☆「二つの塔スペシャルエクステンデドエディション」
2003.12.09 12.13補足

注・ネタバレ満載。SEEこれから見る人はどーかなー?

映画「ロード・オブ・ザ・リング」第二作「二つの塔」のDVD「スペシャル・エクステンデド・エディション」(SEE)が発売されました。
劇場公開版に43分の未公開映像が追加され、再編集されたものです。前作「旅の仲間」の時は凄いと思いましたが、慣れっこになってしまったようで、今回、出るのは当然のこととして待っておりました。

というよりも、映画公開時から、SEEでどう変わるのだろうと、既に想いをはせていたように思います。
待った甲斐がありましたよ。ここをなんで見せてくれないんだ、そう思っていた部分をほとんど見せてくれました。なーんだ、撮ってあったんじゃん。

エントのヘルム峡谷進攻はありませんでしたが、木々は怒っているのだという描写がきちんとあり、フオルンの森がやって来た顛末も付加されていました。映画館でイライラしたエレスサール王のくだりや、アルウェンとの絡みも全く気にならなくなりました。エント水もちゃんとあったし背も高くなった。

なにより驚いたのがボロミアの登場。崩壊したゴンドールの首都オスギリアス奪還まで描かれ、デネソール侯も登場。デネソール、ボロミア、ファラミアの親子兄弟関係がハッキリ示されることで、ファラミアは単なるすれっからし野郎から大幅に進化したと思う。父を尊敬し父に認められたいと願い、兄を慕い兄のようになりたいと願い、自国を救いたいと心から願いながら、どこか疲れ果て絶望したような表情の男、くらいには出世した。

セオドレド王子の遺体発見シーンがあり、エオメルも暗い怒りを発してるだけの野郎から出世しました。

逆になんで追加したのか分かんない部分もあって。例えば、休息中、エオウィンがアラゴルンにシチューを差し出すシーン。なにか意図があったのだろーか?シチューは冬瓜(とうがん)汁だし(あるいはすいとん?)、それを飲んだふりして吐き出すアラゴルンも変。エオウィンの料理下手を印象付けて得策があるでもなく、レンジャーであり木の実を食べて生活しているよーなアラゴルンが吐き出すほどのものを思いつきで、いきなり作ってみるはずもなく・・・。なんだったんだあ?映画の1カットには必ず意味があると思うのですが、アラゴルンがセオデン王よりずっと年上って言いたかっただけ?

木が襲うのは、トム・ボンバディルへのオマージュかと思ったら、ちゃんと意味があったんですね。トム・ボンバディル、やっぱり映画で見たいなあと思いました。

なんだったんだあ?といえば、いくつか発見。
まず、オスギリアスでサムがファラミアに、ボロミアが指輪を盗もうとしたせいで死んだと語ったところ。なんでそんなこと知ってるの?キミはその時、フロドを追っかけていたじゃん?ハッタリ?

次に、同じくオスギリアスで、ファラミアがフロドに向かい、「我々はやっとお互いを理解することが出来た」と言うシーン。
よく聞くとフロドを名指ししている。指輪物語の庭師サムなら絶対言わないはずの「世界には守るべきものがある」とまで語ってフロドをその気にさせたサムは無視して、ナズグルに指輪は差し出すわ、サムを殺そうとするわ、のフロドに対して言っているのよ。しかも「我々は」だよ。

お互いを理解したと言うなら、ファラミアもまたフロドと同じような苦しみを背負っているのですよね。ファラミアが抱いている苦悩がなんなのか分からないですが、このくだりは、なんだかとても重要な部分だと思います。ゴンドールは崩壊寸前、デネソールは気がふれている。そんなところでしょーか??

