潜在意識(サブリミナル) について

                                

 

  潜在意識、英語でSubliminalもしくはSubconsciousといいますが、特に前者のSubliminal(サブリミナル)という言葉の響きだけで「アヤシイ」とか「恐い」という風に決め付ける人が多いようです。しかしその日本語訳の潜在意識という言葉自体は心理学や精神医学の分野では普通に使われている言葉なのです。だが私たちが普段見たり感じたりしている通常の意識(顕在意識といいます)と比べ潜在意識は認識そのものができないため、もう1つの意識、潜在意識というものがあるということを理解するのはとても難しいのが現状です。

 

  潜在意識を発見したのはオーストリアの心理学者フロイド(Sigmund Freud1865-1939)という人で「精神分析学」という学問を確立した人です。彼は多くの患者とのカウンセリングから人間は通常の意識とは別の所にも情報が脳の中に入っていることをつきとめました。

   顕 在 意 識

      (通 識)

     ↑  ↓

 

   潜 在 意 識


情報の往来は脳によってコントロールされる

  

 

 実は人間の意識の中で顕在意識―通常の意識は氷山の一角に過ぎず私たちが認識する10倍の情報が潜在意識に入っていることがわかっています。

  それらの情報の交通整理をしているのは脳です。脳の中枢には広大な潜在意識の波があり、私たちが認識している情報の少なく10 倍の情報がその潜在意識の中へ入っていきます。大部分の情報は脳の交通整理によって廃棄されます 


しかしその中で重要な情報と判断されたものは潜在意識の中に残り、顕在意識に影響を与えます。潜在意識は人間の行動、人格、性格に多大な影響を及ぼします。もし否定的な情報ばかりが潜在意識の中に刻印されますとその人は疑い深く、何をやっても悲観的、否定的な人格になり、何事にも消極的な人物になります。反対に肯定的な情報ばかりが入りますと何をやるにも積極的な明るい人物になります。この両者の違いは人生を歩む上で天と地くらいの差が生じます。潜在意識にどういう情報を入れて潜在意識をどう刻印するかによってその人の人生に恐ろしいほどの影響力があります。

 

顕在意識を理性、理屈の世界だとすれば潜在意識は直感やインスピレーションの世界だということができます。残念ながら世の中全てのことが理屈や理性だけで解決しないのは人生を歩む上でおわかりになると思います。理屈っぽい人の中にはいわゆる「カン」というものをバカにする人がいますが、精神分析学の世界では「カン」というものは潜在意識に入っている情報に基づいた発想ということになっています。

 

潜在意識へのメッセージ

 

 そのため潜在意識に働きかけるメッセージをどのようにすればよいかという話になります。「潜在意識へのメッセージ」というだけでいわゆる洗脳を目的としたサブリミナル広告を連想する人が多く、残念ながらあまりよいイメージを持っている人は少ないようです。しかし一方で最近注目を浴びている「成功哲学」を唱えたナポレオンヒルやジョセフマーフィー(日本で一時「マーフィーの法則」でブームになった人です)は「潜在意識を強化」することによって成功や目的を達成できると繰り返しのべています。日本でも遅まきながら潜在意識のメカニズムを利用しようという動きが出始めています。それでもまだ「潜在意識云々」というとあたかも超常現象の類であるかのように受け取る人が少なくないので、残念ながらアメリカとかロシアなどと比べると20年くらい日本は遅れているといわざるを得ません。

 

 さて潜在意識へのメッセージの効果についてですが、これにはさまざまな受け止め方があります。アメリカの心理学者W.B. キイはその著書「潜在意識への誘惑」等でサブリミナル広告に関する警鐘を鳴らしサブリミナルのネガテイブなイメージを広めました。(図2サブリミナル広告例)確かにサブリミナルについてこれほど膨大なデータを分析した人物は他に見当たりませんが一方で,データの分析内容には時々首を傾げたくなるものがあるのも事実です。                                 

               

 

