Rebirth・Reverse
第一話
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「ふぁ〜・・・あふ・・・」
夜ふかしが過ぎただろうか。
バス停に向かって歩いている間も
暖かい陽気につられて、ついあくびが出てしまう。
ああ、1限の講義なんか取るんじゃなかった・・・
「まぁ〜た道の真中で大口開けてあくびなんかしてぇ」
アタシの肩の下あたりから聞こえる声に視線を向けると
隣を歩いてる女の子が眉をひそめていた。
「一緒に歩いてるアタシが恥ずかしいわよ、もう」
「へーへー。どーせアタシャ智美みたいにおしとやかじゃないですよ」
「お化粧だってろくにしないし・・・」
「そんな金もヒマも必要もない」
「はぁ・・・も少しさあ、女らしくしてもいいんじゃないの?元はいいんだし」
「おや、アタシに女らしくなってほしいわけ?」
「ってゆーか、なんか最近オヤジっぽいし」
「悪かったね。そのオヤジっぽい女に1年間ラブレター送り続けてたのは誰だっけ?」
「あの頃はこんなオヤジっぽくなかったもん」
「そっかぁ?」
ぼりぼり・・・
「そーやってお尻かいたりしないでー!」
あー、うっせぇ。
同棲生活ってのもけっこー大変だわ・・・
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アタシ、藤岡祥子。都内の大学の2年生。
身長177センチ、体重・・・まあ、そこそこ・・・追求すんじゃねーよ。
スリーサイズも自信はあるけど一応内緒・・・だから、追求すんなって。
ま、自慢じゃないけどこの美貌(笑うな)と体格と男っぽい性格で
中学ぐらいから言い寄ってくるのは
先輩後輩同級生み〜んな同性=女。
アタシ自身も男に興味がなかったからちょうどいいんだけどね。
ガキの頃から好きになるのは女の子ばっかりなんだから。
更衣室で一緒に着替えてる女の子の裸見て興奮してるのに気づいたときは
それなりに悩んで小さな胸をいためたモンよ。
ま、中2の時に開き直ってからは
来るものは拒まずで食いまくったけどな。
で、隣を歩いてるちっこくてこうるさいのは星野智美。
Tシャツにジーンズの上下というボーイッシュなアタシとは対照的に
いかにも少女趣味な服を着てる。
ちょっと見たところ中学生ぐらいにも見えるけどアタシと同い年だ。
高校1年の時に同級生として知り合ってからずっとつるんできて
一緒に田舎から出てきて同じ大学に通ってて
去年の夏からは一緒に暮らしてる。
・・・まあ、そういう関係なわけ。
ダチにするなら男のほうが気が楽でいいんだけど
遺伝子的にはアタシはやっぱり女なわけで
こっちがダチのつもりでも、いつの間にか
相手が「その気」になっちゃうこともあって
けっこうつらい思いしたこともある。
でも「いっそ男に生まれればよかった」とは思わない。
アタシは今のアタシがそれなりに気に入ってて
変える気はこれっぽちもなかった。
この日まではね。
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「ねえ、祥ちゃん・・・またアイツいるよ」
智美が歩きながらジャケットの袖を引っ張り小声で話しかけてくる。
なるべく首を動かさないで目で辺りを見まわすと
あ〜・・・いるいる。
キャンパスの建物の窓ガラスに写るその姿は
最近アタシらの周りに出没するストーカー野郎。
朝夕行き帰りの道に、買い物の途中に
ここ数日いつも後からつけてくる男。
とうとう大学ん中まで追っかけて来やがったか。
年は同じくらいかな。タッパもアタシと同じくらい。
ただし、アタシよりかひょろひょろした感じ。
わりときちんとした服装に、インテリっぽい眼鏡。
ストーカーって感じじゃないんだけどなぁ。
しかしこうして校舎の中にまで追いかけてくるとなると・・・
ん?・・・待てよ・・・
「そもそも、アイツはどっちを追いかけてんだ?アタシか?智か?」
「え〜、狙われてるの祥ちゃんだよぅ」
「だって、アタシらずっとつるんでるわけだからさ。どっちが目当てかわかんないよ?」
「そんなのわかんなくていいもん」
「いや、ず〜っといつも一緒にいる訳じゃないんだからさ。狙いがどっちか確かめてみたほうが」
「やだ。どっちが狙われてても、ヤ」
「・・・もし智が狙われてるんなら、アタシそれなりに考えなきゃなんないからさ」
「う〜・・・」
ちっとばかし口うるさくて生意気でドジで抜けてておっちょこちょいでやきもち焼きで・・・
「・・・今、なんか失礼なこと考えてない?」
「いや、別に」
そのくせ妙に勘のいいところがあって浮気もろくにできないけど
智美はアタシにとっては一応大事なヤツなので
妙な野郎にくれてやるわけにはいかない。
校舎の廊下を歩きながら、そっと囁く。
「いい?次の角、智は右に曲がって。アイツがついてくようなら、アタシがすぐ追いつく」
「やだ・・・一人にしないで・・・」
すがるような潤んだ瞳でアタシを見上げる智美。
きゅん、と胸が締め付けられる。うう、可愛いヤツ・・・
しかしここは心を鬼にする。
「大丈夫、ちゃんと守るから・・・さ、気を確かに。走ったりしちゃダメよ」
「う、うん・・・」
智美が道を曲がる。
ゆっくりと歩きながら背後の様子を探る。
ストーカー野郎が角を曲が・・・らない。
おやぁ?
そのままアタシの後をついてくる。
・・・ヤバイじゃん。
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どうやら狙われてるのはアタシだったらしい。
男に追いかけられるなんて久しぶり・・・
って、それどこじゃないだろ!
