ろ過バクテリアについて      01.05.08初記(02.02.02一部補記)    

これは、現在(2001.05)わたしが知りうる、淡水ろ過バクテリアに関する知識を書き留めたものですが、なにより事実を知る術が無く、全て受け売りです。なので、ここに書かれたことが真実とは限りませんし、勉強不足のため誤認もあろうかと存じます。たとえ異論があろうとも、それに反論する知識はありませんのであしからず。


●硝化菌
さかなの排泄するアンモニアは猛毒であり、水槽と言う閉鎖空間において、アンモニアの蓄積は生体への多大な被害をもたらします。人間を含む陸生生物の多くはアンモニアをほとんど毒素の無い尿素に変えて体外に排出しますが、水生生物の多くはアンモニアをそのまま排泄します。(水中では、中性よりPHが低いほど毒性の低いアンモニウム・イオンに変化しますが、PHがアルカリに傾くほどアンモニアのまま存在する割合が多くなる) この有害なアンモニアを最終的に硝酸イオンに変えるのがろ過バクテリアの働きです。

さかなを殺さない量のアンモニアを水槽内に放置しておけば、ろ過バクテリアは自然発生しますので、通常の速度で立ち上げるなら、特に市販バクテリアを用意する必要はありません。

ろ過バクテリアは、アンモニアを酸化して亜硝酸塩を生成する「亜硝酸菌」と、亜硝酸塩を酸化して硝酸塩を生成する「硝酸菌」に大別されます。グラム陰性なんたらかんたら細菌に分類されるはずですが、失念しました。ほほ。


これら、ろ過バクテリアの上限値は、水槽内に発生したアンモニアの量に比例します。アンモニアの量が微量であれば、対応する量のろ過バクテリアしか発生することはありません。アンモニアの量は、水槽内に生息するさかなの数と大きさと餌の与え方(量)に比例します。それ以上に発生することはありません。


つまり、少量のさかなをパイロットフィッシュとして導入し、硝化システムが完成してもただちに大量のさかなを送り込めば、ろ過バクテリアが増殖を完了するまでの間、水槽内のアンモニア、亜硝酸は一気に増加します。よって硝化サイクルが再び餌の量に呼応する間、水質は非常に悪くなります。


ろ過バクテリアの適正値ですが、1リットルに100万細胞と言われています。市販バクテリアは、この数値を基準として作られているそうです。モデルケースの内容が分からないため、基準だとする基準が分からないですが。


設置1年未満の水槽に発生する硝化菌は粘着性が無く、ろ材等に付着出来ない浮遊菌であるとも言われています。なぜ1年という単位でろ材に定着出来るのかよく分からないですが、少なくてもBICOM78の硝化菌は定着性の無い浮遊菌であるとメーカーが認めておりますので、市販バクテリアについても同様であろうと思われます。


また、硝化の結果、水素イオン濃度は高まりますので、PH値が低下します。そのまま水替えしないとPH低下によってろ過バクテリアも活動を停止すると思われます。PH5.5〜8.0辺り、KH3〜8辺りが活動ラインと言われていますから、それに外れた環境でなおかつ硝化サイクルが働いている場合、ニトロソモナス属、ニトロバクター属以外の硝化菌が増殖していると推測されます。それがなんなのかは知りませんけれど。


熱帯魚の飼育において、こまめな換水が必要とされるのは、ろ過バクテリアによるPH降下のショックを緩和する措置でもあるのです。実際には、餌の与えすぎなど、硝化活動以外でのPH変動のほうが、より大きいような気もします。


硝化菌は、水中のミネラル等を餌とし、アンモニアを酸化(当然酸素が必要)して亜硝酸を吐き出す亜硝酸菌と、亜硝酸を酸化して硝酸塩を吐き出す硝酸菌の総称であり、共生関係の産物が硝酸イオンとなって水中に残ります。従いまして、ろ過バクテリアでいっぱいの水とは、さかなの餌を大量に必要とする水槽の「硝酸イオン濃度が非常に高い水」のことです。ろ過バクテリアの働きは、アンモニアを硝酸塩に変化させます。もし仮に、ろ過バクテリアがアンモニア以外のものを硝化して増殖出来るなら、逆に不必要な水替えが増えてしまいます。それでは有害菌の仲間入りですね。


「亜硝酸菌」
ニトロソモナス属に代表される好気性バクテリアです。
エネルギー源として炭素など無機物を利用し、アンモニアを酸化して亜硝酸を生成します。淡水では1日で1分裂します。但しアンモニアが無ければ増殖はしません。


