Rebirth・Reverse

第四話

立ち並ぶ校舎の中でもここはあまり人気のない
(って言っても結界とやらの中にいるせいかもしれないけど)
一番端っこのサークル棟のそのまた裏。
前は小さな文科系サークルの部室が雑居する2階建ての建物で
後は高い金網のフェンス。その後は削り取られ切り立った岩の山肌。
逃げるとすればヤツラが現れるだろうサークル棟のどちらかの反対側ってこと。
逆に言えばヤツラが現れるまでは迂闊に逃げることも出来ない。
むやみに逃げて鉢合わせでもしたらコトだ。
「で、3人揃ったけど・・・どうすんのさ?」
じっと立ったままの笹本クンが答える。
「とりあえずは何もすることはないですね」
「とりあえず、っていつまでよ?」
「ヤツラが来るまでは、こちらも動けません」
「ヤツラが来たらすることがあるんだろ?今のうちに説明しといてよ」
彼の目がサークル棟の右手に向く。
「・・・そうしたほうがいいんでしょうが・・・」
ガッション・・・ガッション・・・ガッション・・・
「間に合わないみたいです!」
「ぶっつけ本番ってわけか!」
ガッション・・ガッション・・ガッション
「どどど、どうすんのぉ!?」
「ちょいと!何かするなら早いトコ言ってよ!」
「まだです!」
ガッション・ガッション・ガッション・ガッション!
「き・・・来たぁ!」
もうあと15メートルぐらいってとこでようやっと笹本クンが動く。
「・・・行きます!」
両手を前に・・・いや・・・智に向かって差し出すと
「ギリオール・ブリオール・アイディス・メセド・デリオール・・・」
何・・・呪文!?
訳のわからない言葉のはずなのに・・・
『鋭き刃よ、切り裂く刃よ、契約に基づき形をなせ・・・』
なんで意味がわかるのぉ!?
「わ、ちょっと、ナニこれ〜!?」
!?智の体が・・・銀色に輝き始めてる!
「智っ!?テメ、何やってんだ!?」
止めようとしてヤツに手を伸ばす。
バチッ!
「痛ッ!?」
手が小さな花火に弾かれる。くそっ、どうしようってんだ!?
「グレオ・ナルア・イオ・シュマウス・ベハウ・イア・イア・レディニーク・・・シェイラ・マル−ン!」
「イヤぁああぁ〜っ!?」
輝きが増し目が眩んでもう恐怖に叫ぶ智がもう見えない。
呪文の最後は・・・
『仮りそめの姿捨て、敵を滅ぼす力と成れ、疾く疾く来れ・・・魔剣・シェイラよ!』
くっそぉおぉっ!そんな意味なんて知りたくないんだよぉっ!
やがて・・・輝きが消え・・・うっすらと紫の煙が立ち登る。
そこにはもう智はいない。
ただ・・・銀色に輝く一振りの巨大な剣があるだけだった。

「てめえ・・・何しやがったぁ!?」
野郎の胸ぐらをひっ掴んで怒鳴る。
「説明は後です!早く剣をとって!」
「知るかぁっ!早く智を元に戻せ!」
「アイツらを片付けるのが先です!急いで、もうそこまで来てます!」
ガッション!
「くそっ・・・もし戻せなかったら、この剣でてめえもブッ殺す!」
「このままじゃその前にヤツらに捕まりますよ!早く!」
確かに・・・もう目と鼻の先まで来てやがる。
むかっ腹は立つが・・・やるっきゃないのか!?
剣は支えもないのにまっすぐ刃を下にしてつっ立っている。
確かにこれで武器は手に入ったかもしんないけど・・・
今まで智と過ごしてきたいろんな思い出が頭をよぎる。
出会って、つきあいはじめて、初めての夜を過ごして、一緒に暮らすようになって・・・
やりきれない気持ちのまま、剣に手を伸ばす。
ぱし、と柄を握ると・・・
「うお!?」
熱い!いや、違う!なんか・・・剣から・・・アタシの中に流れ込んでくる!?
手を離そうにも吸いついちまったみたいで離れやしないぞコレ!?
「おいっ、どうなってんだよっ!?」
「それが貴方の本来の『力』なんです!魔剣士・ドレイクの!」
スゴイ・・・体中に力がみなぎるみたいだ・・・
アタシの肩ぐらいまであるバカでかい剣が何の苦もなく持ちあがる。
ちょっと振ってみる。
ヒュン!風を切る音が鋭い。まるで小枝を振るように軽い。
いや、剣が軽いんじゃない・・・
アタシにとんでもないパワーがついちまったんだ!
なぁ〜るほど・・・たしかにこれなら・・・
(やほー、祥ちゃーん♪)
突然頭の中に声が・・・智!?
「智!?アンタ今どうなってんの!?」
(うーん・・・よくわかんない。幽体離脱みたいなカンジ?)
「どこにいるのさ!?」
(祥ちゃんのすぐ後にいるよー♪早くアイツらやっつけちゃってよ)
無事・・・なのかなぁ?まあ存在を確認できてホッとした。
しかし・・・意外に順応が早いなアイツ。
まあ、思ったほど心配ないのかもしれない。
「オーケェイ!」
鎧野郎に向き直る。ニヤリ。思わず笑みが漏れる。
「今までよくもさんざん追いかけまわしてくれたなぁ・・・てめぇら・・・覚悟はいいんだろうな!?」
ジャキン!剣を構える。
「ドレイク!シェイラが剣化していられるのは3分だけです!早く!」
「・・・なにぃ!?3分だけぇ!?」
「こちらの世界で今の私じゃそれぐらいが限界なんですぅ!」
ちぇ・・・いたぶってからぶっ壊すつもりだったんだけどなー。
3分しかないんじゃパッパッと片付けるか・・・
ったくぅ・・・アタシゃM78星雲の人かぁ!?

