雑貨屋番外編
「第七日」のつもりだったけど、あんまりコメディじゃないから番外編ね。
「手錠」
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ハイ、アタシはメリル。これでも腕っこきのドライバー。
運び屋としちゃ結構いい線いってたんだけど
今は半分休業中みたいなカンジで、相棒のマディの専属運転手ってトコ。
マディはカギ開けが得意な泥棒で、アタシの・・・アタシの・・・
よくわかんないな。
恋人?愛人?それともただの相棒?
愛してるのは確かだけれど
アイツがハッキリそう口にしてくれたコトなんてありゃしない。
「愛してるのはオマエだけだよ」
な〜んて言葉は期待してないけど。
なんか最近は裏でコソコソ、やってるみたいだし・・・
どうしてこんなのに引っかかっちゃったのかしら。
「ん?なんだ?」
「なんでもない。ね、マディ・・・今日が何の日か・・・わかる?」
「へ?えーとぉ・・・なんだっけ・・・」
コレだもの。
あ〜あ、考え直したほうがいいのかなぁ・・・
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ガチャリ
「手錠なんかはめたら運転しづらいんだけど」
「アンタを信用しないわけじゃねえけどな。さ、左手出しな」
ガチャリ
これでアタシの左手が黒いアタッシュケースに繋がれる。
「手錠のカギは届け先のマークスってヤツが持ってる。じゃ、頼んだぜ」
ヤバイなあ。運ぶブツは何だか教えてもらえないし
色々いわくありげな仕事だし・・・
ギャラが破格なのがかえっておっかないカンジ。
「そうだ・・・銃は持ってるのか?」
「持ってないよそんなの・・・なんで?要るような目に遭うってワケ?」
「・・・持ってけ。使い方、わかるか?」
「・・・今からこの仕事、キャンセルできないよねえ」
「残金は鉛弾丸で払うことになるぜ?」
「しょうがないな。支払いは、札のほうで貰いたいからね」
こうなりゃヤケ。
イってやろうじゃないの!
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なんて空元気もデカイ2台のリムジンに挟まれるまで。
あ〜あ、迂闊だったなあ。
こりゃ絶対、狙われてるわ・・・
今ントコまだ他の車がいるからか手出しはしてこないけど・・・
スピード落とせば後ろからドスン!だし
振り切ろうにも前が尻振って逃がしちゃくれないし。
もう少し車格のあるヤツにすればよかった・・・って・・・
ああ!ヤバイじゃん旧道に入っちゃうよ!
あああ、さっきのトコ右折だったのにぃ〜!
前のリムジンのテールランプが点滅して停車を促してる。
・・・どうする?
止まってブツを大人しく差し出したところで
命の保証は・・・ないわよねえ。
となりゃあ!
前が減速するのを見計らって、コッチはアクセル!
ガッン!という衝撃と共に
前のリムジンを巧みに弾き飛ばす。
「やたっ!」
後はこのままケツに付いてるヤツを振り切って・・・
バシッ!
「アウッ!?」
・・・撃たれた?・・・
「イ・・・ダダダダダッ!ッ痛ゥ〜〜!!」
ア〜ン、シートが血だらけだよう!
そっから先は自分でもよくわかんなくなっちゃった。
ただただアクセルを踏んで逃げるだけ。
銃なんて渡されたって役にたちゃしない。
今必要なのは強力なエンジンと・・・
「あう・・・血が止まらない〜」
治療かな・・・
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「!!!?」
目が覚めた。
目が覚めた、ってことは今まで寝てたってワケで・・・
なんだか気を失ってたらしいけど・・・ココどこ?
「よう。お目覚めかい?」
「!誰!?」
ガバッと跳ね起き・・・
「ア、タタタタタッ・・・」
「寝てろって。悪いようにゃしねえよ」
アタシよりちょっと年上ぐらいかしら。
中肉中背、茶色の髪に青い瞳の男がドアのそばでこちらを見ていた。
「う〜・・・ココ、どこ?」
「オレのダチの家。ハイランド・ロードの路肩でアンタが車ン中で失神してたんで連れてきた」
「・・・アタシの・・・車は?」
「そのまま置いてきた。血だらけのシートに座りたくなかったんでね」
気がつくと、左肩にグルグルと包帯が巻かれている。
「コレ・・・アナタが?」
「ああ、たいした傷じゃなかったからな。でもあんまり動かさないほうがいいぞ」
「そう・・・アリガト。アタシ、メリル」
「マディだ」
助かった〜・・・なんかいい人みたいだし
なにより警察沙汰にはしてないってのが助かったわ。
でも、ココでのんびり休んでもいられ・・・
「あ〜っ!?手錠!?」
外れてる!アタッシュもない!
