Rebirth・Reverse

第三話

ドカン!ガンガン!ガィン!ズドン!
・・・別に道路工事をしているわけではない。
例のデカイのが廊下の防火扉をぶっ叩いているのだ。
曲がり角からこっそり様子をうかがうアタシ達だ。
「・・・あの向こうにいるみたいですね」
「参ったな・・・」
「3人揃えば、なんとかできるんですけど・・・」
「どうすんのさ?」
「シェイラは私の使い魔ですけど、ドレイクの力にもなるんですよ」
「ふ〜ん・・・ま、どっちにしてもあそこから連れだせなきゃ意味ないわけね」
2階の廊下の端、後は小さな教室が一つあるだけの所で防火扉は閉じている。
追いこまれた智が閉じたに違いない。
防火扉は分厚い鉄板でできてるからそう簡単には破られないだろうが
問題は、アタシ達も向こう側に行けないということだ。
「なぁんでこんなドン詰まりに逃げ込むかな〜」
人のことは言えないが。
「どうします、ドレイク?」
「・・・あのさ」
「なんでしょう?」
「アタシは、藤岡祥子!ドレイクなんて呼ぶんじゃないよ!」
「でも・・・」
「でももクソもない!今度ドレイクなんて呼んだら承知しないからね!」
「じゃ・・・せめて私のことはマギーって呼んでください」
「マギー?」
「モルギニアじゃ長いからって貴方がつけたあだ名です♪」
「・・・それはそうと笹本クン」
「マギーですってば」
「アイツらってずっと動いてるモンなの?途中で燃料切れとかにならないかな?」
「それは期待できませんね・・・彼等の動力は半永久的なものです。壊れるまで動きますよ」
「ちぇ・・・じゃ、アタシと笹本クンでぶっ壊すしかないか・・・」
「・・・マギーです、って言ってるのに・・・」
不満そうな「笹本クン」は無視して、戦力を比較してみる。

アタシ達は・・・
天才美少女剣士(元)。獲物は転がってた鉄パイプ、防具なし。HPはそれなり。
魔女・・・もとい、オカ魔女。ちょっとだけ魔法が使えるらしい。HPは・・・低そうだなぁ。

アチラ側は・・・
疲れを知らない魔導人形2体。頑丈そうな鎧にばかデカイ剣を装備。HPムチャクチャ高そう。

・・・ダメじゃん。

「まともにヤってもなぁ・・・」
「シェイラが扉の向こう側にいるのが問題ですね」
ガゴン!ガシガシ!ドガン!
あー、うっせえ!考え事してんだからちょっと静かにしろってんだ!
しかしそんなこちらの事情はお構いナシにヤツラはひたすら扉を叩いている。
ゴキン!ガキン!ドンドン!バァン!
・・・そういや最初にトイレの窓を通るときもただひたすら力押しに進もうとしてたな。
「・・・アイツら、ひょっとして頭悪い?」
「えーと、たぶん単純な呪法印しか組みこんでないんでしょう」
「・・・つまり、バカなんだな?」
「まあ、そうも言えます」
「なるほど・・・コッチが有利な点が一つあったわけだ」
フッフッフ。相手の弱点につけこむのは得意なのよ♪
「何か作戦でも?」
「ヤツラはアタシ達の烙印に反応して追いかけてくるんだよな?」
「そうです」
「で、今は一番近い智の烙印に反応して、智を追い詰めてる」
「そうですね」
「ってことは、もっと近くに別の烙印の反応があったらどうよ?」
「・・・なるほど!貴方がオトリになってヤツラを引きつけるんですね?」
「違〜う。オトリは、ア・ン・タ」
一瞬キョトンとしてから彼が猛抗議。
「・・・え?・・・ええ〜っ!?む、無理ですよぉっ!」
「あのさ、あの防火扉って向こう側からしか開け閉めできないんだわ」
「それが何の関係があるんですか!?」
「ヤツラをおびき出した後、アンタの言うこと聞いて智が扉を開けると思う?」
「う・・・」
「納得?」
突然情けない顔になっておろおろし始める。
「私、足遅いんですよぉ〜・・・」
「さっき追いかけてきた時の様子じゃ、まず追いつかれることはなさそうだけどね」
ガゴン!ゴキ!ビキ!バキキ!
「ヤバ・・・扉が壊れかけてる!いい!?アタシ3階に行くから、そしたらヤツラを引きつけて!」
「は〜い・・・その後はどうするんですか・・・」
「人気のないトコがいいな・・・サークル棟わかる?」
「はい・・・多分」
「そこの裏で待ってる。上手く逃げな!」
「うう・・・怖いです〜」
「しっかりしろよ、男だろ!?」
「中身は女なんですってば・・・」

