オハグロベラ[歯黒倍良]

(学名)Pteragogus flagellifera
(英名)Cocktailfish


スズキ目ベラ科

[分布]
千葉県、島根県以南;
〜インド;西太平洋
[環境]
浅海の岩礁(1〜10m深)
[体長]
15〜20cm
[撮影地] 東伊豆
[深度]  5〜10m
[撮影者] H.Murayama

[特徴]
キュウセン同様、一夫多妻性で
卵から孵化した稚魚はまず雌と
して成熟するが、
繁殖グループ
内で最も勢力の強いもののみが
雄となるため、全般に雌よりも
かなり大きい体格を持つことが
多い。

通常、雄は黄色と黒の比較的
派手な
体色をしているのに対し
雌は目立たないくすんだ体色を
している。繁殖期になると、雄は
全体に黒っぽい婚姻色を示す。


オハグロベラの仁義なき戦い?!

オハグロベラの雄は通常、自分のテリトリー内に
2〜5匹の雌からなるハーレムを形成します。ところ
が、餌が豊富であったり外敵からの隠れ場所となる
海草が密生しているなどの生息条件が好適な環境
では複数のハーレムが混在してしまい、雄が雌を
コントロールできない不安定な社会構造になるよう
です。

そのような環境下では、互いのテリトリーの境界付近
付近において雄どおしの激しい主導権争いが日夜
繰り広げられます。テリトリー周辺の雄は少しでも
自分の子孫を増やそうと別の雄のテリトリー内に侵入
して雌を産卵させようとします。ちなみに、そのような
侵入行動をとる雄のことを「スニーカー」(「ストーカー」
ではありませんので、あしからず)と呼ぶそうです。

テリトリー内の雄が侵入してきた相手に気付くと、
互いに大きく口を開け相手を威嚇した後、鱗を飛び
散らせての激しい噛み合いになります。この壮絶な
主導権争いの結果、一方の体色が白っぽくなれば
それは自分の敗北を認めたことを意味し、逃げ出して
いくそうです。一方、勝利した雄もこのような戦いを
繰り返していくことで体中傷だらけで徐々に弱って
いき、いずれその地位を保てなくなります。

これぞまさにオハグロベラの仁義なき戦いと言える
のではないでしょうか?

雄雌の体色・体型の違いが意味するものとは?!

オハグロベラの雌は派手な雄の体色(黄色+黒)とは
対照的に、くすんだ赤褐色の体色をしています。
また、体格も親と子ほどの違いがあり、一部の人に
とっては心外この上ないと憤慨される方がいるかも
知れません。

もちろん、当たり前の事ですが、この違いは別に魚達
が未だに男尊女卑の精神でそうなっているわけでは
なく、海の中で繰り広げられる魚達の激しい生存競争
に生き延びていくためのれっきとした理由があるよう
です。

体格の小さい雌はアカエソやカサゴ、オニカサゴや
ウツボなどの格好の標的になりやすいため、体色を
周りの海藻の色に合わせてカムフラージュする必要
が生じ、今のくすんだ赤褐色の体色を持つように
なったと考えられます。

一方、派手な体色の雄は目立ちやすく外敵からも
狙われやすいリスクを負っていますが、この派手な
体色もハーレム内の多くの雌に対し、明確に自分の
存在をアピールして少しでも多くの子孫を残すため
雌に産卵させる機会を多くする必要があったと
考えられます。

実際、他の一夫一婦制の魚の場合、雌雄の性差が
一夫多妻や一婦多夫ほど目立たないそうですから、
生存のリスクを考慮すると必ずしも雄が優位とは
言えないような気がしますが、皆さんはどう思われ
ますか?


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