剣を手にした途端、それまでただ進んできた鎧野郎が
歩みを止めいっちょまえに構えを取る。
「お?」
「多分、貴方がパワーアップしたのを感知したんでしょう。警戒モードに入ったようです」
「へっ・・・遅いんだよぉっ!」
大きく振りかぶって上段に構え
「行ぃっくぞぉ〜っ!」
「ちょっと待ってドレイク!!」
う、うわたたた・・・とっとぉ!
「せっかくいいトコだったのになんだよ今度は!?」
「全部壊しちゃダメですよ!」
「ああ!?何言ってんだよ、さっきはコイツらぶっ壊すって・・・」
「肩の上のアンテナみたいなものがありますね」
「・・・ああ、なんかあるけど・・・それが何よ?」
「そのアンテナだけ壊してください」
「え〜!?・・・面倒くせえな。あの辺まとめてぶっ飛ばすんじゃダメ?」
「とにかくやってみてください!・・・後2分!」
「ちぇ・・・しゃあねえ、やってみっか・・・うらぁっ!」
ヒュ!ギィン!
「お、いっちょまえに受けやがったな?・・・なら・・・コレでどうだぁっ!?」
シュ!キン!ヒュン!ガギ!
くそ・・・肩しか狙えないから受けるのも簡単ってか?
ブォン!
「ぅおっとぉ!」
ち・・・まごまごしてっともう1体が攻撃してきやがる。
ヒュ!ギン!ブン!ザッ!ヒュン!ガギン!ブゥン!・・・
「ドレイク!もうあまり時間がありません!シェイラが戻ってしまう前に・・・!」
簡単に言ってくれるぜ!?こっちは隙をうかがいながら・・・
ブン!ブォン!ブゥン!
「こっの・・・調子に乗りやがって雑魚スケがぁっ!!」
ヒュヒュン!ギギィン!
・・・・・・・・・
「あ〜〜〜〜〜っ!!面倒くせええっ!!もうアッタマきた!アンテナもクソもあるかぁっ!」
・・・ブゥ・・ン・・・ブゥ・・ン・・・
アタシの怒りに呼応してなのか剣が唸りをあげ始める。
「ドレイク!?それ使っちゃダメです!」
「知るかぁっ!!」
バン!
地面を蹴って鎧野郎の頭上を飛び越える!
ズシャ!背後に飛び降りると振り向きざま
「とっとと消えろこの・・・木偶人形ォッ!!」
シュバァッ!!
横なぎに振りぬいた剣の先から『何か』がほとばしる!
ドッガァン!!
剣が放った衝撃破・・・ってのか?で舞い上がった土煙が晴れ
辺りの様子が見えてくる。
鎧野郎はどうやら跡形もなく吹っ飛んじまったらしい。
小さな部品みたいなのがバラバラに散らばっているだけだ。
ヘッ、ザマァ見やがれっ♪
さらに土煙が晴れて・・・・
げ。
木偶だけじゃない、ヤツラの後にあったフェンス、その後の岩肌にまで
どでかい穴が開いちまってる!
これって・・・アタシがやったのか?
「ドレイク!結界が解けます!・・・シェイラの術も!」
「え」
がやがやがや・・・
「うわっ!?」
いきなり回りに現れた人、人、人・・・
『あれ!?なんでこんなでっけえ穴が開いてんだ?』
『うわ、すっげえ・・・』
・・・ヤバイ。結界が解けて皆のいる世界に戻ったらしいぞ・・・
ポン!
「おわ!?」
今度はコルクの栓が抜けるような音とともに手の中の剣が消える。
代わりに、最初に剣が現れた場所に人影が一つ出現する。
智だった。
ただし、全裸。
「ほえ?」
「う、うわ!?」
「あれ、祥ちゃん?もう終わったの・・・って・・・」
・・・・・・・
「っ・・・きゃぁあぁ〜〜〜っ!?!?」
ああああああ・・・
『お、おい、見ろよアレ!?』
『ぶっ!?な、な、は、裸ぁ!?』
智はしゃがみこんでキャアキャア叫んでる。
叫んじゃうから余計周囲に注目されてるぞ・・・
「だからアンテナだけにしてくださいって言ったのに」
「わかった!アタシが悪かったから・・・なんとかしてやってくれ!」
「はいはい・・・いつも私は貴方の尻拭いですから・・・」

