第7夜 「階段」

「ここには地下室があるんですよ」
「へえ、ナニがあるんですか?」
「前の所有者の方は単に物置にしてたみたいですね」
「どれくらいの広さがあるんですか?」
「けっこう広いですよ。ワインセラーにいいと思いますね」
「ちょっと、入ってみたいな。いいですか?」
「どうぞどうぞ。ちゃんと掃除も済ませてますよ」
不動産屋がドアを開くと、ひんやりとした空気が
向こうから流れ出してくる。
「じゃ、行きましょうか。足元に気をつけてくださいね」

小さな蛍光灯の明かりがぼんやりと足元を照らす。
ギシリ、ギシリ。
階段がきしむ音が狭い空間に響く。
「この階段、結構古そうですね」
「ああ、でもかなり厚い板で作ってますからね。ほら、丈夫なもんですよ」
「先のほうは暗いなァ」
「もう少し明かりを増やしたほうがいいかもしれませんね」
「結構地下深くなんですね」
「ええ、実際には地下2階分ぐらいですか」
しばらく階段を降りると、広い空間に出た。
「ここが地下室です。今明かりをつけますね」
壁際で不動産屋がスイッチを探しているが
なかなか見つからないのか
何時までたっても地下室は暗いままだ。
「どうしたんですか?」
「いや、確かスイッチはここだったんですが・・・」
「ライターでもつけましょうか?」
「ああ、すいませんお願いします」
カチッ。カチッ。
火がつかない。
「弱ったな・・・とりあえずいったん戻りましょうか?」
「そうですね。上には懐中電灯があるはずですから・・・」
再び階段を戻りかけたとき
バタン!
ドアの閉まる大きな音が地下室に届いた。

「あれ?ドアが閉まったみたいですね?」
「事務所の誰かが来たのかもしれませんが・・・」
階段を上がって地下室を出ようとしたが
「カギが掛かってる!」
「誰か、外からカギを掛けたみたいです」
「おーい!まだ中にいるんだ、開けてくれー!」
ドアを何度も叩いて外に呼びかけるが
反応がない。
「もう誰もいないのかな・・・」
「おかしいな、ドアが閉まったのはついさっきなのに」
「合いかぎとかないんですか?」
「あいにく、外からしかカギは開け閉めできないんですよ」
「じゃ、ここに閉じ込められちゃった訳ですか?」
「ちょっと待ってください、携帯で誰か呼びますから」
「シィッ!何か・・・聞こえませんか?」
ギシリ。
階段のきしむ音。

ギシリ。ギシリ。
私達2人が立てたよりももっと重たげに
ゆっくりと、だが一定のペースで
そしてだんだんと大きく、その音は聞こえてくる。
下から。
2人の会話が、しばらく止まる。
そのとき、ただ一つついていた小さな蛍光灯が
フッ
と消えて、周囲が完全な闇に包まれた。
ギシリ。ギシリ。
ただ、その音だけが近づいてくる・・・

「明かりは?明かりはどうしたんだ!?」
「誰だ!?誰かいるのか!?」
「開けろ!ここから出してくれ!」
「スイッチ!スイッチはどこだ?」
もはや2人ともパニックに陥っていた。
わめきちらし、ドアを何度も激しく叩き
蛍光灯のスイッチを探しまわり、そして・・・
「ドアをぶち破れ!」
ドシン!ドシン!
2人で何度もドアに体当たりを繰り返す。
しかし、その間にも
ギシリ。ギシリ。
ますます音は近づいてきて
もう、すぐそこまで・・・

バン!
突然、ドアが開き、二人は勢い余って
ドアの外に転がった。
そして、そのまま一度も後ろを振り返らず
家の外に逃げ出した。
だが、逃げる途中、私の背後から音が聞こえた。
バタン!
誰かがドアを閉める音だった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・Fin・・・・・・・・・・・・・・・・・

どうだったかね?それではまた、別の夜に。

次の夜も覗いてみる

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