第8夜 「瓶」

「おかしいな・・・」
引っ越してから続く眠れない夜に耐えられず
医者に処方してもらった睡眠薬。
お陰で何とか眠れるようになったのだが
後何日分残っているか、と思ってビンの中身を見てみると
なんだか思ったより少ないような気がするのだ。
(間違えて多く飲みすぎちゃったのかな?)
モノがモノだけに気をつけなければ。
ちょっと飲むのを止めてみようかとも思ったが
眠れなくなるのも嫌だ。
数をしっかり確認して薬を飲むことにした。

(やっぱり、減ってる!)
昨夜眠る前に確認したときより
明らかに、そして大幅に瓶の中身は減っていた。
何故?一人暮らしのこの部屋で
自分が飲む以外にこの瓶の中身が減るわけがないのに。
誰かがこっそり・・・
いや、この部屋に越してきてからまだ誰も知人は尋ねてきていないし
泥棒なら他に盗む物がいくらでもあるはずだ。
ひょっとして、眠った後に夢遊病のような状態になっていて
また薬を飲んでしまっているとか?
いくら考えても答えは出ない。
とりあえず、いったん瓶の中身を全部出して
あと何錠残っているか数えてみる。
そして、眠ることにした。薬を飲んで。

その晩は薬を飲んでもなかなか寝付けないでいたが
(あ・・・)
いつしか、夢の中にいた。
夢だ、とわかったのは、そこに眠っている自分自身がいるからだ。
だが、何かが違う。
自分の顔?いや、いつもと同じ自分の顔だ。
寝具?パジャマ?いや、いつも通りだ。
部屋?いや、間違いなく自分の部屋だ。
では、この違和感はいったい・・・
そして、気が付いた。
それは枕もとにある薬瓶だった。
眠る前には机の引き出しにしまったはずの薬瓶が
なぜか夢の中では枕もとにあるのだった。

目がさめて、すぐに枕もとに目をやる。
そこには薬瓶があった。
引き出しにしまったはずの薬瓶が。
そして・・・
もう、数を数えるまでもなかった。
中身は、昨夜の半分ぐらいに減ってしまっていた。
頭が重い。
薬のせいなのだろうか?朦朧としたまま身支度をする。
薬は、もう止めよう。
それだけを、心に決めた

薬を処分して帰宅した。
薬なしで眠れるか、という不安はまったく無駄だった。
床につく前から、やたらと眠くなっていた。
そして・・・
昨夜と同じ夢の中にいた。
いや、少し違う。
そこには私ともう一人、誰かがいた。
誰?
髪の長い女。顔はよく見えない。
眠っている私のそばに立って
私を見下ろしている。
手に何か持っている。
薬瓶だ。
瓶のふたを開け・・・
錠剤を手に取り・・・
私の口の中に押し込んでいる!

目がさめた。
吐き気がする。意識も朦朧としていた。
夢の中で女が座っていたあたりを見る。
誰もいない。
空になった薬瓶が転がっているだけだった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・Fin・・・・・・・・・・・・・・・・・

どうだったかね?それではまた、別の夜に。

次の夜も覗いてみる

昨日の夜を思い出す

墓場の入り口に戻ります

案内所に戻ります