍しいと言ってよいでしょう。 おそらくあまり使われることなく現在に至っているものと考えられます。

クイーン ヴィクトリアが若干18歳の若さで英国王位を継承したのは1837年のことで、この年から1900年までの64年間がヴィクトリア時代にあたります。 ヴィクトリア女王は在位期間が長かったことと、その時代は英国の国力が格段に伸張した時期と重なっていた為に、イギリス史の中でも特にポピュラーな国王となりました。 アンティークの分野にあっても、この時代の物品を指すヴィクトリアーナ(Victoriana)という用語もあって、ヴィクトリア時代を専門とするコレクタターが大勢いるわけなのです。

写真のロケットが作られた当時の時代背景については、「英国アンティーク情報」欄にあります「31. 『Punch:1873年2月22日号』 ヴィクトリアンの英国を伝える週刊新聞」や「14. Still Victorian」の解説記事も合わせてご覧ください。






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