            図2 サブリミナルの広告例 (デパートの広告から

       SEXという言葉を埋め込んで人がこの広告を見るような仕掛けがしてある。
(参考文献;W.B.Key "Media Sexploit"より(C)1976 by W.B.Key)



 確かに「洗脳」を目的とした広告が存在していたのは事実ですが、キイの著書には実際にその広告によってどれだけの購買効果があったのか等については明確な記述がありません。ただ「効果があったからこれだけたくさんあるのだ」というにとどめています。中にはこれが本当にサブリミナルなのかと思いたくなるような少々こじつけっぽい広告もあるのも否定できません。

 

 キイは筋金入りのユング派心理学者ですが、実はユング派で問題なのは精神分析のデータがいまだに19世紀のヨーロッパのものをベースにしている点です。それは現代よりはるかに情報も少なく社会的にも抑圧されていた時代で、その時代のデータを現代のようにセックス情報が氾濫し(特に日本のように)社会的にもはるかに開放的になっている時代にあてはめるのは少々無理があります。そういった社会で”SEX”という言葉で潜在意識が大きく動くかは疑問です。

 

 そして何よりもキイはある大きなことを見逃しています。それはサブリミナル、潜在意識のメッセージが効果的になるためには一定の条件が必要であるという点です。ただサブリミナルメッセージを無条件に垂れ流しすれば人間の行動に無条件に影響を与えるといったそんな単純な話ではないのです。 

 

 前にも申し上げたように顕在意識は潜在意識という氷山の一角でしかなく表裏一体なのです。両者の情報のやりとりは無意識にそして頻繁に行われています。そのため潜在意識に情報が流れても場合によってはその情報が廃棄されることもあります。つまり潜在意識に情報が流れてもその情報を受け入れる環境が整っていなければサブリミナルメッセージを流しても何の意味もないのです。それはある意味でサブリミナルの効果の限界であると同時に、サブリミナルの効果についてわかりにくくしている一因でもあります。

 

 例えばあまりにも有名な1960年のニュージャージーの映画館での「コカコーラ事件」について述べましょう。このCMが流されたのは真夏の暑い日で、アメリカによくあるドライブインシアターでの話です。当時殆どの車にはエアコンなどついておらず真夏の暑い日でのどが渇きやすい条件が整っていました。そうしているうちに映画館のCMで1/24秒の間に砂漠の絵とコカコーラが美味しいというメッセージが流れたために映画館でのコカコーラの売り上げが数倍に跳ね上がったのです。これは潜在意識のメッセージを受け入れる環境が整ったためで、顕在意識と潜在意識双方の相乗効果があって始めてメッセージが効果的になるのです。

 

 要するに潜在意識のメッセージを受け入れる環境―顕在意識がおかれている状態との密接な関係が必要なのです。そのため仮に公共の電波でサブリミナルCMが流れても( 筆者は勿論これはよくないことだと思っています)精神的な環境がそれを受け入れない環境であれば恐るに足りません。

 

 一方では「成功哲学」のナポレオンヒルやジョセフマーフィーのように「潜在意識を強化しなさい」という主張があります。これは潜在意識のメッセージを受け入れる環境を(自分の成功に必要なメッセージを受け入れる環境)自分で作りなさいといっているのに等しいと思います。明確な目標と信念を潜在意識に刻印すれば、成功に向かっての行動をとることが可能になります。自己啓発、自分が人生の成功者になるために潜在意識によい影響を与えるメッセージを受け入れう易い環境を作るーこれは口でいうほど簡単ではありません。しかしこのメカニズムをいい方面に利用すれば人類に莫大な恩恵を与える可能性があると考えております。

 

 いかがでしょうか? 潜在意識へのメッセージー確かに言葉の響きはおどろおどろしいところはありますが決して「アヤシイ」ものではなく、寧ろ新たな可能性が開けるとはお思いにならないでしょうか? サブリミナルは広告の分野で悪いイメージを広げてしまいましたが、自己啓発や訓練という別の使い方をすれば実に有効なメソードになりうることをおわかりいただければよいと思っております。

 




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