「硝酸菌」
ニトロバクター属に代表される好気性バクテリアです。
同じく、亜硝酸を酸化して、硝酸塩を生成します。淡水では、2日で1分裂します。この増殖速度の違いにより、立ち上げ時は両者のバランスが崩れます。また亜硝酸菌のほうが先に発生するため、大量の亜硝酸が生成される時期があるのだ、と思われます。

この両者を総合し、硝化菌、またはろ過バクテリアと呼んでいます。現在9属12種の硝化菌が確認されています。
硝化菌の市販培養菌として、BICOM78などを使用したことがありますが、とにかく亜硝酸が大量に発生します。ゲロゲロ。


●「脱窒菌

これは硝化菌ではありません。シュードモナス属に代表される通性嫌気性バクテリアです。PSBのような嫌気性バクテリアと違い、好気性バクテリアでありながら、嫌気環境でも生きていける細菌です。3.5時間で1分裂します。硝化菌が生成した硝酸イオンを窒素ガスに変換しますので、硝化サイクルの結果生じた硝酸塩を無害化してしまうことになります。


こちらも自然発生しますので、特に市販バクテリアを使用する必要は有りません。元々水道水には、この「有機酸化従属栄養通性嫌気性細菌」が多数含まれており、塩素の消失と共に活性化します。ただ硝化菌のように、二酸化炭素から取る量の炭素では不足ですので、大量に増殖させるためには、別に炭素源を必要とします。安定的に炭素を供給する方法としては、市販品のデニボールがよく知られています。というよりデニボール以外のものをわたしは知らないです。設置するデニボールの量ですが、硝化サイクルとの関連で言えば、水量ではなく、生体が出すアンモニアの量と対応するはずです。水草水槽のように、硝酸塩を吸収出来る水草が豊富で小型の生体が少量生活するだけであるなら、硝酸塩も少量しか発生していないので脱窒菌も少量で済むことになり、炭素源も少量で良いと思うのです。これはあくまでも硝化サイクルと関連する脱窒量のみを考えれば理論上そうなる、という意味ですよ。


通性嫌気性菌を脱窒菌として機能させるには一定の条件が必要です。
通性嫌気性菌は、水中に酸素がある場合、酸素を取り込んで有機物を分解します。ところが酸素のない場所では、硝酸塩を分解して必要な酸素を取り出すのです。これが脱窒です。硝化サイクルの最終生成物である硝酸塩を分解するため、特に嫌気環境(酸素が無い状態)での脱窒効果が注目されています。硝酸塩もさかなにとっては、決して無害なものではありません。PH降下もあり、定期的な水替えが必要とされるのですが、脱窒菌により硝酸塩が窒素ガスに還元されると、理論上、水替えすら必要では無くなります。また、換水によるPHの急激な変化を緩和する要因ともなりえます。脱窒が完全に行われると、水草が必要とする栄養素のうち、窒素、カリウムが不足することになります。(カリウムは元々微量しか無いから)


大量の硝酸イオンを脱窒出来るだけの嫌気的な環境を水槽内へ用意するのは非常に難しいため、嫌気ろ過槽を別に用意するなどの大掛かりな装置は必要でしょう。このようなものは、今でも市販されているのですが高価です。大抵が水の入り口に好気性バクテリアを繁殖させて酸欠状態とし、生成した硝酸イオンを取り込む方式です。ろ材はデニボール、またはオリジナル(多分)。大手メーカーが安価に製造すれば、あっという間に普及するでしょうが、嫌気環境で生まれるのは通性嫌気性バクテリアだけに留まらないはずで、大腸菌なども発生すると考えられます。水中には硝酸塩を脱窒し、亜硝酸や硫化水素に変化させる嫌気性の属も多数存在します。その辺りが、いまひとつ一般的にならない理由なのでしょう。イオウ臭いと感じたら硫化水素が生成されています。


脱窒菌の市販培養菌として、BICOM21などを使用したことがありますが、単に水槽内へ投入しても、嫌気状態での効果はおろか、好気状態での効果すら判然としませんでした。むしろ現状で脱窒の最大の功労者は水生植物、有茎の水草や浮草であった、と再認識させられました。

海水魚の分野では、モナコ方式に代表されるナチュラルシステムの研究、実地が進んでいます。淡水でも水草水槽において、通性嫌気性バクテリアの存在は知られています。さほど遠くない将来、脱窒菌を使用したろ過システムは必ず一般家庭の水槽にも取り入れられるはず。と信じたいです。


なお、この文章は、バクテリアが効果的に繁殖出来る環境をさほど考慮せず、生体から発生するアンモニアと硝化サイクルという観点からの記述ですのであしからず。水槽内での水質浄化は、好気環境下での通性嫌気性バクテリアやインフゾリアによる有機物分解も深く関わっています。

