第四日 「単独犯」
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今日はうるさいメリルやジョーはいない。
狙いは小さな小売店で警備員なんているわけもないから
ガンマンのジョーは必要ない。
場所は近いし入り組んだ路地のなかにあるから
ドライバーのメリルは必要ない。
自分ひとりで充分下調べはできたので
トニオから情報も買ってない。
そんなわけで全部今日はオレ一人のヤマだ。
チャチな警報を眠らせてこれまたチャチな入り口のカギを外す。
チョロイチョロイ。
何だよ、オレ一人のほうがうまくいくんじゃねーか?
さって、お目当ての金庫は・・・
と、金庫を見つけて動きが止まる。
オレが調べた金庫とは違うモデルだ。
こいつは確か・・・フライヤー&デッケルのE−88だな。
今日オレが持ってきてる道具立てじゃコイツは開けられない。
情報だけでもトニオから買っておけばよかったか・・・
まあ、時間はまだあるし、一旦戻ってコイツに合う道具を持ってこよう。
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「あら、どこ行ってたの?」
こーゆ−時に限ってメリルが夜更かししてやがる。
一人で仕事してたなんてバレたらナニ言われるかわかったもんじゃない。
「ああ、ちょっと・・・飲んでたんだ。ほら、5丁目のマーティンの店でな」
「・・・そのカッコで?」
しまった。今のオレのカッコはいわゆる「仕事着」だった。
「あー・・・ついでにちょっと次の仕事の下見もな?」
「ふ〜ん」
疑いの眼差しをオレから離そうとしない。
うう、コレじゃ道具を取りにいけねーじゃねーか。
「ただいま〜。・・・あれ、マディ帰ってるの?」
ジョーだ。まずいことは重なるもんだ。
「おう、今さっきな。お前はドコ行ってたんだ?」
「ああ、ちょっと飲んでたのよ。5丁目のマーティンの店。知ってる?」
ダメだ。もうダメだ。しかしダメに追い討ちがきた。
「あ、アンタ玄関に道具カバン置きっぱなしだったよ。ほら」
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「・・・一人で仕事してたのね」
「え〜?あたし達に黙って?ナニよそれ〜!?」
うう。もうこれ以上隠しとおすのは無理だな・・・
こうなったら仕方がない。
素直に状況を説明して、残してきた仕事を片付けさせてもらおう。
「・・・わかったわ。じゃ、ちょっと待ってて」
「なんだ?」
「着替えるのよ!アタシも行くんだから!」
「ちょっと!アタシ達、だよ!アタシも行くからね!」
「いや・・・今日はお前たちの出番・・・」
その途端、4つの強烈な視線がオレを貫く。
「・・・が待ってるから、早くしてね・・・」
情けない。情けないぞ、オレ。
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「結構あったね〜」
「うん、ざっとだけど5万はあるわよ」
お宝を拝むと二人の機嫌はいきなり直った。
そうか、現金なやつというのはこーゆーことか。
「欲張りな誰かさんはこ〜んなに沢山独り占めしようとしてたわけね」
ひとしきり嫌味を言った後、二人が真剣な表情に変わる。
「マディ・・・もうアタシ達と組むのがイヤ?」
「いや・・・そーゆーわけじゃ・・・」
「別に一人で仕事されるのが嫌なわけじゃないのよ」
「そうそう。それを黙ってた、ってのがさ・・・」
「理由を言ってよ。でないとアタシ、もうアンタとは・・・」
女二人(うち一人は疑問符付き)に目を潤ませて見つめられ
言わないわけにもいかなくなってしまった。
「あー・・・来週メリル誕生日だろ?」
「・・・え?そう、だけど・・・」
「その・・・何かプレゼントでもって思ったんだけどよ、手持ちが寂しくて・・・」
「じゃ・・・アタシへのプレゼント買うために?」
「まあ・・・その、そういうわけだ」
・・・プッ。
ちょっとの間の沈黙をジョーが吹き出し笑いで破った。
「あ〜あ、ご馳走様!お邪魔みたいだからアタシもう寝るわね。ごゆっくり〜」
「バッ・・・バッカじゃないのアンタ!プレゼントってナニ言ってんのよっ!」
「いや、だって前欲しいようなこと言ってたろ?」
「アンタってホントに・・・はあ・・・もう、いいわ」
「納得したのか?」
「うん・・・ね、何買ってくれるつもりだったの?」
「内緒だ。あらかじめわかってるプレゼントなんてつまんないだろ?」
「そうね・・・さ、もう休みましょ」
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「なんでオレには分け前無しなんだよ!」
「だってアタシにプレゼントするためにした仕事なんでしょ?」
「だからって5万全部プレゼントするかっ!」
「うるさいわね!後は罰金だと思いなさい!黙って一人で仕事した罰!」
くっそー!もう絶対メリルに指輪なんて送らねーぞ!
・・・多分。
・・・・・・・・・・・・・・・・・Fin・・・・・・・・・・・・・・・・・
いかがでしたか?ではまた!