笹本クンが「姿の見えなくなる魔法」をかけて(便利なヤツかもしんない)
アタシ達は目の前のサークル棟に駆けこんでいた。
半べその智にはアタシのジャケットを着せているが
下半身はすっぽんぽんのままだ。
急いでアタシの所属する軽音楽部の部室へ向かう。
(いや、所属するっていってもなんにもしてないけどさ)
ギィィ〜・・・
「・・・よかった、誰もいない・・・入って」
ロッカーから着替えに放りこんであったTシャツとホットパンツを智に渡す。
「ぶかぶか〜・・・」
「しょうがないだろ、アタシの着替えなんだから」
「うう・・・スースーするよぅ」
「う〜ん・・・しゃがんだりかがみこんだりはしないほうが良さそうね」
見えてしまうだろう。イロイロと。
「ところで・・・さっきから気になってるんだけど、ドレイクとかシェイラって・・・誰?」
「あー・・・説明は、任せたからね」
それから笹本クン(誰がマギーなんて呼んでやるもんか)が
アタシ達に色々と説明を始めた。
いくつかはさっきアタシも聞いた内容だったけど・・・
「いいっ!?まだ追っ手が来るのぉ!?」
「ええ、グラールでは送りこんだ魔導人形が結界展開の後破壊された事を確認したはずです」
「・・・それであきらめないかな・・・」
「冗談でしょ?貴方が向こうで何をしてきたか・・・は覚えてないんでしたっけ」
「じゃ・・・この先、どうなるわけ?」
「さらに強力な追っ手が来るでしょうねぇ・・・」
「またあんなのが来るのかよ!?」
「またアタシ裸になっちゃうのぉ!?」
「いや、それはいいんだが」
「よくないわよっ!」
「ってことは・・・アタシら当分3人でいなきゃマズイか・・・」
「ええ〜!?」
「そうですね・・・3人揃っていないと追っ手に対抗できませんから・・・」
笹本クンが智を剣に変え、その剣をアタシが手にすることで超人的なパワーを得る。
そのためには、3人が揃ってなきゃダメってわけだ。
「智・・・しばらく我慢してコイツと一緒にいるしかないよ」
「今藤岡さんと星野さんは一緒に住んでますよね。私もそこに住むわけには・・・」
「ダメに決まってんだろ!そんな広くないんだよアタシんトコは!」
「祥ちゃん、広いとか狭いの問題じゃないと思う・・・」
「そうだ!隣の部屋なら開いてるよ確か。大家に聞いてみる?」
「そうですね、隣部屋ぐらいの距離なら大丈夫でしょうし・・・お願いしましょうか」
「で、次はアイツらいつ来るんだよ?」
「そこまではわかりませんね・・・」
「いきなり結界とかに引きずりこまれたり放りだされたりじゃたまんないなぁ」
「だからさっき魔導人形壊しちゃダメって言ったんですよぅ」
「・・・さっきも気になったんだけど、なんでよ?」
「あのアンテナ状の物が烙印の魔力に対するセンサーだったんですよ」
「・・・だから、なに?」
「アンテナだけ壊して、一時的に彼等の動きを止めればよかったんです」
「なんだよ、そんだけで止まったのかアレ!?」
「動きが止まったら私が呪法印を書きかえて、彼等をずっと『捜索モード』にしておくつもりだったのに」
「ひょっとして・・・やり過ぎた?」
「彼等が『捜索モード』で存在している間は、次の追っ手も来ないでしょうから安全だったのになあ」
「じゃ、何か・・・アタシがアレぶっ壊しちまったから・・・次の追っ手が来るワケ!?」
「そういうことですねぇ・・・」
「そういうコト、って・・・先に言えよぉ〜!?」

その頃。
校舎の外れに突然出現した大穴の前に
全裸の女が現れて消えたという噂が学校中に広まっているのを
アタシ達はまだ知らなかった。
そして
この「白昼現れる全裸美少女の幽霊」(良かったな智、美少女だってよ)は
その後もしばしば見かけられることになる・・・かもしんない。
「そんなのイヤァ〜!?」(By 星野 智美)

〜おしまい〜

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