第12夜 「夜道」

私もね、おかしいな、とは思ったんですよ。
普段夜も11時過ぎには殆ど人の通らない道でしてね
駅から自宅まで30分ほど歩いても誰も見かけないのが普通なんですよ。
え、バスなんかとっくに終わってますよその時間じゃ。
まあ残業になると歩いて帰らざるを得ないんです。
タクシー?とんでもない。
なんのために残業代稼いだのかわかんなくなっちゃうじゃないですか。
で、まあ歩いて帰ったんですがね。
しばらく歩いてたら、私の前を女性が歩いてるのに気がついたんですよ。
15メートルぐらい先でしたかね。
まばらな街灯で見えたり見えなかったり・・・
いやでしたねえ。
だってそうでしょ?暗い夜道で女性の後ろを歩いてて
周りに他に誰もいなかったら、変に勘ぐられたってしょうがないじゃないですか。
ところが、まさにそんな状況だったんですよ。
そのうち、前の女性が気がついたらしくて
ちらちらコッチを見始めたんです。
マズイ、と思いましたよ。
案の定、コッチを警戒してるな、って思いました。
で、そのまま歩いてて変に誤解されたら困りますからね
ちょうどソコにあった街灯の下で
タバコ吸って、その女性が行っちまうのを待ったわけです。

ついてない時ってのは、どうやってもマズイほうに行っちまうんですねえ。
今来た道の、私の後ろにも女性が歩いてたんですよ。
全然、気がついてなかったんですけどね。
マズイですよねえ。
暗い夜道で自分の前を歩いてた男が
曲がり角を曲がったらいきなり立ち止まって、タバコをふかしてるんですよ?
待ち伏せされた、と思ったんでしょうね。
角を曲がった所で、凍り付いちまってましたよ。
こりゃイカンってわけで、足を速めて歩き出したんです。
するとね
曲がりくねってても所詮一本道ですからね
当然、さっき前を歩いてた女性に追いついちゃう訳です。
それも、さっきより私は足早になってる。
パーッ、と、走ってっちゃいましたよ。
まあ、それでちょっとばかり安心したんです。
あとは、まあゆっくり目に歩いてれば
前の女性に追いつくこともないだろうし
後ろの女性も、自分を待ち伏せしてる訳じゃないって思うでしょうから。
全然間違いだったわけですけど。

ええ、すぐに気がつきましたよ。
なんて言うんですか、割りと暗くてもはっきり目は見える・・・
そうそう、夜目が効くってヤツでしてね。
だから、角を曲がった所ですぐ気づきました。
さっきまで、前を歩いてた女性が
すぐ先の曲がり角で
角に隠れるようにして
こちらを見てるんですよ。
正直言って、ビビリました。
だって、おっかないじゃないですか?
なんでかわからないけど、暗がりからこちらをこっそり見てるヤツがいるんですよ?
距離にしたら・・・30メートルぐらいだったかなあ。
思わず一瞬立ち止まりかけたんですけどね
ナニ、どうせ何でもないさ、と思って
そのまま歩いてたんですよ。
半分ぐらい行ったときかな
その女性がね、何か持ってるんです。
暗がりで、はっきり何だったかそこまではわからなかったです。
ただ、刃物だってことはわかりましたよ。
こう、ぎらついたカンジの、尖った物・・・
ヤバイ!って思いますよね、普通。
で、来た道を慌てて引き返そうとしたんですけど
後ろからもね、来てたんです。
これはもう、はっきり見えましたね。
包丁を持った女が、ゆっくり近づいてきてたんです。

もっと早く、気がつくべきでした。
あんな時間にあの道を歩いてる人なら
名前は知らなくても、顔ぐらいは見知ってるはずなんですよ。
だって、普通の住宅地で、決まった人ぐらいしかあの時間じゃ通らないんですから。
でも、その二人の女は普段見かけない顔でした。
でも見たことは・・・あったんです。
そのことに気づいたときには
彼女たちはもうすぐソコまで来てましてね。
笑ってました。
イヤな笑い方でした。
ニタニタと、獲物をいたぶるみたいな笑い方でしたよ・・・わかるでしょ?
怖かったですよ、ホント。
コイツらは、私を殺しに来たんだ、ってわかりましたから。
無我夢中でした。
気がつくと、血の海の中に女が二人横たわって
私は彼女たちから奪った包丁を握り締めてました。
・・・刑事さん、これって正当防衛になるんですよね?
確かに、私はあの二人の女性をレイプしたことがありますけど
でも、正当防衛ですよね!?

・・・・・・・・・・・・・・・・・Fin・・・・・・・・・・・・・・・・・

どうだったかね?それではまた、別の夜に。

次の夜も覗いてみる

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