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26、設計契約書
もともと建築家の設計行為というものは建築の創造行為である。
したがって契約を交わしたとはいえ、金銭のやり取りの対象として、建築作品の成果が約束できるものではない。しかし、社会的ルールがあって、そうせざるをえない現実がある。
もし建築を芸術の一分野とするならば、絵画や彫刻のように、できあがったものを見て値をつけ、設計・監理料がいくらか決めるということも考えられるだろうが、現実的には、建築の芸術性を認めながらも、結局は不動産であり、消費物であるという認識が中心となって、設計契約が行われている。
日本では1980年代から、欧米並の契約社会、訴訟社会へと向かう波が少しずつ押し寄せてきている。しかし、いまだにその危険なウェーブに気づかず、大芸術ぶった建築家が、契約行為を軽んじている傾向が見受けられる。それはやもすると、大ヤケドを負うはめとなる危険性をはらんでいる。
また現在、建築の設計契約は、ビル建築と住宅が同じ設計監理委託契約書によって交わされていることが多い。しかし、住宅設計は建主により多くの細かい注文が出る仕事であり、それによる変更も多い。設計条件もビル建築とは比べものにならないくらいの差があり、技術的、施工面でも細心の注意をはらわなければならない。したがって、ひとつ間違うと建主との不仲、トラブルにも発展しやすい。
今、多くの設計者が使っている契約書による契約行為は司法上は委任とも請負ともとれないもので、設計者本人へのリスクもケースバイケースであり、不透明なものである。しかし、多くの設計者が、本当にそのリスクを承知で設計活動を行なっているとは思えない点が多々ある。
住宅設計というものは、最終的には建主とのコミュニケーションが単なる契約行為を越えてしまうという、人間的つながりをもちやすい仕事であるが、それゆえに契約行為で明確にできない仕事の不透明な部分がコミュニケーションのみに委ねられていることは問題である。
私たち家づくりの会では契約書研究班を組織し、探検をスタートした。もちろん現段階において完全に研究できているわけではないが、住宅設計にふさわしい、完全なる契約書づくりを目指して、これからも研究を重ねていくつもりである。
(文:川口通正建築研究所 川口 通正)
*挿入写真1996年1月号 P.176「PL法施行前に経済企画庁が消費者向けに作ったチラシ」
詳しい記事は「住宅建築」1996年1・2月号参照。
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