原作のファラミアは、自国のためだけを考えているデネソールやボロミアと違い、公正な広い視野で物事を判断出来る高潔な人です。それを当てはめることは出来ないと思いますが、すれたレンジャー崩れになって、父への土産に指輪所持者を問答無用で連れて帰ったりする野郎であっても、敬愛する父を裏切った上、最後はゴラムを宙吊りにし、この二人を陥れたりは絶対にするなと乱暴に脅すあたり、よほどフロドに共感したのでしょう。

あと、そのー、「二つの塔」て変なタイトルだねー、と今更ながら思いました。多分、トールキン自身は本ごとの題をつけていないと記憶していますが、山場はたくさんあっても、タイトルに出来るような象徴が無い部分だったのかな。オルサンクの塔とバラド=デュアのことなのでしょうけれど、合ってるよーな合ってないよーな。微妙なタイトルだ。エンディングの歌がゴラムの歌だったこともやっと分かった。


正直、「二つの塔」には、昨年公開された「旅の仲間」のような感動はありませんでした。
ホビット庄の風景を見せられただけで涙が止まらなくなってしまった前作と違い、「二つの塔」は泣き所が少なかった、というか、感情の入れにくい映画だったと思います。

その要因のひとつは、大幅なストーリーの変更です。アラゴルン、レゴラス、ギムリ一行がエオメルと出会うあたりから、どう贔屓目に見ても違和感が出始め、ファラミア登場で、見に来たはずの映画とは全く違うものを見せられて、とまどっていたのかもしれません。

憤慨しているだけのエオメル、弱々しいセオデン王、すれっからしで一癖ありそうなファラミア。誰だよお前ら。
映画は小説とは別のものです。原作通り進まなくてもいい。特に今回は話が三つに分かれますから、3時間に収めようとすれば、それだけ端折る部分も多くなって当然ですよね。

それでも、それでも前作をあまりに上手く処理してくれたため、期待しすぎていたのかもしれません。このスタッフが失敗などするわけが無いと思い込んでいました。ストーリーは変わってもいい、登場人物の設定は変わってもいい。でも前作は、指輪物語が持っていた美しく気品に満ちた寓話のテイストを少しも損なうことなく伝えてくれていました。ところが「二つの塔」は、映画としては成功したのでしょうけれど、わたしの求めていた「指輪の世界に浸る」という想いに答えてはくれない作品となっていました。

SEEを見て、改めてそう感じます。
セオデン王にサルマンが憑依していたのなら、蛇の舌はなぜ必要だったのか、エントムートの決定が簡単にひっくり返ったこと、他のエントがどうしていきなり出てこられたか、なんでウルクハイ、オーク軍が総崩れになったのか、なんで森のエルフがのこのこやって来たのか、ナズグルに指輪を差し出していいのか、弓矢ごときでワイバーンが逃げるのか、映画としては見せ場が出来て良かったのでしょうし、ささいな(ええ、些細なことです)変更にとやかく言うつもりはないんです。

なにより、この映画は、映画として成功したと思います。SEEには多くの追加映像が加わり、劇場で気になった部分も全く気にならず、欲しいと思った映像も最低限、きちんと納められています。ほぼ完璧になりました。

でも、この映画は「素晴らしい映画」であって「心の中の一本」に加わる映画ではない。なあ。

やはり誰にも感情移入出来なかった。です。
前作では、フロドの瞳が大写しされただけで、涙がドバーと溢れたのに、今回、傷つき倒れるフロドを見ても、なんの感慨も浮かびませんでした。
もっとホビットたちの友情や信頼を掘り下げて欲しかった。まるで戦争映画ですね。

わたしが「指輪物語」を読んだのは高校生の時ですから、まあそれほど前のことでもないのですが(ばき!どす!ごりっ)、王の帰還を見終わるまで、読み返すつもりもありません。ですから間違った記憶のオンパレードですし、全くあてにはならないのですけれど。

二つの塔は、三手に分かれた仲間たちがそれぞれの道を歩むストーリーではあるのだけれど、その半分ほどはフロド、サム、ゴラム一行の話だったように覚えています(ええ、多分また間違いでしょう)。そしてそれは大変感動的な話だったと思います。反面、角笛城での攻防はとても短かった。(違うかも)

