北海道環境生活部環境室

自然環境課野生生物室意見募集担当 御中

「エゾシカ保護管理計画(案)」に対する意見

平田剛士(フリーランス記者)

拝啓 時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。

 わたくしは野生動物保護管理に関心を抱き、フリーの記者として、ささやかながら取材・執筆活動を続けている者です。もとより専門家ではありませんが、一道民として、先ごろ発表された「エゾシカ保護管理計画(案)」(以下計画案)に対して、いくつか意見を述べます。ぜひご検討の上、御施策に反映いただければ幸いです。

 なお手前勝手ながら、本文はインターネット上の関連メーリングリストにも公表いたします。

1 道東地域におけるエゾシカ推定生息数の修正理由を詳述すべきである。

 計画案の参考資料―2「道東地域エゾシカ保護管理計画の改正について」の項には、この地域のエゾシカ推定生息数の修正が行われること、またその理由について記述されています。平成5年時点での推定値を、従前の12万±4.6万頭から、今回20万±4万頭に修正したわけですが、なぜ従前、これほど強く「過小評価」してしまったのか、新しい計画案の中で、その原因をもう少し詳しく解説すべきではないでしょうか。

 推定生息数、あるいはそこから導かれる各年のメスジカ捕獲目安頭数は、エゾシカ保護管理(とりわけ個体数管理)行政の動きを測るときの、一般道民にとって最も分かりやすい、まさに目安となる数字です。この部分の説明に文章を尽くすことは、合意形成を図る上で決して無駄にはならないでしょう。

 なぜ「過小評価」してしまったのか、カギは各種センサスデータの精度、またセンサスデータから各ユニットの全個体数を推定するさいに用いた比例定数の信頼性にありそうです。そのあたりを平易な文章で解説してもらえれば、と思います。

 フィードバック管理は、稼働中の施策に新しい知見を次々反映させていくものだと理解しています。とすると、推定生息数(およびメスジカ捕獲目安頭数)は今後もひんぱんに修正され続けることが予想されます。なぜ修正しなければならなかったのか、そのつどていねいに説明するのは、フィードバック管理の優位性を広く啓蒙するチャンスだとも思えます。

 もちろん、これらは計画の根幹をなす数字ですから、あまり大幅に修正が繰り返されるようではやっぱり困ります。計画案にすでに記述されていますが、モニタリング精度の向上にはいっそうの努力を望みます。

 

2 緊急減少措置「延長」について説明すべきである。

 同じ「道東地域エゾシカ保護管理計画の改正について」の項で、はっきりと記述されてはいないものの、推定生息数の修正にともない、緊急減少措置の期間を延長すること(旧計画から新計画に引き継いで通算連続5年)がほのめかされています。

 また、従来の「道東地域エゾシカ保護管理計画」では「緊急減少措置の期間は概ね3年程度とする」と明記されているのに対し、計画案では「注意深くモニタリングしていく」と抽象的な表現に改められています(参考資料1)。

 しかし説明なしのこの書き換えは、言葉は悪いのですが、「誤魔化し」と感じざるを得ません。むしろこの部分は書き換えずに「3年程度」のままとしたうえで、ではなぜ今回、その歯止めを破らなければならないのか、その理由をしっかり説明すべきです。

 フィードバック管理ですから計画変更は当たり前です。ただし、前述したように、そのつどちゃんとした説明がなければ、道民は納得できません。計画案のように全く説明がないままでは、読む側は「もしやケムに巻かれているのでは」と疑心暗鬼に陥りかねません。

 

3 ワシ類鉛中毒被害の防止策を盛り込むべきである。

 計画案には、第2章(4)の1「捕獲物の有効利用」の項に「計画対象地域の環境保全を図る」と見えるのみで、ワシ類鉛中毒被害への言及がありません。しかし、加害・被害の因果関係がハッキリしている以上、新計画には被害対策を盛り込むのが当然だと考えます。

 今猟期よりエゾシカ猟における鉛ライフル弾の使用を禁止したことは、行政当局の素晴らしい成果です。ただ、喜ぶのは真に被害ワシをゼロにしてからでも遅くないでしょう。

 すでに北海道環境科学研究センターなどにおいて、ワシ来遊数のモニタリング、シカ残滓のモニタリングなどが始まっていると聞き及んでいます。この体制を強化し、少なくとも弾丸規制前後の被害程度の変化(施策の効果)をしっかり判定すべきでしょう。弾丸規制の徹底度を測定するには、ほかにたとえば放置残滓・廃棄残滓の銃創部分を採集し、残留断片から、使用された弾丸の成分(鉛か否か)をチェックする、といった方法も考えられます。そうして、もし弾丸規制の被害防止効果が低いと判定された場合は、すみやかに新施策に「フィードバック」すべきです。

 すでに多くの稀少ワシが被害を受けています。できうる対策を出し惜しみしている場合ではないと思います。

 以上、ざっぱくに長々と申し述べました。文中、失礼がありましたらお許し下さい。今後のますますのご発展をお祈りしています。

2000年6月28日

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