急いで3階に上がり、階下の様子に耳を澄ませる。
『えーと・・・こっちですよ〜・・・って、うわぁ!?』
ドタドタドタ・・・・ガッションガッションガッションガッション・・・・
ドタドタは笹本クンで、ガッションガッションは鎧人形だろう。
・・・どっちも足遅そうだなぁ。
通りすぎてしばらくたった頃を見計らって下に降り
少しひん曲がった防火扉に近寄る。
・・・もう少し遅かったらヤバかった・・・
「智!聞こえる!?アタシだよ、祥子だ!」
『祥ちゃん!?』
「ヤツラもういないからここ開けて!」
『わ、わかったよ!』
ギ・・ギギギ・・・ギ・・・
きしんだ音をたててゆっくりと扉が開く。
「祥ちゃん!!」
扉が全部開ききる前に、智がアタシに飛びついてきた。
「よかった、無事みたいだね」
「なんなのあれどうなってんのなんでだれもいないのどうすればいいの助けて〜!!」
パニクってる。・・・ま、当たり前か。
とりあえず、落ち着かせるためにそっと抱きしめる。
・・・映画とかだとビンタを食らわせるケースなんかもあったっけ、と思ったが
後が怖いのでここは優しく抱擁だ。むぎゅ。
「大丈夫・・・アタシがついてるから。もう大丈夫よ・・・」
「うっ・・・ふぇ・・・えっ・・・ひっく・・・」
アタシの胸にしがみついて、ひとしきりしゃくりあげてから智が大声で泣く。
その頭を撫でながら、時折優しい言葉をかけてしばらく時間が過ぎた。
もう・・・そろそろ行かなければならない。
いくらアイツらの足が遅くてもいいかげんサークル棟につく頃だ。
いきなり現れて前世での相棒と名乗った怪しげなヤツだが
放っておくわけにもいかない。
・・・ちょっとだけ放っておこうかとも思ったが。
「智・・・もう落ち着いた?」
まだ少ししゃくりあげている智の体を少し引き離しその目を見つめる。
「・・・う・・・ん」
「あのね、詳しい話は後でするけど・・・アタシ、アイツらをやっつけなきゃなんないの」
「え・・・む、無理だよそんなの!早く逃げようよ!」
「逃げられないのよ。いくら逃げてもヤツラ追いかけてくる・・・やっつけるしかないの」
「だって、あんなのどうやって・・・!?」
「それでね・・・アタシもよくわかんないんだけど、アイツらやっつけるのに智の力がいるんだ」
「へ・・・アタシぃ!?」
「そう。アタシと、アンタと、もう一人・・・3人で力を合わせればヤツラを倒せる・・・らしいの」
「・・・もう一人って?」
ここで『もう一人はあのストーカー野郎だよ』と言うと全部おじゃんになりそうなので
「・・・行けばわかるよ。サークル棟の裏で待ってるはずなんだ・・・来てくれる?」
「・・・怖いけど・・・行きたくないけど・・・祥ちゃんは行くんだよね?」
「そうねぇ・・・行ってやんないとなんないだろうね」
「じゃあ、行く」
「いい子ね・・・じゃ、急ぐよ!」
「あ、ちょ、ちょっと待って!」
「何?早くしないと・・・」
「キスして♪」
「はぁ!?何言ってんだいこの非常時にぃ!?」
「キ・ス。こういう場面だと、お約束じゃない?」
そう言うと、ん、と顔をつき出して目を閉じてやがる。
あ〜〜〜〜っ、この・・・切羽詰まってんのにぃ!
ガバ!ブチュ!
「んんっ!?・・・ん♪」
ズニュル!レロレロレロモニュモニュレロンチュチュレロレロモニュンチュチュレロレロ・・・・
(何、擬音じゃなくて状況をちゃんと説明しろ?バカタレィ!)
プハ!
「気ぃ済んだぁ!?」
「・・・ほえ〜・・・♪」
「この・・・!へたりこんでんじゃな〜い!」