映画としては当然、メインを絵になる角笛城攻防とアイゼンガルド進攻に持ってくるわけで、短い部分をメインに据え、「旅の仲間」のようにバッサリ切り落とせる箇所も無いわけだから、3時間という枠内に納めるには、あまりに削る部分が多すぎた。そのしわ寄せがキャラクターに来てしまったのかもしれません。誰もみな、きちんとそこに存在している。セットは小道具に至るまで丹念に仕上がっていて、世界観も完璧だと思います。

なにが足りないのだろう?ボロミア?
ボロミアは忘れがたいキャラクターで、原作より遥かに素晴らしい人物として描かれていました。アラゴルンに看取られた最期の言葉「my brother, my captain, my king」、思い出しただけで泣きそうになります。SEEでもボロミアが登場したとたん身を乗り出してしまいました。

あるいは、ビルボなのかなあ。ビルボがいたからあんなに楽しかったのか。確かに楽しかったねえ。
他には・・うーん、グワイヒアじゃねーわな。バルログでもなし。なんか多分、原因はあるのでしょうが、原作を読み返すまで分からないかもしれません。

読み返すと、それはそれで不満が多発したりする可能性もあるので読まないんですが、少なくても第一作の、あれは「つらぬき丸」、ガンダルフの魔剣グラムドリングと一緒にビルボ一行が見つけたものだとか、ミスリルはモリアの坑道が産地で、バルログは昔モルゴスの手下だった一族の残り、ガンダルフと同じ古い種族だとか、そういう、ちょっとくすぐってくれる部分が今作は高度になって覚えてないという記憶の不備もあるわな。

実のところ、レゴラスとギムリも自分の中の原作では影が薄くて、中つ国史上、初めて親友になったエルフとドワーフ、というくらいにしか記憶にありません。レゴラスは美形を売りに忘れられないキャラとなりましたが、中身はイマイチ分かんないし、美しくて強いやつな感じ。ギムリに至っては、映画中にドワーフの生態を示すようなシーンが登場しない(モリアの坑道くらい)ため、なんなんだこいつ的存在です。多分これから作られるであろう映画「ホビットの冒険」ではイヤというほど出てくるのでしょうけれど、でも映画の中のレゴラスはどちらかというと、ギムリよりアラゴルンと仲良し・・なんだよなあ・・。

ごちゃごちゃ書いてるんですけど、この映画好きです。特にSEEバージョンは、凄く良くなっていて驚きました。別の映画を見ているかのようでした。でも、これが映画館で公開されていたら・・、おしっこちびったな。3時間でもかなり危なかった。とにかく、字幕のガンダルフホワイトて、なんかやだ。あと厚切りレンバス。だっせー!


もう1回、今度は吹き替えで見てみました。
吹き替えの声に馴染めず違和感ありあり。さすがに情報量は多いですが、日本語として冗長すぎるでしょう、という部分もありました。字幕で変だった言い回しが吹き替えでは直っていたり、字幕が原作訳本の固有単語を参照しているにも関わらず、吹き替えは独自だったり。どっちもどっちだ。字幕はそもそも文字制限があるので口語として変だし、吹き替えは自由な分、その場で普通に喋るだろう言葉をもっと考えて欲しい。敵襲だっとか言うか?