ああ、いかん落ち着け、アタシ。
はい、深呼吸〜・・・
ふう。
しかし・・・どーすっかねコレ。
話しかけてみるか・・・
『ねえ、アンタなんでアタシにつきまとってるわけ?』
いやいや、それはなんかマズイような。
それをきっかけにさらにつきまとわれる可能性だってあるし。
だいたいマジでストーカーなのかはっきりしてないんだよね。
たまたま同じ道を歩くことが重なっただけって可能性も・・・
・・・・・・お?
その可能性はかなり低くなった。
この先は行き止まりで女子トイレしかないんだから。
・・・って、ますますヤバイじゃん!
と、とりあえずトイレに退避!
トイレに飛びこんで、ちょっと落ち着く。
さて、他の出口から・・・出る・・・
ねえよ、そんなモン!フツートイレってのは出入り口は一箇所しかねーんだよ!
どーすんだよこんな人気のないドン詰まりのトイレに入って!
藤岡祥子一生の不覚ってヤツか?
ああ、なんだかますますヤバイ状況なのかも・・・
まあ、さすがにトイレの中までは追ってこない。
・・・今のところは。
ってゆーか、中まで追いかけてきたらヤバ過ぎ。
そんときゃ問答無用でぶちのめすんだけどね。
アタシは落ち着いて考えを整理する。
まず、ヤツはアタシを追いかけてる。
これはどうやら間違いない。
ただ、一体どんな用があるのかがわかんない。
ヤツがアタシを追っている理由とその対応をいくつか考えてみる。
1・ヤバイ理由
・・・なんだよ、ヤバイって。
ま、そうだったら出ていってぶっとばす。
2・それほどヤバくないがイヤな理由
「アナタは今の生活に満足していますか?」とか
「私と一緒に人生の幸福について考え直してみませんか?」とか
そーゆーヤツだ。
・・・じゅうぶんヤバイよ、コレ。
この場合も出ていってぶっと・・・ばすのはマズイか。
しょうがない、この場合は耳をふさぎながら走って逃げる。
3・実は知ってるヤツでアタシが忘れてるだけ。
・・・ありえるなー。
ちらりとしか見ていない顔を思いだしながら
過去の記憶を探っていく。
そう言えば・・・
知ってるような気もするけど・・・
思いだせない。
アタシ人の顔覚えるの苦手だからなー。
もし知ってるヤツだったら悪いよなぁ・・・
どうしよう・・・
ええい!迷っていてもしょうがない!当たって砕けろだ!
いや・・・砕けるのはちょっとアレだけど、まあとにかく当たっちまえ!
ケース1に備え、清掃道具置き場からモップを取りだすと
びゅ!
横なぎに振ってみる。
ま、こんなもんか・・・
こう見えてもガキの頃からじーちゃんに鍛えられて
「天才美少女剣士」なんて言われてたこともあるのだ。
一度キレて相手をぶちのめしちまって
じーちゃんにこっぴどく叱られてやめちまったけど
今でもそんじょそこらの野郎に遅れはとらない。
落とした女の数よりも病院送りにした野郎の数のほうが多いぐらいだ。
・・・いや、数えてないからわかんないけども。
さて、武装完了!ってところで・・・
ズドォン!!
「おわあぁっ!?」
いきなり窓の外でデカイ音。
あーもう!・・・今度は一体なんなんだよ!?
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「げ!?」
振り向いて窓の外を見てまた驚いた。
砂ぼこりが立つ校舎裏に妙なカッコした野郎が二人。
・・・なんだ、ありゃ?コスプレってヤツ?
デカイ体に鎧・・・みたいなのを着て、手にはでっかい刀・・・だよな・・・を持ってる。
あー、ゲームとかに出てくるような感じだな・・・ってコッチ来るぞオイ!?
「は・・・は〜い♪こ、ここ女子トイレなんだけどぉ・・・何か用?」
「・・・目標発見・・・結界展開・・・」
「は?・・・」
「捕獲開始・・・捕獲開始」
バン!
今度はドア。
・・・あー、ドアの外のストーカー(?)野郎を忘れてた。
って、いきなりこの乙女の聖域に入ってきやがったな!
「あ、テメー!ここは女性用だぞコラァ!?」
ストーカー(?)野郎はそんなアタシの抗議は聞いちゃいない。
「逃げるんです!早く!」
ガシャァン!ドガン!
今度はまた窓。
振りかえればさっきのデカ鎧野郎が窓ぶっ壊して入ってこようとしてやがる!
「何してるんですか、早く!コッチへ!」
ホンの一瞬考える。
かたや鎧に身を固めてデカイ刀を振りまわしながら
「捕獲開始」とか言って迫る二人の大男。
かたやひょろひょろで獲物も持たないのが一人。
どっちから先に逃げるべきか?
「言われなくたって逃げるわよ!」
「早く!コッチです!」
幸い、デカ野郎どもはその巨体が災いして
窓をくぐりぬけるのに苦労している。
ドアを蹴り飛ばして超ダッシュで逃げる!
「別にアンタと一緒に行くってわけじゃないからね!」
「私だって逃げてるんです!」
「だったら別のほうに逃げなさいよ!」
「一本道なんだからしょうがないじゃないですか!」
「だったら踏みとどまって戦いなさいよ!男でしょ!?」
「無茶言わないでくださーい!」
走りながらアタシは思ったね。
なんで!?なんでアタシが・・・
「ああ〜、何で私がこんな目にぃ〜!」
「そ・れ・は・アタシのセリフだあぁ〜っ!」
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〜続く〜