「ああ、包帯巻くのに邪魔なんでな、外した。アタッシュならソコ」
「・・・え?アナタが?」
「そう」
そういえば・・・車のドアだってロックしてたはずなのに・・・
「車のドアのロックも・・・アナタが?」
「まあ・・・そう」
「ふ〜ん・・・器用なのね」
「まあね。職業柄」
な〜る。警察沙汰にしなかったワケ、なんとなくわかっちゃったな。
「ところで、このアタッシュだけど・・・中身がなんだか聞いてるか?」
「ううん。教えてくんなかった」
「ふ・・・ん。オレの勘だけどな・・・コイツ、爆弾だぜ」
「なあんですってぇ!?」
「手錠を繋いでたワイヤーに配線が隠してあったぜ。気がついたんでよかったけどな」
「・・・気がつかなかったら?」
「手錠を外した途端、オレ達二人、ドカン!でお陀仏」
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「マゲッティんトコのマークス?経理屋のジム・マークスか?」
「そう」
「ははん・・・ヤツァ今二重帳簿のチョロマカシで疑われてるって話だったけど・・・」
「・・・じゃ、組織の粛清ってワケ?」
「いや。マークス一人でチョロまかす度胸はねえ。裏で糸引いてるヤツが、口封じに入ったな」
「アタシを襲ってきたヤツラは?」
「わからんが・・・組織内で調査してるほうのヤツラかもな」
「はあ・・・アタシ・・・どうすりゃいいの?」
「逃げる・・・ってのはちとキツイな。アンタも口封じの仲間入りだ」
「じゃ・・・このアタッシュ届けるの?で、ドカン!でサヨウナラ?」
「ん〜・・・あ、そか。ちょっとコレ借りるぜ?」
「え?あ、ちょ、ちょっとぉ!?どこ行くのよぉっ?」
アタッシュ持ってっちゃった・・・
もう、爆弾なんでしょ、バ・ク・ダ・ン!
どーするつもりなのよぉ!
「お待たせ。用意できたぜ」
「ナニしてたの?」
「ちょっとばかし、コイツに仕掛けをな」
「ええ!?だって、爆弾なんでしょソレ?」
「おう、開けてみたけどやっぱ爆弾だったわ」
「なんで・・・そんな危ないコトしてくれるの?」
「ハ!こおんな可愛い子を吹っ飛ばそうなんてさせるかっての!」
「え・・・?」
「あ、いや・・・なあ、オレを信用するかい?」
「・・・いいわ。アナタを信じる」
差し出した左手に再び手錠がはまる。
「もう、手錠を外しても爆発はしねえ。安心して配達しちまいな」
「ドジ踏んだのは、爆弾作ったヤツってコトになるわけね?」
「そーゆーコト。じゃ、行こうか?」
「・・・え?アナタも・・・一緒に?」
「ああ?マズイか?一応、見届けたいんだけど」
「ううん・・・嬉しいよ・・・ホント・・・アリガト」
「礼なら配達が済んでから、ゆっくり、な」
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・・・コレがちょうど、3年前の今日。
そう、今日はアタシとマディが初めて出会った思い出の日。
マディがそんなロマンチストじゃないのはわかってるけど・・・
わかってるけど・・・
「あ〜、ヒマだなあ。メリル、どこかドライブでも行かないか」
「?なによその棒読みのセリフ?」
「ハイランド・ロードとか今ごろ走ると気持ちいいだろうなあ」
「!・・・あんなトコ・・・荒地しかないじゃない・・・」
「いやあ、あそこには古いダチもいるんだ。久しぶりに会いたいなあ」
もう。素直じゃないんだから。
いいわ、一緒に行ってあげる。何処でも、何時までも。
アンタがアタシのハートにかけた手錠は
まだ外れそうにないみたいだから・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・Fin・・・・・・・・・・・・・・・・・
いかがでしたか?ではまた!
もう一日遊んでいこう!![]()