第七日 「伝説の男」
前編
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「なんだよ、急に呼び出したりして。これでも忙しい身なんだぜ」
「おや?マディ、今何か踏んでるヤマがあったっけ?」
「・・・ちぇ、お見通しか」
「へっ、このトニオさんの情報網を見くびってもらっちゃ困るね」
確かに今は何も当てがない。ま、その当てってヤツを探しるんで
まるっきりヒマってワケでもないんだが。
「水臭いじゃねえか、仕事に困ってるんならなんでオレに言ってこねえ?」
「・・・つまり、何かあるんだな?」
「ああ、お前サンご指名のヤツがな」
「指名?」
「オマエ、ZEROって知ってるか?」
「トニオ・・・オレのこと馬鹿にしてない?」
知らない訳がない。この業界でZEROっていやあ、ちょっとした伝説みたいな存在だ。
開けられない金庫はない、と言われた凄腕の金庫破り。
後には証拠も金も残さない。仲間がいるのかどうかもわからない。誰も正体を知らない。
ついた通り名がMr.ZERO。
誰がやったのかわからないでかいヤマは
誰言うともなくZEROの仕事だって噂になったもんだ。
その存在自体が怪しまれるコトもあったっけ。
そういった意味じゃ、確かに伝説みたいなもんだ。
「・・・知ってるならいい。そのZEROから助っ人の依頼があったんだ」
「・・・やっぱオレを馬鹿にしてんだろ?」
「なんで?」
「だって・・・そんなワケねえだろ!あのZEROがオマエに繋ぎを?助っ人を依頼?」
「言っただろ?見くびってもらっちゃ困るって」
トニオは自信たっぷりだ。
「オイ・・・マジかよ・・・け、けどよ・・・」
「まだ何かあんのか?」
「オマエに繋ぎ取ってきたのが、本物のZEROって証拠はあるのかよ?」
「ああ、そりゃ間違いねえ・・・オレは昔ZEROと組んでたんだからな」
「はい?」
「8年前かな、最後の仕事は。覚えてるかな、ホッジス銀行のさ・・・」
呆然。トニオが昔は自分でも仕事をしてたってのは聞いてたけど・・・
その仲間があの・・・Mr.ZEROだって!?
「おい、どうすんだい?受けるのか受けねえのか?」
馬鹿みたいに口をパクパクさせながら、オレは首を上下に振っていた。
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「信じらんないなぁ・・・あのトニオがねぇ・・・」
ジョーがため息をもらしながら肩をすくめる。
「えっと・・・そんなにそのMr.ZEROってスゴイ人なワケ?」
K.Mは知らなくてもしょうがねえか。最後の仕事が8年前じゃな。
「ヤツがやったって言われてる仕事の総額、いくらぐらいだと思う?」
「ん〜・・・100万ぐらい?」
「桁が違うぜ、K.M。30年でざっと7000万ドルって話だ」
「な、7000万!?」
「7万ドルアタシに返すのにヒーヒー言ってる誰かサンとは大違いね」
「ちゃかすなよメリル。これでオマエへの借金は返せそうなんだぜ?」
「そうね・・・話じゃZEROの仕事はどれも最低50万は越えてたってコトだし・・・」
「だろ?インフレ考えりゃ100万・・・いや、もっとでかいヤマかもしれねえ」
「ふわ〜・・・100万の仕事として一人頭20万か・・・あ〜、どーしよアタシ!」
「・・・捕らぬ狸の皮算用って知ってる?」
「なによう、K.Mぅ。もちょっとヤル気だしなさいよね」
「ちょっと引っかかるのよね」
「ナニが?」
「疑問その1。30年現役で、今から8年前が最後の仕事。ZEROって今何歳なの?」
「え・・・?」
「ふつうに考えればもう60歳ぐらいよね。もっといってるかも」
「・・・まあ、それぐらいまで現役のヤツなら珍しくはねえよ。バートンの爺様とか」
「疑問その2。7000万稼いで、その後8年も音沙汰なしだったんだよね?」
「そうだけど?」
「なんで今さら復帰するの?」
「そういや妙よね。仲間がいるとしても、ZERO一人の取り分だって1000万はありそうなのに・・・」
「・・・すごい浪費家とか?」
「ジョーだってそんなに無駄遣いしないわよ」
「そんなにひどくないわよう」
確かにK.Mの疑問はイチイチもっともだ。だが、そうだとすると・・・
「じゃあ、この仕事・・・ガセ?」
「待てよ、だとすると・・・トニオもオレにかまそうとしてるってのか?」
「そこまではわからないよ。アタシが言いたいのは・・・浮かれてると、足下すくわれるってコト」
「メリル」
「なに?」
「オマエどう思う?」
「どうって?」
「K.Mの言ったコト・・・やっぱガセだと思うか?」
「・・・アンタらしくないよ、マディ。金庫の中身は・・・
「・・・開けて見りゃわかる、か」
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とにかくZERO本人に会ってから、というわけで
メリルとジョーを連れて指定された場所に向かう。
「なぁんでアタシは連れてってくんないのよぉ!」
「しょーがねーだろ!オマエは連れてけねーって!」
待ち合わせがストリップ・バーってんだから、ZEROってのも変わってるよな。
「ぶう」
「じゃね、K.M。留守番頼んだわよ」
「ね、K。ストリップが見たいなら、後でアタシが見せたげよっか?」
「馬鹿言ってねえでさっさと来い!」
「あ、痛たた!ちょ、ちょっと、乱暴にしないでよぉ!」
・・・ジョーは置いていったほうがいいかな・・・
待ち合わせの店は結構繁盛しているようだった。
客のざわめき、アップテンポな音楽、時折聞こえる怒鳴り声、悲鳴・・・
ステージでは何人かの踊り子が艶めかしく体をくねらせていて・・・
オレの心配は当たった。
ジョーがかぶりつきにしがみついて動かない。
「おい、ジョー!踊り子に色目使ってんじゃねえ!」
「え〜、いいじゃん?あとチョッとだけ!ホラ、あの娘なんか・・・いいわあ」
「ジョー・・・よだれ出てるわよ・・・」
オレがZEROだったら・・・こんな連中に助っ人頼むかなあ・・・
客でごった返す店の中を奥に進むと
予約されていたテーブルにはまだ誰も来ていない。
時間は・・・あってるよな?
腕時計を見ようとすると、背後からしわがれ声が響く。
「時間ならあっとるよ、マディ君。時間に正確なのはいいコトだ」
驚いて振り返る。何時の間に?
「おっと、驚かせてしまったかな?ナニ、ちょっとキミ達を観察させてもらっていたんだが・・・」
そう、何時の間にかオレ達の背後に
髪の毛や口ひげこそ真っ白だが、背筋のシャンとした身なりのいい老紳士が立っていた。
「トニオに聞いたよりも、ずっと楽しそうなメンバーじゃないかね?」
「・・・アンタが・・・Mr.ZERO?」
「そんな風に呼ばれておるようだね。まあ、他に呼び名もないのでね。ZERO、で構わんよ」
・・・スゲエ。
貫禄って言うかなんて言うか・・・オレなんかとは格が違うってカンジだ。
「さあ、掛けたまえ。ちょっと騒々しい所で恐縮だが・・・」
席に腰掛けると、ZEROの眼が温和な表情のまま鋭く変わる。
「ビジネスの話をしようじゃないか?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・Fin・・・・・・・・・・・・・・・・・
いかがでしたか?ではまた!