サブリミナル音楽について(一部改訂)
 
    

  そもそも私がいわゆるヒーリング音楽の作曲家として世に出たのは1990年発売の「マインドコントロールミュージック」(図)であって、潜在意識に働きかけるユニークなヒーリングCDとして当時は大反響を呼んだ。当時はアルファ波だ1/Fだといったタイトルはあったがそういった人間の意識に積極的に働きかける商品は私が企画したのがおそらくは最初だったと思われる。このシリーズは一世を風靡してシリーズ22枚あってトータル20万枚以上のセールスを記録した。これは私の知る限りではヒーリングCDとしてはトップクラスの売り上げである。

そもそもサブリミナルな表現方法とは広告の世界で映像や画像に見えにくいメッセージを入れて見る人に購買意欲を高めさせる方法として広まり、あまりにも有名な例は1960年代に映画館のコカコーラのコマーシャルに1/24だけ砂漠の絵を入れた所、売店のコカコーラの売り上げが飛躍的に伸びたいう事例がある。その他多くの宣伝や、アーテイストのアルバム等に使われ、MTV華やかなりし頃はかなりの頻度でサブリミナルのテクニックが使われていたといわれる。

 潜在意識に働き掛けるとはどういうことだろうか? 実は私たちは無意識のうちにさまざまな情報を脳の中に取り入れているのである。脳はそれを取捨選択して我々の通常の意識へ情報をフィードバックしているのである。「実際には認識していないのにどうして見たり聴いたりしたことになるのか?」とはサブリミナルを解説する時によく出てくる質問であるが、実際には私たちが意識の上での情報より数倍の情報を脳が受け取っているという事実は確かに専門家でなければ理解しがたいであろう。だが、皆さんにこんな経験はないだろうか?街中を歩いていて、知り合いでもないのに「あの人どこかで見た事がある」と思ってしまうとか「あの車ひょっとして家の前よく通る車なのでは」とか思ったことはないだろうか?実はたいていの場合おそらくあなたは実際にその人をどこかですれ違ったり、その車を無意識のうちに通るのを見ていたりしているのである。ただ、あなたは日常の中でおそらくは別のことをしていて、そうした「関心の無い」情報を切り捨てているに過ぎないのである。推理小説等で犯人の逃走した車のナンバーを一瞬しか見ていないのによく覚えているというのがあるが、これも潜在意識のなせる技である。別に不思議なことでも何でも無い。脳は脳が必要だと考えて取捨選択した情報のみを「意識」にフィードバックしているに過ぎないのである。

  私とビクターのプロデユーサーの藤本氏はこのメカニズムを用いて「ヒーリング」に応用すべく、多くのCDを世に発表させていただいた。実の所いわゆるサブリミナルテープなるものはアメリカや日本のマイナーなレーベルでは一部販売されていたが、ハッキリいって大半は本当にサブリミナルなテクニックを用いたのかどうか怪しい、インチキとまではいわないが限り無くそれに近いものと思われた。我々は実際に高音のサブリミナルやいわゆる「マスキング」といわれるテクニックを使って実際にメッセージを導入した。実際に効果があったかどうかはユーザーの判断をあおぐとしても、少なくてもクレームらしきものはただの一件もないことは付け加えておく。

  実は問題はその後である。1995年頃に起こった地下鉄サリン事件を初めとする一連のオウム事件をきっかけにサブリミナルというものに対してネガテイヴなイメージが広がった。なまじっか我々のCDシリーズが「マインドコントロールミュージック」なるタイトルだったのが当時のオウム信者とのイメージのオーバーラップしてしまい、また一部のいいかげんなマスコミがあたかも我々とオウムが何らかの関係があるかのような報道をしたため、(云うまでもなくあるわけがない) 事態は最悪になった。そしてかつてはヒーリングCDのベストセラーだったものが現在、廃盤の憂き目にあってしまったのは私としては何とも無念である。
そもそも「マインドコントロール」なる用語は自律訓練法の中の一用語で、自分で自分の意識を高めたり、啓発したりする訓練のことを本来云うのだが、一連のオウム事件ですっかり「カルトに洗脳された」と同義語になってしまった。一部の専門家がマスコミのその用語に関する間違った用法を指摘したが、マスコミによって全く無視されている。その流れは現在もいまだに続いている。

何故、今頃こんな話を持ち出したかって? 実は昨今の狂牛病騒動で焼肉屋が次々とつぶれている事態や同時多発テロにからんでアメリカ観光のみならず、アメリカの基地が多い沖縄の観光収入は激減している事態を見て、オウム事件当時の日本人のパニックぶりを改めて思い出させられたからだ。日本人というのは昔からパニックに極端に弱い。これでどこかのマスコミがデマでも流せば収拾のつかない事態になってしまうのではと危惧している。

  日本人は平和を享受してきたし、そのこと自体はすばらしいことだが、そのために不測の事態に対して極端に弱くなってしまった点も否めない。狂牛病騒動にしても、今回のテロ事件にしてももう少し冷静に事態を見ることができたらこんなパニック的な状況は避けられたのではないだろうか。(最も狂牛病に関しては政府と行政の失政と事態を処理する際の不手際が大きな原因だが)

  話をサブリミナルにもどすが、サブリミナルに関する不審の一つに「知らないうちに」サブリミナル効果をかけられているのではという懸念がある。勿論現在、サブリミナル広告は禁止されているので、表向きはそういう危険はないかもしれない。しかし広告の世界でそうした手法は完全にはなくなっていないだろうと思う。宣伝手法としてはオイシイやりかただから......

  またサブリミナルというものである誤解をする人が多いようなのでそれも追記しておく。それはサブリミナルによって人格が変わったり等別人になってしまうのでは? あるいは中毒症状にはなるのではという捉らえかたである。どうも現代人はテレビや映画の見過ぎのせいかSFチックに考える傾向があるが、云うまでもなくいずれの答えもNOである。サブリミナルは無意識のうちに情報が被験者の脳に入っていくのだが、その情報によって必ずある特定の方向へ被験者が行動するとは限らない。被験者はサブリミナルの刺激によってある特定の方向に「誘導されやすく」なるが、これも個人差で必ずしも全ての人が誘導されるとは限らない。その意味ではサブリミナルを「洗脳」と捉える人がいるが私は違うと思う、あくまで無意識の中に入った情報を各個人がどう情報処理した上で行動するか、である。当然のことながら中毒症状になどなることなどありえない。

  最後にサブリミナルCDとサブリミナル広告は1点だけ大きな違いがあることは声を大にしていいたい。それはサブリミナルCDは最初から「サブリミナル」と銘打って販売して、ヒーリングや自己啓発を目的として作られている点である。つまり消費者が自らの判断で買うかどうかを選べる点であり、これは「知らないうちに」サブリミナルメッセージを吹き込まれる広告とは本質的に異なるということは強調しておきたい。廃盤となった今こんなことを書いてもせんなきことかもしれない。しかしかつて「サブリミナル」な商品を出した事で誤解されることだけは避けたいのでこのページをもうけたしだいである。

  
マインドコントロールミュージック(抜粋)


「眠り」


「瞑想」


「集中力」


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