また、効果的に繁殖出来る環境、という命題は、フィルターのろ過層は大きければ良いのか、といった問題を含んでいます。ろ材が多ければ、それに見合った分のろ過細菌が付着するのか否か。単純にろ材を倍にして、倍のろ過細菌が発生する筈は無いのですが、逆に言うと、発生しているろ過細菌を全て付着させるだけのろ材が現在あるのかどうか、という疑問もあるからです。

仮に、ろ過細菌が、付着するろ材が少ないために水中を漂い、換水によって汲み出されているとすれば、ろ材を増やしたとたん、水槽内のろ過バクテリアは換水によって汲み出されなくなり、ディスカスのブリード方法のように換水が頻繁であれば結果として増加することになります。硝酸塩も急増したのと同じことになりますます換水頻度が上がってPHも上下する、なんて悪循環が無ければいいのですが、ろ過層を倍にしたらディスカスの調子が悪くなった、なーんて話もあるので、あながち否定も出来ないでいます。


●「その他の微生物たち」

実は飼育水は生きています。
スポンジを絞った飼育水を顕微鏡で観察してみると、大量の水棲生物、微生物、昆虫を発見出来るでしょう。わたしの水槽では特に線虫類や水棲昆虫が多かったですが、これは個々の環境によって違うかもしれません。

このような事実に触れた熱帯魚の参考書は皆無です。
唯一、コンラート・ローレンツ著「ソロモンの指環―動物行動学入門」の一部にその記述がありますが、これは熱帯魚の飼育書ではありません。
一般的な熱帯魚の飼育書では、「購入直後の生体は、ろ過のよく効いた水に入れてあげましょう」などと書きながら、ニトロソモナス属、ニトロバクター属の「ろ過バクテリア」について記述があるのみです。「ろ過のよく効いた水」て硝酸塩濃度の高い水のことなんですか?でしたら、塩素を抜いた水道水のほうが心地よいですよね?

高度経済成長が一段落した70年代中頃、建築家、バックミンスター・フラーの著書を元に、ネットワーク、パソコンポップカルチャーの元祖、マーシャル・マクルーハンなどを引合いにして、日本でも「宇宙船地球号」というキャッチで、地球は1つの生態系であることが盛んに言われました。長い時間をかけて完成したフランク・ハーバートの「DUNE(砂の惑星)」シリーズはスペクタルロマン活劇であるばかりか、エコロジー小説として高い評価を受け続けました。宮崎駿「風の谷のナウシカ」は宗教、政治、人類の進化など深いテーマの底に、再生する地球の生態系がしっかりと描かれていました。そんな大それたものではありませんが、地球が1つの生態系であるように、砂の惑星が1つの生態系であるように、粘菌が浄化と再生の役割を担っていたように、腐海の蟲たちがその温床となったように、水槽の中にも1つの生態系があります。彼ら微生物やバクテリア、水棲生物は皆、生体、水ミミズ、スネイル、水草などと一緒に水槽内の生態系を作り上げているのです。

さかなに与えた餌は糞となり、アンモニアはろ過バクテリアによって硝酸イオンに変化し、一部が水草の栄養素として吸収され、通性嫌気性バクテリアによって還元されます。糞や死骸は通性嫌気性バクテリア、インフゾリア、微生物、スネイル、水ミミズによって分解され一部は水草やバクテリアや微生物の栄養素となり、枯葉の繊維などと共に浮泥を形成して微生物の温床になり、大部分はフィルターに取り除かれます。残餌の一部は燐酸として水草に吸収されます。水草に肥料を与えていない状態では、さかなやエビなど生体の量が少ないとうまく育ちませんし、生体ばかりではすぐに水が滋養過多になってコケの大発生を招きます。日中は水草が光合成した酸素をさかなやバクテリアが消費し、植物の成長に必要な二酸化炭素を作ります。夜は水草、さかな、バクテリア共に日中溜め込んだ酸素を消費し、朝の訪れと共に、夜間溜め込まれた二酸化炭素は植物に取り込まれるのです。どれが欠けても水槽内の生態系は機能せず、お互いがお互いを必要としています。

本来、適正なさかなの数と適量の餌を与え、大量の水草がしっかりと根を張れる環境さえあるなら、水替えそのものは、さほど必要ではないのでしょう。生体の数に無理があったり、生態系の何かが狂っているので、水替えは必要不可欠になってしまうのです。

大量の飼育水を捨て、塩素を抜いた水道の水と入れ替えるという作業は必要ではあるのですが、生態系を作っている微生物たちの環境を破壊する行為でもある、という事実を頭の片隅にでも置いて頂ければ幸いです。さかな、水草、ろ過バクテリアだけでなく、浄化の一端を担っている微生物たちの存在も、どうか忘れないであげて欲しいです。



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