字幕を追わなくてもいいので、画像に集中してしまい、アラも見えて。違うシーン用のカットを足りない部分に繋ぎ合せたところが結構あるみたいで、服装とか、急に脱いだり着たり変わったりして編集のあわただしさを物語っていました。

なにか印象が変わったわけでは無いですが、森のエルフ参加以降の物語はやっぱりカッコ良かったです。特に、セオデン王が撃って出る時の言葉。しびれました。

「つるぎを重ね共に戦うときが来た。荒ぶる魂よ!もののふの血よ!いざ目覚めよ、夜明けを赤く染めよ」(ここでギムリが角笛城の角笛を吹く)「進め!エオルの子らよ!」

かっこいーぞーセオデン!この後のガンダルフ到着とエオメルの言葉も含め、吹き替え版は最高です。「王の御許へ!」とか冴えてるよねー。角笛城て巨大なフォルンがあるんですな。なんで角笛城というかすっかり忘れていたし、映画館で見たときは気がつきませんでした。


DVDの特典として、スタッフや役者が解説するモードがありますよね。よくあるんですが、このDVDで初めて聞きました。
まずPJ(監督ピータージャクソン)と女性脚本家2名の解説。他の特典映像に入っていたインタビューと重なる部分も多いんだけど、SEEで追加したエオウィンのシチューのくだり、本当に必要だったのか?と三人で口を揃えてるところは笑った。いらんちゅーの。

素直に、失敗したが最初から撮り直す時間は無かったとPJが反省したり、脚本のおばちゃんが謝ったりと結構面白かった。
特に、最後のほう、ガンダルフ、アラゴルン、ギムリ、レゴラスと並んで、エオメルが馬を並べてる場面、エオメルはどこ?これは誰?と言っているのはビビッた。気がつかなかったけど確かにエオメルじゃない。PJの答えが笑えました。俳優が来れなくて、後から顔だけ合成するつもりで忘れたんですって。編集作業中、追加撮影が間に合わなくて、どこからこのカットを持ってきたとか、馬が向かいの園芸センターに突っ込んだとか、裏話満載。

ネットでのファンの反応はかなり気にしている様子でした。
最たるものはアルウェンが角笛城の闘いに参加するシーン。ファンの猛反対で中止になったのですよね。この映像は他のディスクにも収められているけれど、不必要なラブシーンをたくさん入れるくらいだったら、戦うお姫様とゆー設定に変えたほうが良かったんではない?森のエルフが来るより話もスッキリまとまるし。これだけいろいろ変えちゃったのだから気にする必要も無さそうだけどなあ。アルウェンが戦うと対抗してエオウィンも戦うってことになるのかあ?それはそれで凄いや。

俳優編も、とっても面白かったです。
サムくんが、自分の「世界には守るべき・・」というセリフをテロに対するメッセージだと言って、周りがあわくってフォローしてました。あの俳優さんは、自分が演じているのはホビットの庭師だと思っていないようです。かなり勘違いしている。崇高ななんちゃらかんちゃらとして演じていると別の部分でも言ってました。ま、俳優が勘違いしていても、映画は正しく受け手に伝わるとゆーことで。

美術スタッフの解説モードもあったけど聞かなかった。
DVD、音響はともかく、シネスコのせいで28型TVじゃ限界。やっぱりスクリーンで見たいです。

「王の帰還」が心の中の1本に加わってくれますよーに。
王て誰で、どこへ帰るのか知ってますよね?アルノールは国が無くなり、ゴンドール王家の血筋は絶えているのです。従って正当なる王位継承者はただ一人、ドゥネダインの中心人物ですよ。映画だけ見てると全然分からない気がしてきた・・。


サルーマン、イセンガルド、ロス・ロリエン、エレサール王なの!最後は「ああ帰ってきた」じゃなくて「今帰っただよ」とサムは言いました。だっ!知らんうちに新訳なんか出しがって。ぷんぷん。

そういえば幻の「終わらざりし物語」、ついに出ましたね。指輪物語関連でトールキンが書いた寄せ集めみたいなものらしいですが、5人のイスタリのうち、サルマン、ガンダルフ、ラダカスト以外の本編に記述の無い二人についても書いてあるのかな?(パラパラ立ち読みした程度)

ところで「指輪物語」はビルボが書き始めて、続きをフロドが、その続きをサムが、その続きを娘のエラノールが書き続け完成したものをトールキンが発見し現代語に翻訳した実話ですよね?



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