DESTINY
第四話
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「あれ・・・ねえ、どこか行くの?」
珍しくドレッサーの前に座るアタシを見てロイが声をかけてくる。
「うん、ちょっとね・・・留守番、頼んだわよ」
「・・・仕事?」
仕事、か・・・半分はそうなわけだし・・・
「ん・・・まあ、そんなトコ」
「・・・急いでる?」
そう言ってアタシの背中に張り付く。
乳房に回される寸前の手をピシャリと叩いて牽制する。
「ダ〜メ。別にそんな急いではないけど・・・」
「だったら・・・いいじゃん・・・ねえ・・・」
耳元で吐息と共に囁く。
しなやかな指は今度はわき腹から責めてくる。
突然キースの声が響く。
「あ〜っ!?ズルイ、二人でぇ!」
そう言ってパタパタと走り寄ってきて
「混ぜて〜」
ロイと二人でアタシを責め始める。
愛しあうようになって1週間。昼も夜もない。
食事や睡眠のとき以外は、アタシの蜜壷はどちらかを呑み込んでいる時間が多かった。
ちなみに後ろの扉は最初の夜以来許していない。
彼らは不平を言ったが、次の朝のトイレが大変だったのでコレは譲らなかった。
代わりに、蜜壷に収められていないほうは
アタシが唇と舌で愛したり、彼らの方の扉に押入ったりしていた。
「ああ、もう!ホントにそんなヒマないんだってば!・・・コラ、ちょっと・・・止め・・・!」
キースの唇がアタシの口を塞いでしまう。
4本の優しい手がアタシのカラダを熱くさせていく。
ヤバ・・・濡れてきちゃった・・・や・・・シミになっちゃうじゃ・・・
そこで今着けている下着の値段を思い出して(280ドル!)なんとか我に帰ると
「ダメ・・・ったら、ダメ!」
縋りつく二人を振り切るように立ち上がる。
「ちぇ・・・どーしたのさ、今日は・・・」
「仕事なんだって。今までずーっと部屋でゴロゴロしてたくせにね」
「・・・そういえばそうだね。ねえ、ジョーってナニしてる人なの?」
この質問には答えたくない。
だから無視する。
「ねー、黙ってないで教えてよ」
「・・・アナタ達に教える必要なんてないでしょ?」
「そんなコトないよ、保護者の経済状態ぐらいは把握しておかなきゃ」
「うんうん。でなきゃどの程度おねだりしていいかわかんないもんね」
「・・・絶対教えないわよ」
嘘をつくのは簡単だろう。でも、そうはしたくなかった。
とはいえ本当のことを言うのはもっと嫌だ。
殺し屋。暗殺者。処理係。組織の犬。
話してみたらどうなるだろう?聞いてみたらどうだろう?
『アタシは金である組織の殺しを請け負ってるの。
アナタ達が食べるパンも着ている服も眠るベッドも
みんな全部殺しで稼いだお金で買ったのよ。
さあ、アタシのことどう思う?』
・・・言えない。だから、黙っている。
いつかは二人が私の正体を知るときが来るのだろうか?
その時になっても、彼らはアタシのもとに留まってくれるだろうか?
暗澹としたまま二人に見送られ玄関に向かう。
「じゃ、行ってくるからね。悪いけど食事は適当に済ませて。帰りは・・・多分遅くなるから、先に寝てて」
「冷たいね」
「もうボク達のこと愛してないんだ」
その言葉がナイフのようにアタシの心をえぐり、堪らなくなって二人に走りよって抱きしめる。
「そんなコトないっ!!そんなコトないわっ!!」
アタシの過剰な反応に二人が驚く。
「・・・ジョー?」
「・・・ゴメンね、変なコト言って・・・」
ゆっくりと、体を離していく。もう行かなくては・・・
ドアを開け、外に踏み出す寸前に
二人の言葉が重なり合ってアタシに届く。
『ジョー、大好きだよ』
「ええ・・・アタシもよ・・・」
今振り向いたら、アタシは泣き出してしまうような気がして
短く答えるとそのまま振り向かずにそっとドアを閉めた。
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待ち合わせのカフェには、なんとか時間前に着くことが出来た。
相棒のカーラは時間にうるさい。
少しでも遅れると途端に機嫌が悪くなるのだ。
やがて、時間ピッタリに彼女が現れる。
栗色の髪はアップにまとめ、縁無しの眼鏡をかけている。
紺色のスーツに白いブラウスという、何処にでもいるOLのようなスタイル。
だが、その服の下には、しなやかで、敏感で
疲れを知らず相手を求める豊満で強靭な肉体が隠されているのだ。
彼女と組んで「仕事」をするようになってどれくらいだろう。
その相棒とは、いつしか体を重ねあうようにもなっていた。
つい彼女の真っ白な裸身を思い浮かべ
出掛けに火のつきかけた体がまたくすぶり始める。
相棒であると同時に、恋人・・・
いや、もっとアタシ達の関係はドライかもしれない。
でも、少なくともセックスフレンド以上の関係ではある。
「久しぶりね、ジョー。元気だった?」
「お帰り、カーラ。アタシは元気よ。アナタも元気そうでなにより」
カーラが立ち上がったアタシを抱きしめる。その豊かな乳房をギュッと押し付け
乳房同士をこね回すように体を動かしている。
股間がアタシの太腿に押し付けられ、熱い恥丘の膨らみの感触が布地越しに伝わってくる。
すでに彼女はその気らしい。
彼女の白く柔らかな裸身を思い浮かべながら
熱くなった体でその動きにかすかに応える。
「もう・・・気が早いんだから」
「ジョーが悪いのよ・・・アタシをこんなにしたのはアナタなんですからね」