智を引きずるようにサークル棟裏手に走る。
途中で出くわさないか心配だったが何事もなく目的の場所までたどり着く。
そこには・・・!
「・・・誰もいないね」
「・・・あっ・・・のバカがぁ!まさか途中で捕まったんじゃないだろうな!?」
いくらなんだってまだ着かないなんてハズは・・・
『ドレ〜イク!!』
ぎょ!?アイツの声が・・・上からぁ!?
見上げると・・・2階建てのサークル棟の屋上にアイツはいた。
『逃げまわってたらこんなとこ出ちゃいました〜!』
情けない声でアイツが呼ぶ。
「バカ、何やってんだぁ!さっさと降りてきな!」
『もう追い詰められちゃいました〜!助けてくださ〜い!』
時々後を気にする仕草からすると、結構ヤバイ状況らしい。
やれやれ・・・
「あ、アイツってば例のストーカー!?」
「あー・・・説明は後でするけど、アイツはストーカーじゃなかったんだよ」
いや、ストーカーかもしんないけど、だとしても『良いストーカー』の人らしい。
そんなものがいればだけど。
「そうなの・・・?」
「そう。この状況からアタシ達を救ってくれるもう一人の仲間・・・のはず」
『早く助けに来てくださ〜い!』
「そうは・・・見えないよ?」
「う〜ん・・・とにかく、アイツと力を合わせなきゃなんない・・・らしいんだ」
・・・ちょっと自信なくなってきたなぁ。
とにかく3人揃わないとダメらしい。
といってまたあの鎧野郎と追いかけっこするのもゴメンだし・・・
「まだるっこしいこと言ってないで、飛び降りちまいな!」
『無理で〜す!』
「無理じゃない、そこからなら上手くすれば足を折るぐらいで済む!」
・・・・・・・・・
『絶対イヤです〜!』
間違えた。下手をしても、と言うべきだった。
ええい、面倒なヤツ!
「そこにいたら確実におっ死ぬよ!」
『ううう〜・・・』
「なんか・・・だらしない男の子だねー」
「中身はアンタと同じだからね」
「?」
「ほら、早くしなよ!アタシが受け止めてやるから!」
『ホントーですかぁ!?』
もちろん、ウソだ。いくらアタシでも2階の上から飛び降りてくる人間は受け止められない。
んなコトしたらアタシまで怪我しちゃうじゃないの。
しかし、ウソも方便(便利な言葉だ)ってわけで
「ああ、しっかり受け止めてやるから早く飛び降りな!」
・・・受け止めてやらなくてもまあ死にゃしないだろ。
足を折るぐらいはするかもしれないけど。
ドカン!
アイツの後からデカイ音が聞こえる。
『わあ、来ちゃった!?』
「手遅れになるよ、早く!」
こうなると冗談も言ってられない。
『い・・・行きま〜す!って・・・あわわわ!?』
フェンスを乗り越えたアイツがぐらりと態勢を崩し・・・
落ちる!
アタシは知らずに落下地点に走っていた。
「おりゃぁああっ!」
ズシン!ドテドテッ!
「・・・ッ・・・!」
「いっ・・・痛ぁ〜・・・」
飛び降りたアイツを、マジでアタシは受け止め
二人して地面に倒れこんでいた。
痛・・・くそっ、頭打ったぞ・・・!
・・・なんでこんなことしたんだアタシは!?
「だっ・・・大丈夫!?」
智が走ってくる。
足・・・首・・・腕・・・とりあえず、全部動く。OK、OK。
「普通はさぁ・・・こう言う場面って、女の人が飛び降りるのを男の人が受け止めるんだよね」
智が屋上を見上げてぼそっと感想を言う。
いや、まったくだ。
上にのしかかってる笹本クンを押しのけながら
「こら、いつまで抱きついてんだよ!どこか怪我したのか?」
「あ、すいません・・・どこも、怪我はないみたいです。ありがとう、ドレイク♪」
「あー・・・飛び降りろって言ったのはアタシだからね。ところで・・・」
立ちあがったアイツの肩にポン、と手を置く。
「なんですか?」
「ドレイク、って呼ぶのは止めてくれ」

〜続く〜

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