この作品を2222HITの記念にk・mさんに。
なお、登場する人物と実際のk・mさんには
全然関係ない・・・と思います(笑)
第五日 「専門家」
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「・・・てなわけでさぁ、ちょっとオレには無理みたいなんだわ」
薄暗い酒場の片隅で男が二人ヒソヒソ話してるなんざぁ
怪しい以外の何者でもないんだが
世間体を気にしていられるほど今のオレには余裕が無い。
せっかく上手く行きかけた久々のちょっとしたヤマが
つまらねえ電気仕掛けのおかげでオジャンになりそうって時に
余裕かましてられるヤツがいたらお目にかかりたいもんだ。
「へえ、マディにしちゃ弱気じゃねえか」
「そう言うなよ。なあトニオ、お前サンそういうの得意だろ?」
「オレ?あーもうダメ。この世界は進歩が早くてさ、もうついてけねえのよ」
「ちぇ、弱ったなどーも・・・じゃ誰か腕のいいヤツ紹介してくれよ」
「コンピューターの専門家ね・・・まあいることはいるけどな」
「さすが、頼りになるぜ。なんてヤツだ?」
「K・Mってんだけどな」
「K・M?イニシャルか?なんの略だよ」
「いや、なんかスゲ−長ったらしい名前でさ、聞いたんだけどオレも覚えられなくて」
「へえ」
「で、イニシャルのK・MとかただのKで通してるらしいぜ」
「まあいいや、別に名前がどーでも腕さえよけりゃな。ソッチのほうは確かなんだろ?」
「腕はいいよ」
ああ、なんかイヤな予感。
腕は、いい。こう言ってトニオに紹介されるヤツは
大概腕以外の何かに問題があるヤツなんだよなぁ・・・
といって今更断るほどの余裕が無いのも事実だし・・・
「じゃ、ツナギ取ってくれよ。なるべく早い方がいいな」
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面通しのためにメリルとジョーも連れて待ち合わせの酒場に戻ると
トニオの隣に一人見慣れない顔があった。
「・・・お前サンが・・・K・M?」
「そう。アンタがマディ?」
割と小柄なヤツだった。
それは、まあいい。こういう仕事にはデカブツよりは小柄なほうが都合いいこともある。
「思ってたよりも老けてるね」
分厚い眼鏡の奥から量りにかけるような目でオレを見る。
かなりの近眼らしい。
それも、まあいい。モニターとキーボードがちゃんと見えてればいいんだろうからな。
だが・・・
「どーゆーことだトニオ!こりゃ・・・ガキじゃねーか!」
「ガキって言うなよ!もう16だぞ!」
「充分ガキじゃねーか!」
「オッサンから見ればそうかもね」
「オッサ・・・!オレはまだ28だ!」
「まあまあ、落ち着けって。なあマディ、コイツは確かにまだ若いが腕のほうは大したもんなんだぜ?」
「ねえ・・・ちょっといい?」
それまで黙っていたメリルがK・Mに声をかける。
「アンタ、親とかいないの?こんな仕事してたらマズイんじゃない?」
ジョーが頷く。
「そうだよ。犯罪者の仲間入りなんてしないに越したことないんだから」
だが、プイッと横を向いて拗ねたように答える。
「・・・親なんていない。14の時に親父もお袋もくたばって・・・」
「あ・・・ゴメン」
「それからは・・・トニオに仕事回してもらって・・・この仕事で喰ってるんだ」
「・・・つまり、プロってわけだな?」
「まあね」
「わかった。ガキでも何でもプロはプロだからな」
差し出したオレの右手をK・Mのほっそりした右手が掴む。
「よろしく頼むぜ、相棒」
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早速K・Mの部屋のコンピューターから
「下見」をすることになった。
カタカタカタ・・・
キーボードの音が響く狭い部屋で
オレ達は固唾を飲んでその作業を見守る。
「・・・どうだ?」
「う〜ん・・・これは結構キツイね」
モニターとにらめっこしながらK・Mがため息をつく。
「おいおい、いまさらダメでした、なんて言わないでくれよ」
「そこまでは言わないけどね。でも、ここからじゃ半分しか落とせないよ」
「半分?」
「うん。セキュリティシステムのハード自体に完全に独立して存在してる部分があって・・・」
何か言い始めたが途中からサッパリわからなくなった。
メリルとジョーは最初からわからなかったようだが。
「チョッと待て」
「ナニ?」
「悪いけどな、もう少しわかりやすく言ってくれ」
「ああ・・・つまりね、ボクが現場に行かなきゃダメってこと」
「ナニ?じゃお前、ついて来るのか?」
「うん。現場で直接アクセスしないとダメだと思う。回線とかも細工しないとダメそうだし」
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「なあ、どうだ?いけそうか?」
「ねえジョー、ウルサイから黙ってるようにこのオジサンに言ってくんない?」
「・・・だ、そうよ、マディ。ちょっと落ち着いたら?らしくないわよ?」
くっ・・・ここは、我慢我慢・・・
せっかくここまで来てコイツにへそでも曲げられてもしょうがない。
「・・・よっ、と・・・ふふん♪・・・それっ!」
「・・・やったか?」
「ハ!チョロイチョロイ!さ、後はアンタの仕事だよ!」
「やったな!たいしたもんだぜ!」
「わ・・・!」
つい緊張が途切れて、配電パネルの前にしゃがみ込んだK・Mを後ろから抱きすくめる。
ふに。
ふに?
何だ、この感触は?
ふにふにふにふにふに・・・・
「ど・・・!どこ触ってんだよっ!!」
「・・・!お前・・・おん・・・!」
「わーっ!!!」
K・Mが乱暴にオレの口を手で塞ぐ。
「ナニじゃれてるのマディ!早くしないと次の警備の巡回にぶつかるよ!」
口を塞いでいた手を振り解いてK・Mを見る。
半べそかいて睨んでやがる。参ったなぁ・・・
「わかった。K・M、メリルのトコまで戻れ。ジョーはここで待機」
「O・K。お疲れ、K・M。いい手際だったね・・・K・M?」
K・Mはうつむいたまま胸を両手で抱えて黙っていたが
やがてスタスタとオレに歩み寄ると耳打ちをした。
「・・・責任、取ってよね・・・」
パッと振り返るとそのまま走り去る。
「・・・どうしたの、あの子。なんて言ってたの?・・・どうしたのさ、頭抱えて?」
「このまま開けた金庫の中に入っちまいたいよ」
「ナニ言ってんの?さ、早くしなよ、メリルとK・Mも待ってるよ」
・・・それが一番怖いんだって・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・Fin・・・・・・・・・・・・・・・・・
いかがでしたか?ではまた!