「もう・・・違うわよぉ、大体・・・最初誘ったのはアナタでしょぉ?」
「ソレはアナタが・・・ねえ、クスリ止めたの?」
「あ・・・うん・・・やっぱり変わった、アタシ?」
「うん・・・でも、素敵よ、女っぽくなっても」
カーラを責めるのに感じをだすため、ホルモン剤を飲んで男性的な肉体を維持していたのだが
キースとロイに出会ってから、まだ肉体関係を結ぶ前にその習慣がなくなっていた。
・・・出会った時から、アタシは彼らに愛されたいと思っていたのだろうか。
「それに・・・」
「・・・ナニ?」
「今日は・・・よく笑うのね。いつもクールなのに・・・ベッド以外では」
そう。アタシはよく笑うようになった。あの二人と暮らすようになってから。
きっと今アタシは幸せなのだ。
自分が殺し屋であることを忘れてしまうほど。
「ねえ・・・仕事の話・・・あるんでしょ?」
なかなか体を離そうとしないカーラに水を向ける。
「ん・・・まあ、仕事ってわけでもないのよ。少なくとも、アタシ達にはそう関わりないこと」
「・・・なんなのソレ?」
渋々と彼女が体を離す。
「組織からの指令ってわけじゃないの。幹部の個人的な依頼があって、一応その連絡だけ、ね」
「ふーん・・・アタシ達の『仕事』じゃないみたいね」
「まあね・・・ねえ、焦らさないでよ・・・アタシもう・・・溢れて流れ出しそうなの・・・だから」
瞳を潤ませながら彼女が囁いた言葉にアタシは凍りつく。
「早くアナタの部屋に・・・ね?」
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久しぶりに会う彼女がアタシを求めてくることはわかっていた。
てっきり何処かのホテルか何かに部屋を取って、そこでただ貪るのだと思っていた。
だが、彼女はその手間さえも惜しいらしい。
思えば、待ち合わせにこのカフェを指定したのも
アタシの部屋からそう遠くないからなのだろう。
だったら直接部屋に来るって言えばいいのに・・・
「・・・ねえ?どうしたの?」
部屋には、キースとロイがいる。
考えてみる。
カーラはそう嫉妬深いわけではないが、果たして彼らを受け入れるだろうか。
彼らは彼女を気に入るだろうか?
いや、それより前にアタシはどちらと寝ればいいのだろう?
カーラの白い体が脳裏にちらつき
その柔肌に吸い付くように絡むアタシの褐色の体を想像する。
別の妄想では、昨夜と同じように二人の少年が
代わる代わるアタシにその肉の楔を打ち込んでいく。
どうしよう?
だが、やがて想像は広がり、二人の少年に責めたてられながらも
互いを貪り絡み合うアタシ達の裸身が頭の中で一杯になった。
・・・きっと、カーラも気にいってくれるハズだ。
カーラも根っからのレズビアンと言う訳ではない。
気が向けば男とも寝るらしいが
並みの男では彼女を満足させる前に力尽きてしまうのだ。
だから終わりのない(と彼女は主張している)女同士のセックスを好んでいるのだ。
でも、あの子達なら・・・彼女を満たしてあげることができそうに思える。
アタシがそうなったように。
「カーラ・・・今、アタシの部屋同居人がいるのよ」
「え・・・」
少なからずショックを受けた様子のカーラにすかさずフォローを入れる。
「アナタにも会って欲しいな・・・とても素敵だと思うの」
「・・・男?」
「・・・うん」
「・・・満足、してるの?」
「・・・正直言うと、ちょっと持て余してる」
カーラが目をむく。
「ワァオ・・・凄いんだ。・・・いいの?アタシも・・・食べて」
「ん・・・ディナーはね、二人いるの。だから、分けて食べようよ」
「・・・今まで一人で頂いてたわけ?欲張りね、相変わらず」
「アナタほどじゃないわよ」
「・・・いいわ、期待できそうだし・・・たまには男も味わっておきたいかな」
「男、ってよりはね、ボウヤ」
「あら・・・そういう趣味だったの?・・・って、じゃ、そのボウヤ達にイかされちゃってるわけ?」
「そうよ、凄いボウヤ達なの。それでいて凄く可愛いし・・・」
「うわぁ・・・アタシもうダメかも・・・」
カーラが笑いながら冗談を飛ばす。
「まだ早いわよ。今日はアナタがゲストなんだから、3人がかりでしてあげる」
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「ただいまー」
ドアを開け、部屋の奥に声をかける。
「あ・・・お帰りー。早かったねー」
「オミヤゲはー?」
二人の声が近づいてくる。
ひょっとしたら二人で始めてしまっているかもしれないと思ったのだが。
「オミヤゲじゃなくて、お客サンよ」
「え?」
玄関までやってきて、アタシの後ろのカーラの存在に気づいた二人が凍ったように動きを止める。
「・・・誰?」
話をしていたにもかかわらず、何故かカーラも同じように凍りつく。
だが、その口から出た言葉は少し違った。
「・・・どうして・・・アナタ達が・・・ここに?」
嫌な予感がした。
彼女は『Why(どうして)?』と言った。『Who(誰)?』ではなく。
それは初めて出会う人間に持つ疑問ではない。
そして『Why』が理由を求めているのは、どうして『Here(ここに)』いるのかなのだ。
カーラが緊張した面持ちでアタシに話し掛ける。
「悪いけど・・・ディナーどころじゃなくなっちゃったわ」
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