「自転車に乗って」
第二話
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「・・・とにかく、こんな道の真中に立ってたってしょうがないな」
ぐうぅ〜
ん?なんだ今の音は?
ぐううぅうぅ〜
まただ。音のするほうに目を向けてみると・・・
「・・・なによう」
「・・・腹、減ってるのか?」
「・・・うん。ちょっと」
ぐうぅうぅきゅるうぅうぅ〜
「・・・ちょっとか?」
「・・・すごく」
「しょうがねえなぁ、こんなときに!ナニ考えてんだオマエの胃袋は!」
「だぁって空いてるんだもぉん!」
「オレはこれからどうしたらいいかで頭が一杯で・・・」
ぐきゅうぅきゅるるるる
うお!オレの意思に反して勝手に腹のヤツ鳴りやがって・・・
「・・・頭が一杯でもお腹は空っぽみたいね」
「あー?オレは腹なんて減ってないぞ」
「いま、お腹スゴイ音で鳴ったよ?」
「いや、これからどうするか考えて唸ってたんだ。うううぅううぅ〜」
「・・・わかったからなんか食べに行こうよう」
「ううぅうぅう〜、そうだな、ようこチャンがお腹空いたんじゃしょうがない」
そこでふと思い当たる。
「ひょっとしたら、オレ達のこと知ってる人に会えるかも・・・」
「え?」
「言ったろ、オレ達この近所に住んでる可能性が高いって」
「あ、そか。じゃ、ファーストフードみたいなトコより普通の食堂なんかのがいいね」
「よし!そうと決まれば善は急げだ!」
倒れていた自転車を起こしてサドルにまたがる。
「ちょっとぉ!アタシはぁ!?」
「・・・二人乗りは、危ないんだぞ?」
「じゃあ、アタシだけ歩けってゆーの?」
「わーったよ、後ろ乗れよ」
「へへー」
ぎっこん・・・ぎっこん・・・
彼女を後ろに乗せてペダルを漕ぎ出す。
「ねえ・・・」
「ん?」
「・・・んん、なんでもない。何か・・・思い出しそうな気がしたんだけど」
「ふーん・・・あのさぁ」
「ナニ?」
前もこうして、二人でいたのかもしれない。
そんな気がした。
でも、そうでなかったら、との思いがそれを口に出させなかった。
「いや・・・オマエ、結構重いな」
「!ナニ言ってんのよ!」
「いででででで!この状況で背中つねるのは反則だぁ!」
「るさい!キリキリ漕げ!」
くっそー、いつか仕返ししてやる!
・・・そういうときが来ればだけどな。
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最初に見つけたラーメン屋で食事をとる。
わかったことは、今日の日付ぐらいなものだった。
「美味しかったね、冷やし中華!」
「・・・店を出て最初の感想がそれか?」
「え、美味しかったじゃん。冷やし中華キライ?」
「オレ達のことを知ってる人が誰もいなかったことについて何か感想はないのか?」
「ああ。えーと、残念だったね」
はあ。お気楽なヤツ・・・
「もうこうなると、後は警察か病院にでもいくしかないな」
「・・・なんか、ヤダなぁ」
「ヤダって・・・しょうがないだろ!?もう日も暮れそうだし」
「うん・・・あ!」
「今度はなんだよ」
「公園があるよ」
「で?」
「疲れたし、ちょっと休んでいこうよ」
「自転車漕いで疲れてるのはオレだ」
「アタシも疲れたの!ね、ちょっと休もうよ?」
ま、ちょっとぐらいいいか。
公園の入り口に自転車をとめ
人気の無い公園のベンチに二人並んで腰掛ける。
・・・なんかコレって・・・状況が・・・
チラッと彼女を見る。
・・・結構、可愛いよな。
年齢は幾つぐらいなんだろ?
オレと同じくらい・・・ってオレが自分の年齢覚えてないんだから意味ねーや。
記憶が戻ったら・・・オレ達はただの他人なのかな。
オレに家族がいるかもしれないし、彼女だってそうだ。
でも・・・このまま記憶が戻らなかったら?
・・・ダメだな、こんなこと考えてちゃ。
「・・・何か飲むか?そこの自販機のだけど」
「うん。じゃミルクティー」
「120円」
「それくらい奢ってよう」
「冗談だよ」
二人でジュース缶を手にぼんやり過ごす。
いつしか日も暮れていた。
「・・・今晩、どうする?」
「アタシ・・・もうここでいいよ」
「虫に喰われるぞ」
「・・・どうせ喰われるなら・・・」
微妙に離れていた二人の距離が、何時の間にか接近していた。
「狩野クンになら・・・いいかな」
うわ。彼女の顔がグッと接近してくる。
「ちょ・・・チョッと待て!」
「・・・アタシとじゃ・・・イヤ?」
「いや、そーじゃなくて!オレ達全然お互いの素性わかってないんだぞ?」
「だから?」
「ひょっとしたら、もう結婚してるとかかもしれないだろ?」
「うん・・・でも、今は・・・」
うわ。もう彼女の息まで感じるぐらいの距離。
「アタシには狩野クンしか縋れる人、いないんだよ・・・」
ああ、どーする、オレ!?
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