第3夜「頭の上に」

へえ、オレの話を聞きたいってのはアンタかい?
変わった野郎だな、ええ?この辺の連中は皆オレの話なんぞ聞きゃあしねえ。
皆オレのことをイカレちまってると思ってるのさ、オレにゃあわかってるんだ。
オレも最初は信じてもらおうと思ってたけどな・・・
今じゃあどうでもよくなっちまった。
皆が信じようと信じまいと、オレに「アレ」が見えちまうって事にゃあ
変わりはねえんだからよ。
まあいいや、この話をすんのも久しぶりだし
聞きてえってんなら聞かせてやろうじゃねえか。
・・・その前に・・・一杯おごってくれるんならな。

アンタ、戦争には行ったかい?
・・・ああ、まあアンタぐらいの年じゃねえだろうな。
いや、行かずに済むんならあんなもなぁ行かねえほうがいいんだ。
いや、別にオレは反戦主義とかゆう訳じゃねえよ?
それなりに愛国心てえヤツもあるつもりだけどよ。
・・・ヒデエとこだったぜ、実際。ムショのがなんぼかマシなぐれえだ。
ほら、ちょっとココ見てみな?傷跡が見えんだろ?
前を歩いてた野郎が地雷を踏んでよ、その破片でやられたんだよ。
野戦病院に担ぎ込まれたときゃあ、あの世の1歩手前ぐれえまで
行っちまってたんだけどな、まあなんとか助かった訳だ。
病院のベッドで意識が戻った時ぁラッキーだったってえ思ったけどな
・・・あのままおっ死んじまったほうが良かったのかもしれねえなぁ。
それからなんだよ・・・「アレ」が見える様になったのは。
・・・久しぶりに長く喋ってるんで喉が乾くな・・・もう一杯いいかね?

ええ、今も見えてるのかって?ああ、モチロンさ。別に見てえ訳じゃねえけどな。
まあオレも最初はずいぶん驚いたさ。
ヒトの頭のうえに光る数字が見えるなんてよ。
別に皆が皆頭の上に数字を光らせてるわけでもねえけどな
どうゆう訳かオレにはその数字の意味がわかってるんだ。
なんの数字だと思うね、え?
へっへっへ、ちゃあんとアンタの頭の上にも見えてるぜぇ。
アンタ、相当悪い事してきたねぇ。
おっとっと、そう怖い顔しなさんなよ
だってそうじゃねえか、戦争に行った訳でもねえのに
そんなに何人も殺ってるってんだからさ。
そうよ、オレが見えるのはそいつが殺した人間の数さ。
しかしそんなにデケエ数字を見るのは久しぶりだな。
戦争に行ってるときゃ皆ピカピカ頭の上光らせてたけどよ。
そんでもアンタほどデケエ数字の奴ぁいなかったぜ。桁が違わあ。
アンタなにやってる人だい?警察かな?
だったら他を当たったほうがいいぜ。こんなの証拠になる訳ねえ。
え、違う?じゃやっぱり悪党だな。ああ、別にオレは気にしねえけどな。

やれやれ、世も末だなぁ。
しかしちっとも気がつかなかったぜ。おいバーテン、お前いつわかった?
・・・ちぇ、そうと知ってりゃもっと高い酒たかりゃよかったな。
しかしわかんねえな。え?お忍びでこんなトコにきた訳がさ。
まさかオレのヨタ話聞きにかい?
大統領ともあろうお人がさ。

・・・・・・・・・・・・・・・・・Fin・・・・・・・・・・・・・・・・・

どうだったかね?それではまた、別の夜に。

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